目視点検を実現、含浸工法に脚光 コンクリート劣化を未然に防ぐ

大同塗料はシラン・シロキサン系表面含浸材「アクアシール1400」を市場に投入して以来、右肩上がりで実績を伸ばし続けている。土木コンクリート構造物における予防保全の高まりを追い風に近接目視点検が可能な同品の評価が高まっていることが要因。同社は更なる需要拡大のため土木構造物から一般建築物、被覆工法の拡充へと深掘りを進めている。


アクアシール1400はコンクリート構造物向けに開発した表面含浸材で2004年から北海道を中心に採用され、全国へと採用物件を拡大し、シラン系含浸材の代表的ブランドになるまでに成長した。

同品の特長は、同品をコンクリート表面に塗布するだけで内部に深く浸透し、コンクリート表層部に吸水防止層を形成し、水の浸入を抑止する。これによりコンクリートの劣化要因となる塩害、凍害、アルカリ骨材反応から保護する他、鉄筋の腐食抑制、美観・景観維持に寄与する。また塗膜を形成しないため、コンクリート内部に侵入した水分を水蒸気として放出するなど、水蒸気透過性に優れている。

特に評価を高めているのが、コスト低減と施工品質の確保を容易にする施工性の高さ。施工は刷毛、ローラー、エアレスによる1回塗り仕様で、かつジェル状のため壁面などの垂直面や天井面においても垂れることなく、面積に対して必要量を塗布することで、性能を付与することができる。

従来技術とのコスト比較では、エポキシ/ウレタン系の4工程による表面被覆工法と比べて、同じ15年の耐久性を確保した上で3分の1前後のコストに低減できるなどコストメリットも特長の1つとなっている。

同品の採用が拡大したのは、国が2013年にまとめたインフラ長寿命化計画が追い風となった。

全国に設置されたインフラの安全性向上と効率的な維持管理の実現を目的にした基本計画の策定により、予防保全に対する取り組みが普及。定期的な点検・診断が求められる中、点検作業の簡素化の重要性が高まり、コンクリート素地の外観を阻害せず、目視点検を可能にする表面含浸工法に脚光が集まった。

それに伴い重要となるのが、性能の担保。これについては長寿命化計画の策定に先立ち、土木学会が2005年に表面保護工法設計指針(案)に基づく性能(品質)評価を策定。シラン系表面含浸材に求める外観品質、透水抑制率、吸水抑制率、中性化抑制率、塩化物イオン浸透抑制率、透湿性を試験項目に設定し、同品はいずれの試験項目も高い水準でクリア。材の含浸深さにおいては数値基準を設けていないものの、アクアシール1400は標準仕様(0.20kg/㎡)で4~7mm、複合劣化対策仕様(0.35kg/㎡)で6~9mmと高い性能を保持する。また浸漬30日間の質量変化率を0.3%以下とする2011年に発表された土木研究所資料第4186号に基づく性能(品質)評価においても性能を保持している。

これまでの実績としては、道路橋、橋梁、橋桁、トンネル、ダム、建築物など。施主も国、都道府県、市町村、鉄道会社、高速道路会社など多岐に及ぶ。更にNEXCOにおいては新設敷設時での表面含浸工法の採用を積極的に推進しており、同社担当者は「10年後には橋長15m以上の約15万橋あるコンクリート橋の半数以上が50年を超える。予防保全に資する技術としてアクアシールの提案活動を進めていきたい」と話す。

今後は土木コンクリート構造物以外のコンクリート建築物への展開も注力していく方針。また一昨年には超速硬化ウレアウレタンシステム「ハイボンドRUS工法」を開発し、はく落防止・コンクリート表面保護工法として展開を進めている。

同工法は施工後数分で塗膜強度が発現するウレアウレタン樹脂の特性を生かした表面被覆工法で、はく落防止の他、鋼構造物の防食塗装、ジョイント部などの防水に寄与する。主材を混合する手間がない他、飛散を軽減した専用吹付機により大面積を短時間で施工できるなどの特長を持つ。

主な実績
○道央圏連絡道路・祝海橋(北海道、2008年)
○北越急行ほくほく線・大島・虫川大杉間第二沢田高架橋修繕(新潟県、2009年)
○東名阪自動車道高針IC~名古屋南JCT新設(愛知県、2009年)
○東京国際展示場会議棟改修工事(東京都、2011年)
○中国自動車道吹矢谷架替え(広島県、2011年年)
○東京ゲートブリッジ(東京都、2012年)
○紀勢自動車道井戸谷橋他2橋(三重県、2012年)
○琵琶湖大橋橋梁補修(滋賀県、2013年)
○東京電力千曲川発電所(長野県、2013年)
○圏央道トンネル(神奈川県、2013年)
○阿蘇大橋橋梁補修(熊本県、2014年)
○東風平大橋補修工事(沖縄県、2016年)

大同塗料のWEBリンク


プロフィール

企業プロフィール  昭和7年創業。屋根用塗料、床用塗料など専門性が求められるニッチ分野での展開を得意とし、機動力と技術サポートで存在感を高める。中でもプール用塗料は業界トップシェアを誇る。国内市場に特化する同社にとって、継続的な新規需要開発を成長の根幹に据えており、内装用分解・消臭塗料「イートシック」、ビニルハウス用遮光材「クールコート」など、ユニークな製品を生み出してきた。2001年から土木学会・土木研究所などと産学共同で研究開発してきた表面含浸材のアクアシール事業もその1つ。新規事業の代表格として、実績作りに奔走。物件の大小問わない提案活動が実を結び、実績が実績を呼ぶ状況を作り上げている。


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