斎藤塗料（本社・大阪市、社長・斎藤由美子氏）は、柔軟性と伸縮性を兼ね備えた2液ウレタン樹脂塗料「ウレヒーロー～ラスクリ～」を開発し、市場展開を開始する。スチレンゴムや天然ゴムといったゴム素材から皮、プラスチック、金属と幅広い素材に密着するのが特徴で、柔らかさを持ちつつ、ベタツキのないツルっとした表面が得られることから主力の工業用以外の用途展開にも期待感を高めている。
元々、開発に至ったのは、印刷機の給排紙に使うゴムベルトの劣化（ひび割れ）対策として顧客から相談が寄せられたことがきっかけ。繰り返し紙を押し返す必要があるためベタツキのない平滑な塗膜が求められた。
数カ月の開発期間を終え、無事顧客の依頼に応えたが、物性に可能性を感じ、その後も独自で開発を継続。耐候性や耐薬品性などの機能強化に取り組み「ウレヒーロー～ラスクリ～」を開発した。開発を手掛けた技術部の池田宏文氏と待ち兼ねていた資材のサンプルが昨年のクリスマスに届いたことにちなんで命名するなど遊び心も加えた。
同品の最大の特長は、幅広い素材に適応する密着性と多機能性。素材適応性については、ゴム、皮、プラスチック、金属、ガラスなどに密着する他、伸び率250～350％の塗膜伸縮性を保持し、スポンジにも適応。機能面では、擦り傷をカバーする自己修復性を持つ他、耐衝撃性、耐薬品性、撥水性を保持。環境対応としても特化則、RoHS規制に対応する他、介護用品や玩具の採用を見据え、食品衛生法の適合申請を行う予定にしている。
市場展開に際して、耐摩耗性、耐衝撃性、耐汚染性、耐薬品性、耐候性の各種試験を実施。また新型コロナウイルスの感染拡大を考慮し、耐次亜塩素酸ナトリウム溶液、耐アルコール性試験も行った。耐次亜塩素酸ナトリウム溶液性試験においては、アルミ5052が60,000ppmの原液レベルで泡膨れの症状が認められた他、SUS304、SUS430においては原液でも異常はなかったという。
施工は、刷毛、ローラー、スプレーで1回塗り仕上げ。乾燥時間は、常温乾燥で指触30分、完全硬化24時間。強制乾燥（80℃）で指触15分、完全硬化2時間と速乾性を確保した。塗料は、クリヤー、エナメルの他、艶消し仕上げやメタリック仕上げも可能にする。
用途開発へSNSを活用
平滑でツルっとした塗膜表面とゴムやスポンジなどの軟素材の密着性を両立する新規塗料を開発した一方で、用途においてはこれから。
期待するのは、アルミサッシやカーナビなど複数の素材が組み合わされている部材への塗装。「住宅に使われているアルミサッシにおいては、シーリング部分も同じ塗料で塗ることができる」と金属とゴム、金属とプラスチックなど異なる素材にもワンコートで塗装できるメリットを訴求する。
また腰ベルトやステッキの先端に装着するゴムキャップで引き合いを得ており、デザイン付与が難しい素材での展開に商機を見据えている。現在、取引販売店を中心に営業展開を開始しており、サンプル依頼が寄せられなど上々の反応が得られているという。
取引先への紹介を進める一方で、需要開拓策として注力しているのがSNSの活用。昨年、TwitterとInstagramで斎藤塗料の公式アカウントを取得。現在Twitterのフォロワー数は2,278、Instagramは90を超え、動画や写真を通じ自社製品のPRを展開している。
こうした従来にない発想で販促活動を手掛けるのが取締役の菅彰浩氏。斎藤社長の次男でIT企業に勤めていたキャリアを生かし、動画の撮影、編集、配信を1人で担っている。
現在、SNSを通じPRを強化しているのが、エアゾールタイプの金属用プライマー「サイクロンスプレーPROFACE」。専用WEBサイトを立ち上げ、自転車リストアや下地の色選び、バイクホイール塗装例などのコンテンツを制作した。春には、数々のドラマやバラエティ番組に出演実績を持つタレントの斎藤兄弟を本社に招き、自転車塗装を体験する2人の姿を動画に収め、配信している。
菅氏は「Twitter、Instagramを通じ、企業の方から一般の方まで高い反応を頂いている」とコメント。販売はAmazonで実施しているが、SNSでの訴求力が充分にあるとして「いずれは自社サイトでの販売も検討していきたい」との意向も示す。
今後は、「ウレヒーロー」においてもSNSを通じPR展開を図っていく予定。既に耐衝撃性を示すため、塗装したリンゴを2階から落下させても割れない動画を撮影済み。訴求力の高いコンテンツ作りを差別化にしつつ、OEMやPBにも柔軟に対応していく意向を示す。
