産業用ロボットメーカーのABBは自動車内板塗装において12台のロボットを組み合わせることで塗装ブースを約3分の1に縮小する省スペース化の実現を発表した。

普通乗用車やSUVから大型MPV(多目的乗用車)までさまざまな車種の塗装を可能にしながら、従来のロボットによる一般的な内板塗装と比較して、塗装ブースの設置面積(主に全長)について最大約3分の1の削減が可能になるという。

12台のロボットの役割としては、ドアを開けるための4台(IRB 5350ドアオープナーロボット)とボンネットやトランクを開けるための2台(IRB 5500-22ロボット)、そしてコンパクトさの鍵を握る新たな7軸ロボット(IRB 5500-27)6台の能力による。

7軸ロボット(IRB 5500-27)は3.8メートルの動作範囲を特徴とし、床置や壁掛、天吊据付のオプションがあり、他のロボットよりも車体全体に届く。動作範囲が拡大したことで、特定の作業を行うために必要なロボットの台数が減り直線型走行軸が不要になった。

可動範囲の拡大によってロボットは塗装面に対する塗装機の角度を最適化でき、オーバースプレーを最小限に抑えて塗料の無駄を減らせる。

ロボットが互いに補う

もう1つの特長として「生産性を維持するために隣り合うロボットがお互いを補うことができる」点を挙げる。問題が発生した場合、他のロボットはモードが変わり両方のロボットの作業をカバーするために速度を上げるか、問題が発生したロボットをオンラインに戻すまでのサイクルタイムを延ばすかのいずれかの対応を行う。

また、同社のSafeMoveソフトウェアを使用することで、ロボット同士が近接して作業できるようになる。各ロボットの動作範囲を安全ゾーンとして設定し、それを使用して速度と動きを制御することにより、衝突や緊急停止となる危険性を防ぐ。

そのため、塗装ブースに立ち入る必要のある作業者の怪我を防ぐこともでき、人が検出されるとすぐにロボットが自動的に停止する。

同社は「我々のコンパクト内板塗装ステーションは、自動車OEMが柔軟性を高め生産コストと環境への影響を可能な限り削減するための新しい方法を見つけることを支援するというABBの使命における最新の開発。直線型走行軸や追加の換気装置のような補助装置の必要性をなくすことで、コンパクト内板塗装ステーションは塗装ブースの設置にかかる時間とコストを大幅に削減することができる」として市場展開していく。なお、ロボットの稼働の様子は同社HPにリンクするYouTubeで公開している。