パネルディスカッションを開催「環境対応と塗装の未来を考える」

塗料商社のNCC(本社・長野県伊那市、代表取締役・原田学氏)は6月15日にオンラインによる塗装技術セミナーを開催。セミナーでは製販装それぞれの立場のパネラーを迎えて「環境対応と塗装の未来を考える」をテーマにパネルディスカッションが行われた。パネラーの意見をまとめた。


NCC
代表取締役 原田学氏

この2年でひしひしと感じる外部環境の変化の1つは、まぎれもなく環境対応です。SDGsという言葉は一般化しつつあり、お客様と話す中でそうしたものへの対応、特に"親メーカー"や完成品メーカーからの要請があるのは間違いない。

特に塗装工程になると自動車メーカーは顕著だが、さまざまな空調、塗着効率、あるいは塗料そのものの開発にまで踏み込んだ対応がされている。自動車など完成品メーカーに引きずられるような恰好で、現実には現場が変わっている。そういう5年、10年になるのではないか。

それに合わせて塗料も水性化や粉体化が進み、本格的に使いやすさや微調整の段階に入ってきて、『これなら使える』という局面にはあるだろう。

あとは消費世代の主役が若い世代に移ってきている。消費行動が環境を意識したモノづくり工程を含めた価値を認めるものになると、塗装業界は品質至上から環境も含めた価値を意識するものに変わってくるのではないか。塗装業界における大きな環境変化の対応が起きてくるのではないか。

トップ工業
代表取締役 髙橋正氏
(日本工業塗装協同組合連合会会長)

塗装する立場から環境対応塗料を使えるかと問われると、お客様から求められる品質要求は高い中で、現状では環境対応塗料に切り替えるのは簡単ではない。デザイナーや設計者が意匠性を高く要望されているので、それに対応するには既存の塗料で進めていくしかないのではないか。対応できる塗料開発を進めて頂くことが必要だと感じる。例えば水性塗料を使うと既存設備では、水処理や乾燥、塗装ブース空調など対応しきれない部分がある。我々だけでは解決できないので、業界全体で取り組む必要があるだろう。

設備投資をすればコストが上がる。お客様に対して値上げ交渉する際、具体的な数字を出して相手が納得できる説明の仕方が必要で、数字でお客にアピールできる環境作りを業界全体ですべきだろう。

ナトコ
塗料事業部副部長兼工業用
塗料チーム部長 平畑晃氏

溶剤塗料で今すぐ環境対応できるトルエン、キシレンフリーやPRTR対応、特化則対応を手掛けてきた。その中で感じることは世界的に欧米を中心に環境対応が一層高まっていると思う。特にVOCやCO2含め、圧倒的に負荷の多い塗装におけるVOC対策は求められる。今後水系塗料や粉体塗料が広く求められるようになると感じている。

粉体塗料で言えば性能もさることながら納期の安定も大きな課題。昨年、生産工場の増設を実施。水系塗料においても常温乾燥、強制乾燥、焼付、更には機能を付与した水系塗料のラインアップを進めている。

溶剤塗料並みのデザインや性能を実現するには新しい原材料を使って開発投資をしたり、塗装においては塗装設備の投資が必要。原材料自体にも開発投資が必要。こうした投資がなければ環境対応がかなわない側面があることもご理解いただく必要がある。

コストに関して、個々の企業で取り組むだけでなく、業界として環境を軸とした取り組みを訴えていかないといけない。関係企業が投資に見合った対価を得る必要があると考える。その中で塗装による価値の向上につなげたい。例として、高防食により素材の鉄を長寿命化させることで、高炉から排出するCO2の削減につながる。業界としてアピールし、消費者含めてトータル的な取り組みに持っていきたい。

旭サナック
東京支店長代理 柳田建三氏

16年ほど前VOC規制が強化された。このタイミングでも粉体塗装が伸びると言われたが、実際は思ったほどではなかった。理由としては単に環境対応というだけでお客様の負担になるような設備投資はなかなか採用してもらえないと痛感。今回、日本政府は2050年カーボンニュートラルを明言し、自動車メーカーは前倒しでカーボンニュートラルを目指している。環境の変化とSDGsの浸透、全体的なマインドは環境対応に変わっている。解決課題はあるが、基本的には環境対応は進んでいくので、水性塗料や粉体塗料は伸びていくだろう。

業界全体としてはLCAをしっかりとやって関係者の皆さんにデータとして見える指標としてPRすることも必要だろう。塗料使用量の削減の点について、最近は近接塗装に取り組んでいる。塗装距離を縮めることで塗料飛散を減らせる塗装機の開発を進めている。エアー使用量も削減できるのでCO2削減も期待できる。

あとは省エネ、塗装ブースを極限までコンパクト化して電気使用量やエアー使用量削減でCO2削減につなげていきたいと考えている。



左から原田氏、髙橋氏、平畑氏、柳田氏
左から原田氏、髙橋氏、平畑氏、柳田氏

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