BASFは2023年~2024年の自動車のカラートレンド予測を発表した。現状を「自動車の伝統的な色彩の時代は終焉を迎え、色を刷新する時期に来ている」と分析し、「伝統的ではない自動車向けの色彩が登場し、カラーシフトを後押しする」との見方を示し、中間色パステルカラーやサスティナビリティを重視したカラーなどを提案した。

BASFでは毎年、自動車の3年先、5年先のカラーについて世の中の動きを見ながら予測しており、自動車メーカーのデザイナーがカラーデザインを考える際の参考となる目的で行っている。

今回のカラートレンドを選ぶ際の社会背景について、アジア太平洋地域の自動車向けカラーデザイン責任者の松原千春氏は「現実社会とバーチャルの融合はここ数年言われており、それに伴い人間とAIが身近になってきた。そいった融合により全く新しい世界が開けていくと考えられる。考え方が多様化し行動に表れてきた」と説明し新たなカラーデザインを紹介した。

今回の特徴は、中間色パステルの出現や、カラーシフトによって1色でも角度によって見え方が異なる表現豊かなレイヤーを追加した。更に触感のある表面が一層進化してくとした。「日本市場ではそれほど見られないが、日本以外の市場では自動車のマットカラーの人気が高く定番化しつつある。色域も広がっており、数年前から表面テクスチャーがざらざらしたり触感を感じられるカラーも紹介しているが、触感と視覚を合わせた表現を進化させた」(松原氏)。

今回のカラートレンドからは、今まで自動車では見られなかったような色域の色が現れている。新しい自動車のカラートレンドが始まる時期が来ているとの見方を示し、それはアフターマーケットで見られる奇抜なカラーではなく情緒的なモノと表現した。
また、今回は自動運転で注目されるLiDAR(ライダー)やレーダーについても対応。全色に対してレーダーやライダーの適応能力のデータを揃えた。ただ自動車メーカーによって基準が異なるため、同社は指標としての参考数値を用意している。

アジア太平洋の自動車カラートレンドは、典型的なパステルカラーを反映したものを発表(写真)。新しいデザインやイノベーションを反映しているが、エンドユーザーに親しみやすさという点で柔らかい印象のカラーとし、バーチャルな色のレイヤーと現実のレイヤーを合わせた表現となった。

他にアジア太平洋のカラーの重要なところは、伝統的なカラーを未来の車にどういう風に合わせていけるか。例えばホワイトパールでは、なるべくきれいなハイライトが出るように配向性をコントロールしたり、塗料として低VOCを達成したりして、これまでのホワイトパールをより未来の自動車に合うようにしている。

また、1コートソリッドカラーも紹介。塗装回数を減らすことで環境負荷を減らしつつ、技術改善を図り品質に優れたカラーを達成。「今のソリッドはデザイン性も向上しており、パッと見ると伝統的なカラーに感じるが、そこに1コートのテクノロジー入れている」(松原氏)。伝統的ではない自動車向けの色彩が登場し、ポジティブなムードを反映した明るい色合いと表現豊かな色域が注目される。松原千春氏