「ペイントスタンド仙台」をオープン

塗料ディーラーとしての今後の成長を視野に、内装塗料事業を本格化する。宮城県石巻市に本社を置く協立塗料(尾形和昭社長)は先月、同社の仙台営業所内に「ペイントスタンド仙台」をオープン、新たな事業をスタートさせた。地域の消費者市場で内装塗料の需要創出を目指すとともに、そこに向けて育まれる社員の意識の変化や能力向上を全社的なシナジーにつなげ、成長を期す。


尾形和昭社長には、20数年前に視察で訪れたアメリカ・ニューヨークのペイントショップ(ジャノビック)の光景が鮮烈に残っていた。スタイリッシュな店構え、ショーウィンドウを飾るディスプレイ、一般の来店者で賑わう店の活気、働くスタッフの自信に満ちた表情など「これが同じ商売か」と、日本の塗料販売店との違いにショックを覚えた記憶だ。

住宅の内装をほぼペイントが占め、頻繁に塗り替えを楽しんでいるアメリカ。「色で住空間を豊かにするスタイルが普及し、人々の生活シーンにペイントが根付けば、日本の塗料販売店のビジネスも大きく変わる」と内装塗料、引いては"色"をビジネスにすることへの期待が膨らんだ。

しかし現実は、ビニールクロスが席巻している日本の住宅。内装で塗料が広がる雰囲気は微塵もなく、思いはくすぶり続けていた。

転機を感じたのは東日本大震災のときだ。本社のある被災地・石巻にはボランティアの若い人たちが多く集まり、商店街の復興プロジェクトなどをけん引。それらの人と接する中で、「今の若い人たちはとてもニュートラル。先入観や偏見に捉われず『良いものは良い』と素直に認める感性がある」ことを実感。また、その頃から『リノベーション』や『DIY』などのフレーズが飛び交い始めたように、住まいに個性や嗜好性を求めるトレンドが台頭、「若い人たちの感性、より自由な住空間への要望などペイントがフィットしつつある」ことを感じていた。

そこへ入ってきたのが、内装塗料ビジネスの先駆者・カラーワークスが始めた「ペイントスタンド」の情報だ。

「ペイントスタンド」は、1,488色を揃えるカラーワークスのオリジナル塗料「Hip」を核に、什器やカラーディスプレイ、各種販促ツールを凝縮、コンパクトなスペースで内装塗料ビジネスをスタートできる店頭販売システム。

それらに加えて、内装塗料ビジネスを推進する「スタッフ育成」もサポートするのがペイントスタンドの特徴で、「新たなビジネスを始める上でキーになる"売る人"の育成までフォローがあるので導入を決めた」と尾形社長。半年の準備期間を経て昨年12月、「ペイントスタンド仙台」がオープンした。

内装塗料基点に会社力アップ

協立塗料は昨年、仙台営業所の大幅なリニューアル工事を実施。それに伴って新たに「ペイントスタンド仙台」の専用スペースを設けた。什器やディスプレイ、店頭販売に向けた自動計量調色機を揃えた他、広いワークショップスペースも用意。各種小物の塗装から実際の壁面を利用した塗装体験まで多彩なワークショップが楽しめる。SNSやフリーペーパーの告知などで集客し、一般消費者参加型のワークショップも既に始まっている。

ペイントスタンド仙台の運営を任されている同社・経営企画室の尾形昌彦氏は事業化に関して「まずは空室対策として賃貸住宅の市場からアプローチしたい」とコメント。

「震災後の住宅の流動化と飽和化により、石巻市で22.7%、大崎市にいたっては31.3%など宮城県全体で賃貸住宅の空室率が高まっており、オーナーさんや管理会社の焦眉の問題になっています。そこに対してDIY可能賃貸やペイントカラーによる差別化、魅力付け、入居率アップといった切り口でアプローチし、事業化の取っ掛かりにしたい」と説明。

オーナーや管理会社の関心も高く「手応えは感じています。皆さんに実際に体験してもらうワークショップやセミナーを増やすなど、説得力を更に高めて内装塗料販売の事業化につなげたい」と士気を高めている。

こうした対外的な活動の一方で、社内的な合意形成にも力を注ぐ。

協立塗料は自動車補修用、建築用、船舶用の塗料を主体に、石巻の本社、ペイントスタンドのある仙台営業所の他、古川、郡山、会津に営業拠点を展開。尾形社長は、「内装塗料事業をビジネス化していくためには全拠点への波及が必須。ただ、これまでの事業展開の性質上、内装塗料といってもピンとこない社員が多いのも実情で、まずは実際に室内の塗装を体験、体感することから始めている」と説明する。

現在、ペイントスタンド仙台のワークショップスペースの壁を利用して、全拠点の全社員がローテーションでペイント作業を体験しており、「実際にペイントに触れ、手を動かし、色のダイナミズムを感じることで、"肌感覚"でこの事業を理解してもらえると思う。そこから生まれる肯定感や共感こそが大事」と尾形社長。

自補修や船舶など領域は違っても「内装塗料のアンテナが備わることで日々の活動の中で情報が引っかかるようになり、ビジネスの芽の発見につながる」とともに、「社員それぞれの仕事にも良い影響をもたらす」と期待する。

内装塗料に触れることで生まれる色彩やデザイン、生活者感度といった感性的な資質は「どの事業領域にも通じるとともに、成熟した市場の中でこれからますます重要性が高まるビジネススキル」と説明。内装塗料の本格的な取り組みは、成熟市場を超えて成長を目指す、全社的なシナジー効果を狙ってのものでもあるのだ。



ペイントスタンド
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全拠点の全社員でペイントレッスン
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