ラボ工場を新設、技術力を集結

塗料循環供給システムをはじめとした流体ハンドリング技術を主体に事業展開するIEC(本社・愛知県名古屋市、代表取締役社長・青木秀人氏)は創立60周年記念事業の一環として、研究開発センター「IEC Laboratory」を新設した。「技術力と開発力を一元化し、ここから各拠点に情報を発信する」(青木社長)として従来の事業領域にとどまらず更なる成長を目指している。


同社は流体ハンドリング技術を得意としており塗装システムや塗装プラントの設計・施工を展開している。従来、ラボ機能としては一部の営業所やグループ会社で有していたが、個別ごとであったため、「技術の共有化が十分ではなかった」(青木社長)状況にあった。

そこで技術力及び開発力を集約させて顧客との連携を高めることを目的に「IEC Laboratory」の立ち上げに至った。IECラボは本社のある名古屋市名東区に近い市内の守山区に立地し、建物面積は1,400坪となる。ここには設計や開発など技術本部の50名が常駐する。

建物内には塗装ロボットが並び、ティーチングテスト用、動作耐久性テスト用、製品開発用など用途に合わせて利用可能となっている。

塗装設備としては、自動塗装テストが可能な粉体塗装と溶剤塗装のブースが並ぶ。粉体塗装はレシプロ塗装機とともにロボット塗装を配置し、粉体塗料が付着しにくい樹脂製ブース及び回収システムとなっている。一方、溶剤塗装ではレシプロ塗装機、ロボットにはベル型塗装機などさまざまな塗装方法の選択が可能となっている。

これらの塗装機や設備に関しては「その時代に一番良いと思うものを置く。当社製、社外製を含めて世界中の中から選んで使わせてもらいながらお客様のニーズに合わせて改良していく」方針だ。

温度コントロールルームとしては「常温」と「高温・低温」の2つを揃える。ここでは各種機器の耐久性やロボットを使用したときの材料特性や安定性の確認などを行う。同社の顧客の拠点はグローバルとなることから、「高温・低温」ルームでは高温時35~50℃(Max70℃)、低温時22~3℃の設定が可能となっており、世界各国のさまざまな環境による温度変化での各種テストが可能となっている。

設備機器がある同じ1階にミーティングルームも設置しており、テレビ会議システムを通じて各営業所やグループ会社と打ち合わせが可能。例えば遠方の顧客は近くにあるIECの営業所からIECラボでリアルタイムのテストも可能となる。

青木社長は「スピード感を持ってお客様に対応するために、ライブ中継で研究した商品をタイムリーに見ていただける。最終的な承認の際にはこちらに来ていただくことになるかもしれないが、最新のカメラを使えば機器の細部まで確認することができ、わざわざ遠方からきていただく負担もなくなり効率化が図れる」との見方を示す。

また、IECラボで重要となるのが広く確保しているフリースペースだ。この空間に、案件ごとに顧客ニーズに合わせた塗装ラインなどを作りこむ。顧客の工場に設置する前にトータルで製作できるため、「スペース制限があった従来だと工程ごとのぶつ切りになるので、工程のつなぎ目でトラブルになることもあった。ここではそうした問題もなくなり、お客様のラインでの立ち上げもスムーズ」となる。

ラボ建物に隣接するコワーキングスペース「egao(エガオ)」では社員用のカフェ空間、2階はプレゼンテーション機能を有する。ただいずれは地域に開放することを想定している。「地域の方に来てもらい、カフェや解放スペースを活用してもらいたい。有事の避難所も想定している。建物は目立つデザインでありランドマーク的な存在でありたい」と地域との共振に期待する。


『宇宙』も見据える100年企業へ
代表取締役社長・青木秀人氏

「60周年を迎えて研究開発に特化した施設が必要ではないかと考えていて、スピード感を持ってお客様に対応できるIEC Laboratoryを作った。建物に社名を付けずにロゴマーク1つだけとしたのは、建造物から魅力を感じて地域の方がロゴから調べてもらえる会社でありたいという思いがある。これからは過去に捉われずに発想することが大切であり、アイデアは無限大だ。過去のさまざまな制約から自らを開放させ先の100年企業を目指す。従来の事業領域にとどまらず次のステージ『宇宙』も視野に入れている。大気圏外は未知の領域だが、これまで取り扱ってきたソーラーシステム、モーター、バッテリー、温度管理システムといった技術を進化させれば宇宙に手が届くのではないか。新たな活躍の場、新たな販路を広げていきたい」



IEC Laboratory
IEC Laboratory
ミーティングルーム
ミーティングルーム
代表取締役社長・青木秀人氏
代表取締役社長・青木秀人氏

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