加飾技術研究会は9月12日、第24回例会を開催し、インクジェット印刷をテーマにローランドディー.ジー.社の東京クリエイティブセンターを視察した。参加者は48名と過去最多で関心の高さがうかがえる。

焦点が当てられたのはUVインクジェットプリンター。同社の最新バージョン「VersaUV LEF-300」(製品名)はプリント領域と生産性を向上させているのが特色。同機は4基のプリントヘッドと2基のUV-LEDランプを搭載し、従来に比べ1.6倍の印刷スピードがある。更にクリア(グロス)・白インクをそれぞれ1ヘッド2ラインに増強しており、高さのある厚盛り印刷や隠蔽性のある白インク印刷が可能。フラットテーブルの奥行きはそのままで、素材のセットが容易。また新搭載の下書き用ドラフトモードなど、トータルで作業効率が向上した。

同機が注目されている背景として、小ロットニーズや試作品の作成のスピード化を担当者は指摘する。「工業用のハンドスキャナーでデータを取り込み、加工し出力するプロセス。他の加飾法に比べ表現力、再現力に加えオンデマンドの対応力で優位性がある」と強調する。

消費者ニーズが個別化する中で、1ロット(1個)からのものづくりができ、魅力ある商品開発を可能にするという。用途はスマホカバー、自動車カスタムパーツ、メンブレンシート、シューズ、アクリルポップ・ディスプレイなど広がりを見せる。今後、建材、自動車部品での採用が検討されている。

その一方で課題もある。耐久性と生産性がネック。耐久性に関しては溶剤系のインクジェットが使われている塩ビフィルム+ラミネート屋外看板用で約3年、水性では1年と短い。その対策としてプライマーやクリヤーコーティングとのマッチングがある。特にコーティングとの複合化で看板や外装建材に対応できる耐久性が確保できるとしている。

生産性向上の課題では、複数台運用によるファクトリー対応が具体化されようとしている。「多品種・小ロット化のメリットに加え、プリンターのライン化による量産性の追求をしていきたい」(担当者)。

素材に関しては、ポリカーボネートTPU(熱可塑性ポリウレタン)、ABS、木、皮革・合皮、塩ビ(PVC)、紙・コート紙、インクジェット用メディアに対する密着性が良い。

同社はスキャナーサービスとともに3D切削RPマシン、3Dプリンターをシステム化することで、新しいものづくり提案を行っており、Web to Print技術を浸透させていく。「ニーズとして色やデザイン性での差別化が強まっており、併せて製品化プロセスのスピードアップに対応していく」(担当者)。