デザインペイントで塗装の強みを知る
材料と施工技術の交流

下田通商は9月28日、本社ビルの2フロアを使いデザインペイント塗装体験会を開催した。同社が取引する販売店と施工業者を対象に行ったもので、当日は東北、関東、中部から28名が参加した。メーカーからは、ターナー色彩、インターナショナルペイント、好川産業が協賛した。

東京・日本橋にある8階建ての同社本社ビルでは昨年、テナントが空いていたワンフロア（3階）を、装飾塗装を手がけるフォーアーツデザインが内装や家具などの造作物を塗装し、デザインペイントギャラリーを開催。それを契機に塗装が持つ多彩な表現を見ようと塗料・塗装業界関係者、設計士、デザイナー、インテリアコーディネーターなどが訪れ、情報交流の場として現在もそのままの状態で保存されている。

また別フロアの4階ではセミナーも行えることから、今年5月には関西ペイントがPXIセミナーを行うなど、都心で座学と塗装の実体験ができる施設として活用の機会を増やしている。

これまで施設提供者としての立場を取ってきた同社が自ら塗装体験イベントを主催したのは初めて。企画の経緯について下田浩昭社長は「普段の塗装とは全く異なる領域ですが、デザインペイントに触れることで塗装の可能性を感じて頂きたいと考えました」と説明。普段取引している販売店とその顧客である施工業者を対象に案内し、当初の予想を超える参加者が集まった。

まずは提案力を磨く

塗装体験会に先立ち、今回講師となったフォーアーツデザインのヨザン弥江子社長が自社の取り組みやデザインペイントの魅力について語った。

「当社は基本的に頼まれた仕事は、どこからであっても定められた予算に応じ仕事をさせて頂いています。しかし、手がけたものは必ず最後は施主や発注者の目に触れます。そのため、当社がクリエイティブな集団として認めてもらうには、我々自身が施主や発注者に対して、直接働きかけることが重要と考え、提案力を磨いてきました」と下請け体質からの脱却を進めてきた経緯を語った。

続けて「提案力を身につけるためには、自らが塗装の強みと知識を蓄積し、仕組みを変えていく必要がありました」とし、塗装の専門家として表現力を磨くことで実績につなげてきた過程を紹介した。

こうしたヨザン氏の取り組みは、9月に発刊されたインテリア雑誌「COMFORT」（10月号）に掲載。色をテーマにした特集企画にヨザン氏のデザインペイントに関する記事が大きく扱われ、デザインペイントギャラリーやスターバックスコーヒー（東京ミッドタウン店）の施工事例も紹介された。

「意匠を揃えやすい」と評価

その後、フォーアーツデザインの折戸祐希さんと長孝潔さんが実演塗装を披露。折戸さんはエージング塗装で錆びたコンクリート柱を表現、長さんはスポンジを使い緑青仕上げの手法を紹介した。

折戸さんは「錆びは暗い色から徐々に明るい色を乗せていきます」「車輌用スポンジは柔らかく、コントロールがしやすく、食器用スポンジは硬めで目が細かい」など濃淡の付け方やスポンジングのコツについて説明。長さんも「一気にやらず、少しずつスポンジを当てていくことが重要です」と話し、刷毛やスポンジを加えるたびに風合いが明らかになる様子に参加者は釘付け。材料の特性や技法について、多くの質問が飛び出した。

そして、いざ実践。参加者はテーブルに分かれ、建築部材で使われるモールディングに対し、「アイアンペイント」や「ラストメディウム」（ターナー色彩）を使ったスポンジング塗装を体験。その後、インターナショナルペイントの床用塗料でダンボールの端材を使ってマーブル塗装を行った。

綺麗に伸ばすように塗る参加者から、塗料を大胆に重ねて凹凸感を強調させる参加者まで仕上がり感は多種多様。作業者によって仕上がり感が異なる多彩さを楽しみつつ、「現場で粉を混ぜて塗っているのとは異なり、塗料が既調合のため、仕上げを均一にしやすい」と塗料に対する評価も寄せられた。

過去のイベント同様、デザインペイントに対する施工業者の関心は高く、フォーアーツデザインの技術や世界観に触れることで、刺激を受けている様子が見られた。

最後に下田社長は「現場レベルで材料と施工技術が交流できる場づくりは重要と考えています。今後もテーマを変えながら、機会を作っていきたい」と述べ締めくくった。