光触媒コーティングの本命狙う
4倍の酸化還元能力を発揮

建築塗装市場で光触媒塗装に改めて注目が集まりそうだ。機能性コーティング材開発・製造のピアレックス・テクノロジーズ(本社・大阪府泉大津市)は、光触媒反応を従来の4倍に高めることに成功した改良品を7月1日にリニューアル発売する。ダイキン工業、ダイセルとの3社共同開発で実現した。汚れ防止・除去機能の飛躍的な向上とともに価格低減と施工性の向上も併せて実現。光触媒塗装の需要を改めて引き出し、一気にイニシアチブを取りにいく考えだ。


建物の外観をキレイに保ちたいという普遍的な要望に対して、光触媒塗装が一時期脚光を浴びた。酸化チタンの表面に太陽光(紫外線)が当たることで発現する「分解力」と「親水性」を応用し、有機質の汚れが分解され濡れ広がった雨水によって汚れが洗い落とされるメカニズム。光と水の自然の力で半永久的にキレイな状態が保たれる技術として、塗装工事の高付加価値化への期待が高まった。

しかしその話題性ほど実需は広がっていない。建物をキレイな状態で保ちたいというニーズに対して、それを満たす決定版としての訴求力に欠けていたためだ。

例えば、太陽光が届きにくい建物の北面の汚れやカビが除去されない、効果が分かるまで時間がかかり実感が得られない、施工が難しいため品質のばらつきやクレームも少なくないなど最高級塗装というふれこみとのギャップが生じている上、施工者も及び腰の感があり説得力が薄れていた。

ピアレックス・テクノロジーズは「建物外皮の汚れの問題を解決する本命」(同社取締役・廣瀬直輝氏)として光触媒塗装を再度押し上げるべく大幅な製品改良を断行、光触媒フッ素樹脂コーティング材「ピュアコート水性」及び「同タイル」として7月1日にリニューアル発売する。

ポイントは大きく2つ。従来の4倍の酸化還元能力を持つ光触媒酸化チタンの採用と、バインダーに強靭なフッ素樹脂を用い、かつ含有量を高めることに成功したことだ。

光触媒に用いているのはダイセルが新規に開発した「セルミューズ」という酸化チタン。菱形の独特の形状をしており、酸化と還元反応がそれぞれ区分して行われる特徴がある。一般的な球状の酸化チタンのように酸化と還元が打ち消しあうことがないため、「従来の4倍の酸化還元能力を発揮、汚れの分解除去効果として1.5倍」(同)と反応効率が格段に高まった。

更にセルミューズは可視光応答型光触媒のため北面など紫外線量の少ない条件でも機能する。極端な話、蛍光灯が付近にあれば夜でも効果を発揮、紫外線量の制約を克服した。

また、セルミューズのポテンシャルを最大限に引き出すための酸化チタンの表面処理はピアレックス社のノウハウ。両者の技術の融合によって汚れの分解と親水機能を飛躍的に高める光触媒酸化チタンの開発に成功、「汚れの問題を解決する決定版」と自信を示す根拠となっている。

一方、塗膜を構成するバインダーにも大きな特徴がある。

バインダーに用いたダイキン工業製のフッ素系アイオノマーは燃料電池内のセパレータとして使われる卓越した化学安定性が特長の4フッ化フッ素樹脂。有機樹脂でありながら光触媒反応で分解されないため従来のようにバリアー層としての下塗りが不要で、各種の塗膜の上にクリヤートップコートして施工できる汎用性がある。加えてフッ素樹脂本来の性能により促進試験では20年以上の耐候性を証明、塗り替え周期を延ばす説得力も備える。

また、樹脂自体の特性で施工直後から親水性を発揮。塗膜につけた汚れ成分が水で洗い落とされるデモンストレーションを施主の眼前で行えるため、「効果を実感しにくい」といった問題も解決、防汚コーティングとしての価値訴求に有効だ。

更に塗膜は330%の伸張性があり、弾性塗膜やシーリング材にも追従する上、一般的な塗装機で施工できるため従来の無機系バインダーのようなシビアな品質管理も不要。光触媒塗装への施工上の不安もクリアした。

ピアレックス・テクノロジーズでは今回のリニューアルに際して価格、容量、荷姿の変更も併せて行った。

従来品より塗膜成分の含有量を高めることに成功したため容量を12Lから8Lに変更(施工可能面積は同等の100㎡)、これに伴って価格も15%のダウンを実現。また、荷姿も畳みやすいポリ容器を段ボール箱におさめるスタイルに変更、従来のペール缶に比べて廃棄費用も削減できる。

今回リニューアル発売するのは、新築及び塗り替えで各種塗膜のトップコートとして展開できる「ピュアコート水性」と、磁気タイルに下塗り不要で施工できる「ピュアコートタイル」の2製品。タイル用もシール・コーキング部の養生が不要なのでマンション改修などの付加価値メニューとして有効だ。

これまでの光触媒コーティングと異なりピュアコート単体で各種の塗膜やタイルに直接施工できる汎用性がセールスポイントで、「塗装工事の単価アップを狙える格好のトップコートとして仕上がった」(同)と自信を示す。

一方、同社の光触媒コーティング材は採用面でも勢いづいている。東京オリンピックを見据えた警視庁庁舎の外装美観リフレッシュ工事で全面採用された他、トヨタ自動車各工場の外装メンテナンス工事で継続採用されるなど数千平米規模の案件が相次いでいる。そこに今回のリニューアル発売が加わり、「光触媒コーティング材の本命として市場に打って出る」と展開を加速する。



HOME建築物 / インフラ光触媒コーティングの本命狙う

ページの先頭へもどる