画像から採寸、距離・面積を計測
診断、見積り作業を一気に短縮

日本塗装工業会(会長・乃一稔氏)は、塗装工事の生産性向上を目的としたタブレットデバイス用アプリ「PictRuler(ピクトルーラー)」の販売を11日から開始した。建物を撮影した画像から距離、面積を自動的に計測し、積算・見積りに落とし込めるのが特徴で、現場での採寸から見積りまでの作業フローを一気に短縮化する。今後は塗装、防水など外装工事のスタンダードアプリとして広めたい考えだ。


「PictRuler」(特許申請中)は、建物の画像から壁や屋根、開口部、付帯部などそれぞれの寸法を自動的に計測し、表示するアプリ。対象の建物を撮影してアプリに取り込み、部位や箇所を指定するとそれぞれの寸法が表示される。これまで現場に出向いて時間をかけて行っていた実測作業から解放され、人的、時間的な面で生産性を飛躍的に高めることができる。

例えば外壁の横方向の長さ1辺を実測してアプリに入力すると、それを基準にその他のすべての2次元の寸法が自動的に算出される仕組み。斜傾している写真でも補正機能があるので問題ない。

またオプション(別途料金)で計測値をTSV形式で出力し、Excelに読み込むことができるため、寸法の拾い出しから見積りまでの作業を一気通貫で行える。工事項目ごとの単価を設定し、見積書フォーマットを連動させておけば、その場で見積書を作成、提示することも可能だ。同会が120㎡(36坪)の住宅を現地調査、図面作成、見積り作業、見積書用紙への清書に要する作業量を試算したところ、3.5~7人工から1~2人工に収まるとしている。

アプリの開発は、建築設計CADのフリーソフトウエアとして広く利用されている「Jw_cad」の開発チームが手掛けた。そのため画像からJw_cadの図面に変換できる機能を備えており、マンション大規模修繕や企業物件向けなどで求められる詳細な設計図書に反映できる強みがある。

日本塗装工業会とJw_cad開発チームとの接点の中からアプリ開発に向けて動き出し、商品化を実現した。
画像取り込みから計測までを行う基本プランの使用料は年間3万円。他のソフト開発会社の計測・積算システムが数十万円から100万円台なのに対して格段にリーズナブルな価格設定を実現した。開発を手がけた豊田洋一氏(豊田設計)は「多くの人に利用してもらいやすい価格設定にし、実際に使用する中から出てきた要望や意見を吸い上げてバージョンアップし、完成度を高めていく」とコメント。多くの人の利用と要望の吸い上げで完成度を高めてきたJw_cadの開発思想を踏襲する。同会としても「建物の規模や形状に対応した機能開発の他、例えばカラーシミュレーションや足場の必要数量と設置図、クラックの長さの計測などさまざまな要望が出てくると思う。それらをひとつひとつ備えていくことで塗装工事の真の実態に即したアプリに近づけていきたい」と、Jw_cad開発チームとのコンビネーションを最大限に生かしていきたい考えだ。

動作環境はWindows10搭載のタブレット、iPad(近日リリース予定)に対応し、アプリはWindowsストア及びAppleストアを通じ、電子決済によるダウンロードで入手する。日塗装会員に関わらず誰でも購入可能で、日塗装会員には特典として基本プランの料金のみで、オプション機能のCADデータ変換機能(年間1万5,000円)及び見積り作成機能(年間1万5,000円)を使用することができる。

建築塗装工事の8割強は改修工事で占められ、新設と異なり図面があるケースは少ない。このため現場で建物の各部位、各箇所の実測を行い、その数値を積算、見積りに落とし込む作業が行われている。この煩雑な作業にかかる人的、時間的なコストを低減し、塗装工事の生産性を高めるのがアプリの最大の狙い。「国交省が各種施策に注力しているように、建設業の生産性の向上は担い手不足への抜本的な対策でもある。そうした社会的意義を踏まえた事業にしていきたい」と狙いを語る。

一方で、インターネットの普及により施主が情報武装している中で、従来の一式見積りのスタイルは通用しなくなっており、項目ごとの数量と金額が確認できる分かりやすい見積書が必須となっている。また、相見積りが常態化している中で、面積や長さなどの数値が業者ごとで異なる点が施主の不審を招いており、根拠を伴った数値を示すことが信頼を高める上で重要。

「このようなIT技術を使いこなすことが生産性向上ばかりでなく経営の近代化にも寄与していく」とし、導入を促していきたい考えだ。



実際の画面。画像から縦横比を計測
実際の画面。画像から縦横比を計測

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