住宅塗装市場、次期戦略製品は「無機系塗料」

日本ペイントは、「無機系塗料」を建築塗料市場のボリュームゾーンに押し上げる。シリコン樹脂塗料とフッ素樹脂塗料の間に新たなヒットゾーンを形成し、建築塗装市場の活性化につなげる。価格帯や作業性を含め、塗装店がハンドリングしやすい無機系塗料に仕立て、塗装ビジネスの高付加価値化をリードする。6月に発売した外壁・付帯部用弱溶剤形塗料の「グランセラトップ2液ファイン」を皮切りに、外壁用、屋根用を順次ラインアップ。今秋には主力の1液水性タイプも上市予定で、無機系塗料の本格展開に入る。


 "シリコン伝説"や"ラジカル制御技術"など斬新なコンセプトで市場を刺激してきた同社が、次に狙いを定めたのが「無機系塗料」のブランディングだ。同業他社も含め、有機無機ハイブリッド型の、いわゆる無機系塗料は既に上市されているものの、「いずれも散発的な動きで、まだ大きな塊になっていない」(同社上席執行役員マーケティング本部長・藤原三也氏=写真)とし、このカテゴリーの市場形成で先鞭をつける。

主なターゲットは、住宅の塗り替えを中心とした町場の塗装市場だ。「この市場で次に浮上してくるのは、団塊ジュニアの下の世代。いわゆる100年住宅のような長期優良住宅を取得している施主層で、自宅の長寿命化に対する意識が強い」(同)と分析、無機系塗料との親和性が高いと見る。

無機系塗料の新ブランド「グランセラ」シリーズの第一弾として発売した「グランセラトップ2液ファイン」は、外壁・付帯部用の弱溶剤形上塗塗料。有機無機ハイブリッド技術に得意のラジカル制御技術を融合、フッ素樹脂塗料を超える耐候性を促進試験で実証した。"価値を高める、塗り替えを"をキャッチコピーに、長寿命化住宅の広がりで浮上するハイクラスな塗り替え需要を刺激する。

塗装店がハンドリングしやすい塗料に

無機系塗料による塗り替えのトレンドを生み出す上で重要なのは、業界サイドの気運づくりだ。とりわけ、塗り替え市場の最前線を担う塗装店やリフォーム店の支持をいかに取り付けるかがカギを握る。

この点に関して藤原氏は、「価格帯、作業性を含め、塗装店様がハンドリングしやすい塗料に仕上げたのが最大のポイント」と明言する。

ハイクラスなフッ素を上回る耐久性を持ちながら価格帯に関しては、「シリコン樹脂塗料とフッ素樹脂塗料の中間に設定した」と説明。競争の激しいシリコン塗料仕様から抜け出したいとのニーズは多いものの、高額なフッ素樹脂塗料では仕事が取れないと二の足を踏む業者も多い。

こうしたニーズに対し、「塗装店様が提案しやすい価格帯、かつフッ素樹脂塗料を超える耐候性を実現することで無機系塗料の新たなゾーニングができる」と判断。「長寿命化住宅に対応した高耐候仕様が改めて求められる中、シリコン樹脂塗料の次のトレンドをつくることで塗装店様のビジネスを後押しできる」との狙いも込めた。

そして、塗装店がハンドリングしやすい2つ目のポイントとして示すのが作業性だ。「塗料設計に際して、有機無機ハイブリッドのバランスを極めることで『硬くて割れやすい』といった従来の無機系塗料のイメージを払拭、弾性の下塗りの上にも塗れる柔軟性と追従性を実現した」と説明。基本は後打ちとしながらも、場合によってはシーリングの上にも塗れるほどの柔軟性を持ち、実用性を高めた。

更に、"塗り感覚"も、現場の職人に支持されるポイントだと言及。
建築塗装市場のヒット商品「パーフェクトシリーズ」に最初に火がついたのは、ローラーを転がした際の転写性やグリップ感といった"塗り感覚"が職人に受けたためであった。「グランセラシリーズに関してもパーフェクトシリーズの塗り感覚を踏襲。発売前のフィールドテストでも職人さんから高い評価が得られた」とし、無機系塗料普及への自信を示す。

現在もヒットを続けている「パーフェクトシリーズ」も発売から12年目を迎え、その代名詞とも言える"ラジカル制御技術"も他社の追随で普遍化。「そろそろ次のブランドを立ち上げる時期に差し掛かっている」との事情とともに、「コロナ明けで停滞している市場を活性化し、付加価値の高い塗装市場に誘導するためにも無機系塗料のトレンドを形成したい」との狙いだ。

6月に発売した「グランセラトップ2液ファイン」に続き、パーフェクトシリーズでラインアップしている現行の無機系2液水性のトップコートと、無機系弱溶剤形の屋根用塗料を「グランセラシリーズ」に移行。今秋には塗り替え市場で主流の1液水性タイプの無機系塗料も上市予定で、シリーズの増強に伴って訴求を強め、無機系塗料を市場のボリュームゾーンに押し上げる。



日本ペイント・マーケティング本部長 藤原三也氏.jpg
日本ペイント・マーケティング本部長 藤原三也氏.jpg

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