自補修事業でサプライヤー10社が連携
情報共有、人材育成、商品開発に着手

日本ペイントの傍系塗料販売店7社と独立系販売店3社を加えた10社は、自動車補修事業に特化した同業組織「JPネットワーク」の活動を本格始動する。会員相互の信頼関係を基盤に情報共有化、人材育成、商品開発を展開し、個社の競争力向上につなげるのが狙い。インターネット販売の台頭やユーザー同士の情報連携が進む中、販売店同士による事業連携が"攻めの方策"として浮上している。


JPネットワークが設立したのは、平成27年5月。当時、日本ペイント傍系塗料販売店7社が3カ月に1度の定期会合で自補修分野の展開について意見を交わしたことがきっかけ。市況悪化と連動した需要縮小の悪循環を断ち切るためには、同業連携が必要との合意に達し、グループの設立に至った。

以来、各社店の営業部長など実務担当者が集まり、情報共有化、人材育成、商品開発の具体策について討議を開始。既にメンバー相互の企業訪問や洗浄剤などの一部製品で商品開発を始めている。

これまで水面下で活動を行ってきたが、今回その存在を市場にオープンにする。その背景にあるのは、会員企業を募り全国組織としての基盤を固めると同時に、市場での信頼を獲得したいとの考えがある。

同会の会長を務めるフジペック顧問の高橋慶司氏は「傍系とはいえ、メーカーの関与は一切なく、我々独自の展開であることを理解してほしい。販売店の成長を見据える上で、これからはユーザー基点に立った事業施策を展開しなければ生き残ることはできない」と強調。特に商品開発は「顧客との関係維持、新規顧客の拡大を図り、競争力を強めるためにも重要な課題」と意義について説明。「塗料を切り口にするのではなく、まずは副資材を中心としたPB商品の開発を検討していく」との意向を示す。

その一方で差別化を図るのが情報提供サービス。メンバー相互の業績情報や顧客情報を共有し、生産性向上、入庫支援、水性化シフト、保険誘導などのサービスを提案していく意向。「情報交流を始めたことで既に各社店の売上拡大に結びついている」と人材育成面の効果も期待する。

そうした同会の関係性を支えるのは、「和衷共同」の基本理念。全員参加型でグループの結束を図り、すべての議事は満場一致の決議が原則。新規会員についても2社の推薦と会での決議が求められる。「将来的には全国を網羅したネットワークにしたい」と商品開発と人材育成を主軸に全国組織としての運営を目指す。

◇加盟企業:やすもと(北海道)、サンリード東北(岩手県)、高橋塗料店(茨城県)、ナックス静岡(静岡県)、鈴屋塗料(静岡県)、栄光商事(長野県)、サンリード中部(愛知県)、フジペック(大阪府)、米澤塗料(奈良県)、弘中商事(山口県)。

市場大変動、業態改革に向けて

自動車補修用塗料需要は大幅な減少が見込まれている。需要の90%以上が事故車であり、5年先には需要の先細りは確実となる中で、BP工場の淘汰・再編が加速する。更にEVシフト、自動運転化などによるカーアフターマーケット全体の地盤が切り崩され、この分野で勝ち残り組となる方向性が不透明だ。

あるオートサプライヤーは「現在の顧客3,000社のうち、生き残れるのは20%くらい」と想定した上で、事業の組み換えを早める方針を示す。全国に自動車補修用塗料を扱う塗料販売店は約700社店ある。ルートセールを維持できずに商圏を手放す事例も目立つ。

オートサプライヤー間の連携ではトップネット(マルサン塗料、協立塗料、伊丹塗料、サンエース、大井産業)が20年間の実績を有し先行している。しかし市場の大転換に向けた新たな連携に関してはコンセンサスはできていない。また昨年発足したオートサプライヤー協議会においては具体的連携の枠組みづくりに着手したばかり。

需要シュリンクが避けられない中で個社店ではできない事業改革に踏み出すことができるのかが問われる。共同購買は効果が明確な事業であるが、その反面参加企業の利害が対立しかねない要素を含み、公正性や透明性の確保が必須となる。また情報交換や人材育成の面では短期的な発想では逆効果となる恐れがある。中長期間方向で持続的連携がとれるか否か、その鍵は経営側のコンセンサスづくりとともに、中間管理職から従業員レベルにまで連携メリットを落とし込めるかにかかっている。

またオートサプライヤーとしての新たなビジネスモデル構築に向けた連携が試される。これまでの材料や副資材・機器のサプライヤーとしての立ち位置では将来ビジョンを描くことはできない。オートアフターマーケット全般の変化の流れを先読みし、経営資材(ヒト・モノ・カネ+情報)のシフトを図るべきだろう。

その場合の基盤となるのがコンプライアンスだ。法令順守に基づく工場運営と経営に向けた情報を主体としたサプライチェーンづくりが不可欠。クルマ社会そのものの大変革期に入っているが、クルマが移動の主役であることには普遍性がある。

マクロ的視野に立ち、カーアフターマーケットの再構築の動きと連動したオートサプライヤーの立ち位置を定める必要がある。クルマ整備の動向に加え、コネクテッドカー時代に向けた変化をどう受け止め、自らの業態を改革できるのか、そのスタートラインに連携という手段もある。



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