ログハウス市場の約3分の2のシェアを持つ自然派個性住宅のBESS。3年前には、半造膜塗料「セミオペーク」をオリジナル品として開発し、施主に塗料販売及び再塗装サービスを行っている。

木材保護塗料にとって、ログハウスは新築、改修に関わる需要領域の1つだが、同社はログハウスの販売を主業としつつ、拡大を目的にしている会社ではない。

1985年の創業以来一貫して重視するのは暮らしを楽しむための価値創造。80年代に別荘やセカンドハウスが主だったログハウスを、毎日を過ごす家として提案してきたところに同社の足跡がある。 

本社1階のロビーを進むと正面壁に「H=ms2」の文字が目に飛び込む。アインシュタインの相対性理論をアレンジし、HはHappiness(幸福感)、mはmoney(金銭)、sはsense(感性)。金銭に感性が加わることによって乗数的に幸福感につながるという同社があみ出した公式。「家を資産価値ではなく、暮らしを楽しむ道具」として捉え、住む人が感性を発揮し暮らしを楽しみ、愛着が生まれてくる家との考えが事業を独創的なものにしている。そのため同社が手がける木の家は、丸太組の一般的なログハウスからドーム型住宅やガルバリウム鋼板を使った住宅まで多種多様に富んでいる。

ただ、こだわりを見るのが住設に関する考え方。「当社に最新鋭のデジタル設備やフィルム建材を使う発想はありません」と"便利""機能的"といった要素を追求するのではなく、住む人がおおらかで自然体に過ごせ暮らしの楽しみの幅が広がることを大切にしている。住まい手が手をかけながら、家への愛着を深められる余白を設けることが暮らしの魅力にあるとの考えがある。

また、こうした感性を共有する施主同士がSNSやリアルな場でも交流を深めており、ログハウスが人の感性を引き出す触媒として機能している。

それは素材である木材や塗料においても同じ。暮らしの楽しみや遊び心など、人の感性と密接な関係にあることを改めて示している。

現在同社は、「梺(ふもと)ぐらし」を中長期の取り組みとしている。家だけでなく暮らす土地についても、どれだけ楽しめるか、資産価値ではなく活用価値としての提案を行っている。
(写真提供:BESS)