原料高が打撃、営業減益避けられず
転換期に技術回帰の方向

平成30年3月期は、原材料高及び運賃値上げの影響を受け、塗料上場企業14社中9社が営業減益、個別業績では11社中9社が減益となった。今期は価格是正と販売品目の入れ替えで収益回復を見込むが、同業競争は一層厳しく体力勝負の様相を色濃くしている。ただ長く続く競争状態が活力を奪いかねないとの見方もあり、新製品開発及び市場創出に転じる動きも活発化してきた。


構造改革からM&Aを絡めた成長投資へと施策を講じてきた上場大手メーカーは、それぞれの事業エリア、事業分野で転換期に入ったとの認識で共通する。

関西ペイントは売上高4,019億7,700万円(21.7%増)、営業利益358億200万円(1.4%増)、経常利益332億4,100万円(16.9%減)、当期純利益177億100万円(26.8%減)を計上。セグメント別では、日本の売上高1,555億5,200万円(2.7%増)、経常利益190億5,100万円(19.1%減)をはじめアジア、アフリカ、その他(北米など)が増収減益。自動車、建築ともに好調を維持するインドとポリサン、ヘリオスとの連携を進める欧州が増収増益となった。

4月の下方修正の要因の1つとなった中東事業について石野社長は「発展途上国では、アップダウンがあるのは当然のこととしてリスクの取れる範囲で事業を展開してきた。しかし、事業を開始して以降の原油下落、イラン制裁、為替暴落などの諸事情に加え、昨今のトランプ大統領の政策が影響し、長期的な成長は見込めるものの短期的なリカバリーは難しいと判断した」と人員整理や債権の減損処理に踏み切り中東事業の見直しに言及した。

今後もインド、欧州の成長を基盤にアフリカで上積みを図っていく考えは変わらないものの、分散配合技術を活用した新規分野への展開にも意欲を示した。

期末配当は13円50銭とし年間配当金は27円。来期は中間配当で創業100周年記念配当金2円を上積みし16円を配当。期末配当14円を加え、計30円を予定している。

通期予想は売上高4,350億円(8.2%増)、営業利益400億円(11.7%増)、経常利益465億円(39.9%増)、当期純利益275億円(55.4%増)を見込む。

エスケー化研は売上高913億3,200万円(0.5%減)、営業利益113億9,900万円(9.1%減)、経常利益113億2,900万円(11.6%減)、当期純利益79億2,000万円(11.7%減)の減収減益となった。

大規模再開発やオリンピック関連需要があったものの、労務者不足による工事の遅れに加え、建築費、人件費が高騰。個別業績では売上高0.2%増の約782億円と気を吐いたものの、需要不振が最後まで響いた。また利益面では、為替差損約6億4,000万円を計上した。

通期は売上高950億円(4.0%増)、営業利益111億円(2.6%減)、経常利益112億円(1.1%減)、当期純利益78億4,000万円(1.0%減)を見込む。

中国塗料は売上高829億8,000万円(0.7%増)、営業利益37億6,100万円(31.2%減)、経常利益39億1,200万円(35.6%減)、当期純利益24億4,700万円(32.8%減)となった。コンテナ需要が下期にかけて急回復が見られたものの、新造船需要で調整局面が続き売上を下押しした他、原材料価格の高含みも影響した。

セグメント別では、日本が売上高342億9,500万円(3.5%減)、セグメント利益7億7,000万円(75.7%減)の他、中国は増収増益、韓国は減収減益、東南アジアは増収減益、欧州・米国は増収増益となった。

通期は船腹過剰による新造船向け塗料の価格競争と原材料価格の高止まりが見込まれることから、売上高830億円(0.0%)、営業利益30億円(20.3%減)、経常利益33億円(15.7%減)、当期純利益20億円(18.3%減)を見込む。

大日本塗料は売上高741億1,900万円(1.8%増)、営業利益65億8,800万円(0.8%増)、経常利益63億9,200万円(3.1%減)、当期純利益45億7,300万円(12.1%減)となり、営業利益は5期連続で最高益を更新した。岩淺壽二郎社長は「原材料高をもう少し食い止めたかった」と悔しさをにじませながらも、自己資本比率は53.3%と4.8ポイント上昇し「事実上、無借金状態になった」と評価した。

事業別では、海外塗料事業と照明機器事業が収益面で大きく寄与。国内塗料事業は構造物分野、工業用分野で売上を伸ばしたが、建材分野が減少し、売上高533億7,400万円(0.2%減)、営業利益34億6,600万円(4億1,900万円減)。海外塗料事業は、メキシコ並びにタイの自動車部品向けが好調に推移した他、中国でも構造物分野で伸長し、売上高79億6,000万円(13.4%増)、営業利益14億500万円(2億1,800万円増)と増収増益につなげた。

通期は売上高750億円(1.2%増)、営業利益66億円(0.2%増)、経常利益65億円(1.7%増)、当期純利益42億円(8.2%減)を見込む。

岩淺社長は「今期は価格是正をしっかりと進めつつ、製品ミックスとユーザーミックスを図り高収益化につなげていきたい」とコメント。更に6月の株主総会で里隆幸氏が代表取締役社長に昇格する人事を発表した。

平成30年3月期連結業績



平成30年3月期連結業績
平成30年3月期連結業績

HOMENew Trend原料高が打撃、営業減益避けられず

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