静岡県三島市の塗料ディーラー・堀江塗料（堀江博子社長）がユニークなビジネスを始めた。家庭用のおそうじブランド「幸日堂（こうじつどう）」の展開だ。自社で扱うプロ向けの洗浄剤を家庭用の掃除グッズとして新たにブランディング、ネット販売のサイトも開設した。「プロも驚きの洗浄力は、家庭用でもインパクト十分。お掃除という"暮らしのお役立ち"を足掛かりにB to Cビジネスの可能性を探りたい」（堀江社長）と期待を膨らませる。
もともと自社で取り扱っていた水系の有機物分解洗浄剤が、ハウスクリーニングやリフォーム業、塗装業者などのプロにすこぶる評判が良かった。
水と植物由来の成分からなるシンプルな洗浄剤だが、油脂分やたんぱく質などの固まりがちな汚れを強力に分解。しつこい油汚れやタバコのヤニはもちろん、フローリングのワックスまできれいに剥がす洗浄力がある。しかも、吹きかけて、こすって、拭き取るだけなので泡立ちもなく作業もいたって簡単。「工事に伴う清掃作業では欠かせない洗浄剤」（ユーザー）として、同社の隠れたヒット商品となっていた。
その洗浄剤を一般家庭向けに新たにブランディングし、「幸日堂」のネーミングでシリーズ化。ネットショップを通じて販売するB to Cビジネスをスタートさせた。
きっかけは、家庭の主婦など一般の人たちの反応から。「当初は業務用だけで展開していたのですが、試しに私の友人や知人に使ってもらったところ、そのどれもが想像以上の反応で『ぜひ売ってほしい』とリピートが続出、一般向けにも十分通用する商材だと確信しました」（堀江社長）と新たなビジネスへの手応えを感じた。
このモニタリングで「想像以上の反応」をもたらしたのは、やはり同品の洗浄力によるところが大きい。『コンロまわりのガンコな油汚れがスッキリ取れる』『何度拭いても落ちなかった汚れが簡単に落ちた』など市販の洗剤で手こずっていた汚れが、「吹きかけて、こすって、拭き取るだけ」で簡単に落とせるため、強いインパクトをもたらした。加えて、水と植物由来成分でできている安心感、消臭や除菌機能まで備えているので赤ちゃんや介護が必要な人、ペットと暮らす家庭などでは特にその効果を実感、市販の洗浄剤との違いを強烈に印象づけた。
本業とのシナジー期待
新たに立ち上げたおそうじブランド「幸日堂」のコンセプトは、"おそうじを楽しく、毎日をちょっと幸せにする洗浄剤"。しつこい汚れや諦めていた汚れが簡単に落とせるので掃除自体が楽しくなり、家の中がどんどんキレイになって日々の暮らしの幸せ感が増す、そんな思いがこもったおそうじブランドだ。
同社は「幸日堂」を展開するに当たり、前述の水性洗浄剤を万能クリーナーの「おそうじ水」としてメイン商材に据えた他、「陶器洗面台」や「キッチンシンク」「浴室水あか」「キッチン換気扇」「エアコン室外機（塗装面の色ツヤ回復）」などの各種洗浄剤をラインアップ。それぞれ単独商品として、また贈答用にも利用しやすい6本セットでも用意した。
容器もそれまでの武骨な業務用から、インテリアとしても映えるパッケージとラベルにデザインし直し、新築祝いや出産祝い、実家への手土産などちょっと気の利いたギフトとして利用できるようプロデュース。「大掛かりな宣伝はできませんが、使った人の口コミで広がっていく、そんな商品に育ってくれれば」（堀江社長）と期待を込める。先月にはネット販売サイトを開設、SNSなどを使ってじっくりと広めていく考えだ。
事業化に当たっては、中小企業を対象にした県の助成金事業に採用され、地元の商工会議所の支援などもあり資金や費用の多くを賄えた。もともと自社の顧客に売れている商品をB to C向けに転用しただけなので、売れ残る心配もしなくて済む。そうしたリスクヘッジを踏まえた上での新たなビジネスへのチャレンジだ。
「多くのお客様に支えられて本業の塗料販売業を滞りなく進められている一方で、だからこそ自社の可能性をもっと広げられるビジネスにチャレンジしたいという気持ちがあります。B to C、それもお掃除という人の暮らしに寄り添ったビジネスには普遍的な可能性があると思いますし、そこで得られた経験や知見がより良いサービスとなって本業にも波及するのではと期待しています。お家の中をキレイにする延長線上で、内装塗料のチャンスも広がるかもしれません。まずはリスクを抑えてスタートさせることができたので、肩肘張らず、楽しむくらいの気持ちでB to Cビジネスにチャレンジしたい」と自然体で臨む。
