塗装が新たな価値をつくる―そんな可能性を感じさせるイベントが東京・六本木のグランドハイアット東京で開催された。仕掛けたのはヤマハの特約楽器店・日響楽器とメタルコーティング材「Verometal(ヴェロメタル)」の販売元・アイチ金属。両社がコラボして生まれたヴェロメタル仕様のピアノ「The Metallic Art Piano」の販売がスタートし、それを記念したローンチイベントが開かれた。

ピアノは子供の習い事として使われ始めることが多いものの、成長するにつれ単なる"置物"になってしまうことも多い。「まだまだ音色はきれいなのに使われなくなるピアノが増える。その流れを変える突破口を探していた」と話すのは日響楽器の杉山雅紀氏。そんな時、アイチ金属の山田実社長に出会い、ヴェロメタルの話を聞いたという。

ヴェロメタルはドイツ生まれの特殊メタルコーティング材。極微細に粉末化した金属と特殊溶剤をブレンドしてできたリキッドメタルとも呼べるもの。液体化したことで金属そのものをさまざまな物に塗れるようになり、鉄や銅、真鍮など金属特有の煌めきと重厚感で、味わい深い表情を演出できるのが特徴。山田社長は「ピアノはブラックと相場が決まっているけれど、そこにこだわる理由はない。ヴェロメタルの塗装で新たな生命が宿るのではないかと考えた」と話す。

ローンチイベントでは、ヴェロメタルで塗装された「Precious(プレシャス)」や「Reborn(リボーン)」と名付けられたピアノがお目見え。金属特有の重厚な表情とアンティーク感を醸すエージング技法によってこれまでのピアノのイメージを一新、上質なメタルファニチャーとしても成立する新たな価値を獲得した。

ヴェロメタル仕様にしたことで、ピアノが単なる置物に成り下がることはもうない。自動演奏機能を加えれば、目を引く容姿と素敵な音楽で空間を支配、オシャレなバーやクラブで引っ張りだこになるはずだ。金属を塗装したピアノの圧倒的な存在感を見せつけていた。

イベントの最後には、ヴェロメタルで塗装されたグランドピアノをYouTubeなどで活躍するピアニスト・Jacob Koller氏が演奏。来場者は世界に1台だけのピアノの音色を楽しんだ。