海外事業回復、来期8,900億円へ

日本ペイントホールディングスの2020年12月期決算は、海外事業の順調な回復を受け、増収増益を計上。売上収益、営業利益とも過去最高を更新した。2月10日の会見で田中正明社長は「国内事業は減収減益を余儀なくされたが、海外のパートナー会社が各地域で強みを最大限に発揮し、コロナで受けた打撃から早期の回復を遂げた」と説明。2021年通期もアジア合弁企業の100%化などにより売上収益、営業利益、当期利益で過去最高を見込む。


連結業績(IFRSベース)は、売上収益7,811億4,600万円(12.9%増)、営業利益869億3,300万円(11.4%増)、税引前利益887億1,500万円(11.6%増)、当期利益681億7,500万円(21.2%増)を計上。親会社の所有者に帰属する当期利益は、446億4,800万円(21.6%増)となった。

2020年は新型コロナウイルスの影響に見舞われつつ、売上収益においては、豪・Duluxグループ、トルコ・Betek Boyaの買収効果などにより増収基調を維持したが、営業利益は第1四半期で前年同期比24.3%の減少。中国事業の早期回復により、その後は持ち直したが、第3四半期までは通期業績で減益を見込んでいたことを鑑みれば、第4四半期の回復が驚異的だったことがうかがえる。

その要因について田中社長は、「1つ目は、NIPSEA中国事業・汎用塗料の大幅な増収増益にある」と指摘。「ロックダウンが解除されて以降、新築着工の回復に加え、7月より既存住宅の内装需要も好調に推移し、通期ベースで約10%の売上増となった」と述べた。

その他海外事業においてもDuluxグループが巣ごもり需要を受け、DIY需要が伸びた他、Betek Boya及び米州・Dunn Edwardsも政府の景気刺激策により塗料需要が増加するなど、各地域とも汎用事業が牽引した。

その一方で、国内事業は苦戦を強いられた。分野別では、自動車生産台数の減少により自動車用塗料が前期を下回った他、新設住宅着工戸数の低迷の影響で工業用塗料が減少。汎用塗料も前年を下回った。その結果、国内事業の連結売上収益は、1,596億2,500万円(12.6%減)。連結営業利益は、10.1%減の332億5,100万円となった。

グループ全体の2021年度の見通しは、①新型コロナの影響からの回復②アジア合弁事業の100%子会社化③インドネシア事業の統合完了による売上収益の貢献④自動車用塗料事業の回復を想定する。そのため通期業績は、売上収益8,900億円(13.9%増)、営業利益870億円(0.1%増)、税引前利益880億円(0.8%減)、(親会社帰属)当期利益670億円(50.1%増)の増収増益を見込む。営業利益は、アジア一体化に伴う印紙税50億円を除くと920億円となり、売上収益、当期利益ともに過去最高となる見通しだ。

またこの日行われた取締役会で、同社株式の分割を決議したことを発表。2021年3月31日を基準日とし、普通株式1株につき5株に分割する。

目的について田中社長は、「投資単位当たりの金額を引き下げることで、市場流動性を高めることができる」と説明。分割後のEPS(1株当たり利益)は29.17円を予想する。

加えて年間配当金は、3月に創業140周年を迎えることから記念配当を実施。分割後の年間配当額は10円(上期4円+記念配当1円、下期5円)となる。また「アジア合弁の100%化に伴う割当増資により時価総額は、4兆7,000億円になる」と述べた。

田中社長は、今年1月にスタートした自動車塗料事業の再編についても触れ、「1月に米州の組織再編が完了し、7月には欧州の組織再編を完了する予定。国内投資を含めて、自動車用塗料事業を更に強化し、お客様への迅速な製品・サービスの提供をワンストップで実現できる体制を整えるとともに、グローバルで品質保証体制を強化していく」と市場関係者にアピールした。

SC改革に着手、工場再編を積極化

会見では、田中社長が管掌を務めるサプライチェーン改革についても言及。「国内投資においてはリーマンショック以降抑えてきた経緯もあり、サプライチェーン全体を見直しながら、工場の再編に着手していく」と述べた。

具体策としては、昨年DXを導入した粉体塗料工場(千葉)を新たに竣工した他、今後は樹脂工場(千葉)の再建や広島工場の一部を岡山工場に移管する予定。また愛知県にある自動車塗料工場の高浜工場と武豊工場の統合を発表するなど、「今ある形をそのまま使うのではなく、海外パートナーの進んだ技術を導入しながら生産性向上、稼働状況が可視化できる体制を構築していきたい」との方針を示した。再編完了の期間については、「7年くらいかかると見ている」と述べた。

また物流面については、「トラックドライバーの高齢化をはじめ、危険物取り扱いによる特殊運送の課題、工場従業員の年齢構成の問題があると認識している」と説明。今後は工場間輸送の簡素化に努める一方、「海外拠点ではロボットが原材料を受け取り、工場に移送している」とし、工場内体制の包括的取り組みでサプライチェーン効率化に努めていく姿勢を示した。



田中正明社長
田中正明社長

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