2月18日、欧州連合は、危険有害化学品の分類、表示、包装に関する規制をとりまとめるCLP規則において、酸化チタンを発がん分類区分2(吸入)に分類する旨の官報を公布した。2021年10月1日を適用開始日としており、1%を超えて酸化チタンを含有する製品には、特定の警告表示及びラベル表示が必要となる。

日本酸化チタン工業会が公表した簡易訳によると、条文には適用対象となる酸化チタンを「粉体形態の酸化チタンであるか、または組み込まれている酸化チタンが1%か、またはそれ以上含まれる粉体形態混合物」と定義。液体及び粉状でない固形混合物は分類されないが、1%を超えて酸化チタンを含有する製品については、特定の警告表示及びラベル表示が必要となる。

これを受けて、TDMA(欧州酸化チタン工業会)は反発。TDMAは、「条文は固定化されていない酸化チタン粉塵の過剰量吸引によって生じる有害性をターゲットにしたもので、粉塵による有害性は、二酸化チタン固有に関するものでもなく300以上の化学物資にも当てはまるもの」と2017年の議論開始以降、一貫して反対姿勢を主張する。

更に「RAC(リスク評価委員会)の見解は、酸化チタンの曝露とヒトの癌発生との間に何ら関連がないことを立証している2万4,000人以上の疫学データとも相反する。また条文は新たな概念と用語を導入しており、それらに対して何ら有意義な定義または解釈上の指針提供(閏値の記載や管理基準など)がないため、さまざまな解釈が可能」であることを理由に適用開始日までに不確定事項の明確化と対応を求めた。こうしたTDMAの反対姿勢に対し、日本酸化チタン工業会も支持を表明している。 

国内では2016年12月に厚生労働省が酸化チタンの取り扱いに関し、労働者の健康障害防止対策の徹底を通達したことで規制強化の動きが進展すると見られたが、表面処理酸化チタンと無処理酸化チタンの有害性検討が充分でないとの意見により措置検討を一時中断(2018年)。2020年の終了をめどとする第三者機関による試験結果を経て、再度有害性について検討するとしている。

ただ、再検討するまでの期間において、EUの議論を注視するとしており、今回のCLP規制により国内への影響が懸念される。