塗料の産廃費用を劇的に減らせる商品が販売されている。福岡県の塗装業・フクモト工業(福本満寿男社長)が発売した廃棄塗料用乾燥シート「MGフィルムDF-3000」だ。まず、水性塗料を乾燥させることで重量はおよそ半減し、更に乾燥後の塗膜は"固体"で捨てられるので廃棄費用は"液体"の約3分の1。つまり、廃塗料をそのまま廃棄するのに比べ8割以上も産廃費用が抑えられる算段だ。塗装店はもちろん、場合によっては塗料販売店にも朗報になるかもしれない。
廃棄塗料用乾燥シート「MGフィルムDF-3000」は、特殊樹脂のフィルムをシート状にした商品。幅40cm×長さ100m(ロール)の荷姿で販売している。
使い方は至って簡単。任意の長さにカットして広げたシートの上に、廃棄する水性塗料を缶から流して乾燥させ、乾いた塗膜をクルクルと巻いて捨てるだけ。単純明快な商品だ。
ポイントは、乾いた塗膜の剥がしやすさにある。水性塗料の乾燥塗膜が最も剥がしやすい特殊樹脂フィルムを採用して商品化したことで、塗料を"固体"として廃棄できるようになった。
「異業種交流で、フィルムメーカーの方と知り合ったことが大きい。『塗料を乾燥させて捨てるため、乾いた塗膜が簡単に剥がせるシートがほしい』と持ち掛けたところ、塗膜が最も剥がしやすいフィルムをチョイスし、商品化に協力してもらえた」(福本社長)と経緯を説明する。
塗料の産廃費用を減らすために試行錯誤する中で、「塗料を乾燥させて固体として廃棄できないか」と以前から温めていたアイデアが、フィルムメーカーと知り合ったことによってつながった。「油性塗料を乾燥させるのは屋内貯蔵所に限られるなど制限があるので、水性塗料を対象にした。建築塗装では水性塗料の方を多く使用するので、使い勝手はあると思う」と商品化を進めた。
福本社長によると、水性塗料を乾燥させて液体から固体にすると、重量がおよそ半減するという。そして産廃に出す際も、「塗料を液体のまま出すとキロ当たり120円のものが、乾燥させて固体にすると約3分の1の42円に下がる」と同社のケースで例示。
例えば、ドラム缶1本分を廃棄する場合、液体のままだと120円/kg×230kg(比重加味)=2万7,600円の費用がかかる。これを乾燥させて廃棄すると、42円(固体の産廃費用)×120kg(約半減した重量)=5,040円と、8割以上も削減。塗料の産廃費用を抑える上でかなり効果的だ。
それではここで、廃棄塗料用乾燥シート「MGフィルムDF-3000」のフクモト工業での使い方を見てみよう。
同社ではまず、シートを張り付ける専用のボードを用意。9mm厚の三六板(さぶろくばん)をタテ半分にカットしたような、幅450mm×長さ180mmのボードだ。その上にカットしたMGフィルムを置き、周囲を養生テープで留めれば専用ボードが完成、いたって簡単なつくりだ。塗料を流し入れたときにこぼれないよう、板の4辺に細い桟木を取り付ければ完璧。
あとはそこに、廃棄する塗料を1斗缶などから流し入れるだけ。「当社のボードのサイズだと、1枚当たり3~4kgの塗料を処理できる。流し入れたあとは放っておくだけで5日もあれば乾燥し、その塗膜をクルクルと巻いて作業は終了。本当に簡単に剥がせるので、剥がす作業が結構おもしろくてクセになる(笑)」と、なんともユニークな商品だ。
同社では、塗料廃棄作業のための簡単な小屋をつくり、その壁に専用ボードを放置しておける棚を造作(上の写真)。全部で20枚ほどのボードで廃棄塗料を乾かすことができる。作業らしい作業と言えば、乾燥用のボードに塗料を流し入れるときだけだが、それとて「ものの数分で終わる作業なので、廃棄する塗料を職人に指示しておくと現場に行く前に終わらせてくれている」と、負荷もかからない作業だ。
「国内で廃棄される塗料の総量の推計が、年間で11万トンに達するという話を以前聞いたことがある。豪華客船のダイヤモンドプリンセス号が11万5,000トンというから、あれくらいの規模の塗料が毎年捨てられているようなもの。SDGsが叫ばれている時代、塗料廃棄量の減容化に少しでもお役に立てれば」と話し、環境への負荷低減と産廃費用の削減、業界企業のイメージアップを薄いフィルム商品に託す。
なお、廃棄塗料用乾燥シート「MGフィルムDF-3000」は幅40cm×100mのロール状で、税込み3万3,000円/本+送料。「1回使い切りではなく、何回も繰り返して使えるのでかなり長くもつ」とのことだ。
問い合わせは同社までメールで。info@house-make.net
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