第1位 値上げラッシュの1年
原料調達難による供給不安も

値上げラッシュの1年となった。コロナ禍に端を発した原材料価格の高騰で、塗料メーカー各社は相次いで値上げを実施。物流費高騰による運賃価格の改定と併せ、ダブルの値上げとなった。グローバル経済の中で、デフレ下の日本の企業が原材料を買い負けしている実態もあり、塗料メーカー各社は原材料の調達難にも頭を悩ませる。値上げだけでなく、不採算品の生産中止など供給面にも影響が広がりそうだ。

第2位 製造業に大打撃、部材調達難
グローバルサプライチェーン再考か

自動車産業の半導体不足による生産調整に象徴されるように、製造業は部材調達が困難になり生産に支障が出る状況が起こった。自動車だけでなく家電、住宅設備など多くの産業分野で生産量が減少し、関連した塗装品を請け負う塗装会社などにも大きな影響を及ぼした。グローバルサプライチェーンの混乱は長期的傾向との見方もあり、今後生産拠点の一部国内回帰を期待する声も出ている。

第3位 塗料用標準色「M版」発刊を中止
組合活動に打撃、代替会社の選定へ

日塗工は10月、2022年11月に発行予定の「塗料用標準色M版」及び2022年2月発行予定の「2022オートペイントカラーズ」の発行中止を発表した。理由について日塗工は「製作委託会社の辞退申し入れによるもの」と説明。販売代行を行っている塗料メーカーや組合団体は、予約受付を済ませていたタイミングだっただけに混乱に見舞われた。組合財政への影響は大きく、代替製作会社の選定を急いでいる。

第4位 国内出荷、リーマンに次ぐ落ち込み幅
150万トン台は38年ぶり

新型コロナウイルスの影響を受け、2020年度の国内の塗料出荷(販売)は、数量ベースで対前年比7.8%減の156万2,421トン、金額ベースでは7.9%減の6,222億7,900万円となった。数量は3年連続、金額は2年連続のダウンとなった。数量150万トン台は、昭和57年以来38年ぶり。リーマンショックにより200万トン台から180万トン台に減少した平成20年度に次ぐ下落幅となった。

第5位 コロナショック、海外事業が補完
大手上場企業3月期決算

2021年3月期の上場大手4社(関ペ・エスケー・中国・大日本)の総売上高は前年比10.3%減の5,947億1,100万円、総営業利益は2.4%減の505億5,800万円となった。新型コロナウイルスに伴う業績への影響に関心が高まる中、汎用分野を中心に需要回復を顕著にする海外事業に比べ、国内は需要低迷の長期化が響いた。2021年度は、各社需要回復に期待するも、原材料高騰に強い警戒感を示した。

第6位 アスベスト対策法案、規制強化
小規模塗装店にも対応求められる

2020年の大防法及び石綿則の改正を受け、建物の解体・改修工事におけるアスベスト対策の規制が強化された。スレート、ケイカル板、窯業サイディング、石綿含有仕上塗材などのレベル3建材も規制対象になり、塗り替え工事に際して対象基材の事前調査や監督官庁への報告義務が生じる可能性が高くなった。これにより、町場の小規模な塗装店にもアスベスト対策の知識とスキルが求められることになる。

第7位 塗料ユーザーのweb発注拡大
販・装の業務効率化にも

塗装店などの塗料ユーザーが、スマホやタブレットで商品を発注スタイルが広がりつつある。塗料販売店が顧客に向け、従来の電話やFAXに変わるサービスとしてweb発注システムを整備。利用者は時間や曜日を気にせず発注でき、歓迎する声も出ている。塗料販売管理のシステムベンダーがサービスを始めた他、LINEを利用して個別に始める塗料店も増加。材料発注の新たなスタイルとして広がりそうだ。

第8位 剥離剤使用時の中毒多発
有害物フリータイプ開発で対応

剥離剤を使用する作業で中毒など労働災害が頻発した。7月に厚生労働省は「剥離剤を使用した塗料の剥離作業における労働災害防止について」(一部改正)を通達し、適正な使用について注意喚起を促した。剥離剤に含まれる有害物(ジクロロメタンやベンジルアルコールなど)を吸い込み中毒事案が発生している。一部の材料メーカーは対象有害物を含まない剥離剤を開発、上市し対応している。

第9位 展示会が一部で再開
オンライン併用も対面切望

昨年4月の緊急事態宣言から、多くの人が1カ所に集まる展示会の中止、延期が続いていたが、今年は一部で再開する動きが見られた。展示会によってはオンラインを活用し、HP上で製品紹介や商談などを行うサービスも併用されている。しかし、実際の製品に触れ対面で折衝するリアルな展示会に勝るものではなく、多くの人が展示会場に足を運んでおり、来場者数もコロナ前の水準に近付きつつある。

第10位 改正木材利用促進法を施行
民間建築物に対象を拡大

国は10月1日、「脱炭素化社会の実現に資する等のための建築物等における木材の利用の促進に関する法律」(改正木材利用促進)を施行した。これまでは低層公共建築物の原則木造化を定めたものだったが、改正法では民間建築物にも対象を拡大。昨年10月、当時の菅首相がカーボンニュートラル実現を宣言して以降、脱炭素化の動きが加速しており、CO2固着機能を持つ木材利用の機運が高まっている。

番外編 クラウドファンディングで商品開発
ファンが支援、約100万円を調達

企業の販促活動をアニメキャラクターやアイドルを通じて支援する塗料屋サンライズは、クラウドファンディングサイト「キャンプファイヤー」で開発資金約100万円を調達した。同社のオリジナルキャラクターをデザインした塗料スプレー製品の販売に、同社のファンが呼応。アニメを使った販促活動のポテンシャルを訴求する同社のビジョンにファンが寄付という形で応えた。