日本ペイントマリンは加水分解型としては世界初となる防汚剤フリー船底防汚塗料「アクアテラス」を開発した。防汚剤の環境規制に対する気運が国際的に高まる中、一切の防汚剤を含まない防汚塗料を投入することで、環境技術の高さを世界の需要家にアピールする狙いがある。

採用したのは、同社が"HydrophiX"テクノロジーと名づける新規加水分解技術。人工血管や人工心臓に使われる抗血栓性ポリマー素材にヒントを得、樹脂に親水性と疎水性を併せ持つミクロドメイン構造を構築。加水分解反応により塗膜表面のスムーズな更新作用を得ることに成功した。

防汚性に加え特長に掲げるのは、高い平滑性維持力に伴う低摩擦効果。船舶の燃費低減効果に寄与し、練習船による実証では従来品と比べて約10%の低摩擦(燃費低減)効果を確認。低燃費型防汚塗料として展開する「LF-Sea」と比べて約2.5倍、超低燃費型タイプの「A-LF-Sea」と比べても約1.3倍の低摩擦効果が得られたという。同社マーケティング部の中川誠氏は「2012年時の外航海運の炭酸ガス排出量は7.9億トンとなっており、10%の燃費低減で7,900万トンの削減効果が得られる。杉の木換算では57億本に相当する」と効果の高さを強調する。

防汚剤フリー塗料は1990年代後半にシリコンの撥水性を利用したシリコーンエラストマー防汚塗料「ECOLOSILK」を投入したが、常に最新のスプレー機の使用を要することや他の塗料をはじくなど、施工面で制御が難しかった経緯がある。「アクアテラス」の価格については、「従来品の数倍にのぼる見込み」としているが、燃費低減効果を訴求することで市場性に期待する。

ラインアップは加水分解の速度に応じて、外航船(高速高稼働)「アクアテラス1000」、外航船(一般)「アクアテラス2000」、内航船(一般)「アクアテラス6000」、新造船艤装用「アクアテラス8000」の4製品。