粉体塗装の情報発信拠点、PTC新設

旭サナックは粉体塗装に特化した粉体技術センター(PTC)を本社(愛知県尾張旭市)の新工場に新設した。PTCでは高速色替えシステム、被塗物に対応・追従するレシプロケータ、箱物の内面塗装に特化したロボットティーチングシステムを完備し、粉体塗装のラボ施設として活用を行っていく。デュアル電界方式の新型粉体ガン「EcoDual」シリーズを開発、市場展開を開始し、粉体塗装機器事業を拡大させる。


粉体技術センターは11月16日と17日に塗装ユーザー向けに開催した「サナックフェア2022新製品特別内覧会」で初披露された。これまでは本社工場の塗装技術センター(CTC)内に粉体塗装ブースがあり、テストや評価検証を行ってきたが、今般、隣接する新工場内にPTCを建設した。

同社は創業80周年、塗装機創業65年の節目となる今年にPTCを新設した。間宮幹雄社長は「VOC対応あるいは熟練技能者の人手不足対応に優れた粉体塗装が増加していますが、今回はその粉体塗装に重点を絞った新製品を発表します」と述べ、高まる粉体塗装需要への対応強化の意向を示す。

粉体塗装の最先端技術ラボと位置付けるPTCは、塗装設備単体ではなく、吊り掛けからレシプロケータ、ロボット塗装、乾燥まで一貫ラインで粉体塗装の実験が行える施設。塗料成分の分析に最適な装置も揃っている。粉体塗装の導入を検討するユーザーが、自社のワークでテストできる体制となる。

色替え10分、高速色替えシステム

塗装設備には高速色替えシステムを設置。塗装ブースの構造だけでなく、ブースの床ブローやガンの制動挙動にも改良を加えたことで、短時間での色替え作業ができ、少量多品種生産に適している。

新開発した塗料供給装置の「1タンク式パウダーステーション(ST-PST)」は、1つの塗料タンクで塗装、色替えが可能であり、塗装色を増やしても追加のスペースやコストは不要。塗料タンク内面及び塗料経路は自動清掃できるため、作業者の負担は大幅に軽減できる。

更に「設置スペースが限られているのでコンパクトな設備が欲しい」との要望を受け、コンパクト設計を実現した。従来モデルの設置面積が6.8㎡(使用塗料5色の場合)に対し、ST-PSTは4.6㎡と33%削減を達成。

塗装ブースは帯電しにくい二重パネル構造で、天井角部分をR形状にして粉が溜まりにくい構造。床面は専用治具で清掃しやすいスリット式ダクトを採用し、ダクト形状は粉溜まりがしにくいR形状にした。

色替え時間の想定として、塗料が同系色で非回収の場合は約10分と短縮化も実現した。

箱物内面にロボットティーチング

塗装システムは、形状に合わせてガンとワークの距離を一定に保ち粉体塗装できる「ツインムーバ レシプロ塗装システム」と、箱物内面に特化したロボットティーチング補助システム「ボックススマートティーチング(BST)」を設置し、省人化や自動化を見据えた次世代の粉体塗装システムを提案する。

ツインムーバ レシプロ塗装システムは、3次元形状を認識するセンサにより、ワーク形状を自動認識する。その情報をもとにワーク形状に合わせて各ガンが前後に移動し最適な塗装を行う。一定距離で塗装することで塗膜分布の均一化と塗着効率の向上に寄与する。膜厚が均一になれば、その後の補正作業の軽減や塗料使用量の削減につながる。

近年は人手不足の問題を抱える塗装現場が多くなっており、人の手による補正作業において、例えば3名が2名、2名が1名に減らせるだけでも大きなメリットとなる。

同システムはワーク形状を自動認識できるため、平板ではなく凹凸や箱型のワークに対して効果が期待できる。

一方、BSTは箱型ワークに特化したティーチング補助システム。同システムには箱型内面の基本的なプログラムが保存されているため、入力画面にワークサイズを入力するだけでロボット軌跡を変換し作成。ロボットティーチングの時間の短縮ができる。

サイズ(幅、奥行き、高さ)を入力するだけのため、軌道の個人差がなく誰が入力しても同じ動作で品質の安定化が得られる。配電盤のような箱型ワークに最適として提案を進めていく。

今後、粉体塗装機事業の展開を推進する上で注力するのが、塗料使用量の削減を実現するデュアル電界方式粉体ガンの新型モデル「EcoDualシリーズ」(ハンドガンユニット、自動ガン)だ。

デュアル電界パットが逆電離現象の原因となる過剰なフリーイオンのみを吸収することで、効率的に塗料を付着させ塗膜平滑性を保つ。塗料飛散を抑制することで隅部への塗り込み性も向上している。

塗料搬送については搬送効率の向上とエア流量のセンシング機能を搭載する。吐出が安定することで塗膜が均一になる他、同じ吐出量設定値のときには従来と比べてエア風量を下げることができ、塗料の飛散を抑制できる設計となっている。

今後、一層の拡大が予想される粉体塗装市場に対して、PTCを粉体塗装の情報発信拠点として有効活用する。同時に「EcoDualシリーズ」や「ツインムーバ レシプロ塗装システム」といった新アイテムを揃えることで、顧客ニーズを捉えて粉体塗装市場での存在感を高めていく。



CS工場:粉体塗装機械の組み立て・研究を行う
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箱型ワークに特化したティーチング補助システム
箱型ワークに特化したティーチング補助システム

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