色見本帳事業に新風、同業5社が連携

塗料色見本帳の製作を手がけるエーエムエンジニアリング(本社・大阪市、社長・雨皿貫氏)は、同業5社と提携し、営業、製作における協業体制をスタートする。今後同社が顧客対応を一括して行い、製作については協業会社に委託する形となる。「国内でわずかとなった色見本帳事業を存続維持することが目的」と雨皿社長。後継者不在や採算性悪化から国内の色見本帳製作会社の廃業が進んでおり、同業連携を存続の道に選んだ。


今回、同業連携に参画するのは、エーエムエンジニアリング、マルシンCAS(兵庫県)、ビルドカラー工芸(兵庫県)、千草サンプル(兵庫県)、ベストニクス(岡山県)、色彩工芸(兵庫県)の6社。海外に自社及び協力工場を持つエーエムエンジニアリング以外の5社は、国内に製作拠点を有しており、ソリッド・メタリック、双頭ガン、多頭ガンを用いた意匠性塗材、左官材、玉吹き、リシンなどそれぞれ特色を有する。いずれも塗料メーカーをはじめとする顧客企業に対応してきた歴史を持つ。

協業に参画する企業のうち2社が廃業を表明するなど、単独での事業継続が困難な状況に陥りつつある点で共通する。
雨皿氏は「各社とも技能者を抱えていることもあり、色見本の製作自体はできるが、家内工業でかつ高齢化のため、塗料の運搬や周辺部材の在庫、一連の棚卸し業務など、運営そのものが困難になっている」と話す。

協業体制の概要としては、塗料運搬や棚卸しなどの関連業務をエーエムエンジニアリングがサポートし、営業活動においても同社が一括して窓口となり顧客企業の応対にあたるというもの。製作については、過去からの取引経緯や依頼内容、受注量、稼働状況を鑑み、協業会社に委託する。

特に今回の協業で肝になるのがコストダウン施策。
見本帳及びカタログ製作において塗り板を貼り付ける台紙や冊子にするための紙部材のサイズや厚み、紙質がメーカーや商品ごとに異なるため、調達や在庫管理の負荷を高めている実態がある。
これに対し雨皿氏は「顧客企業の協力を仰ぎつつ、部材の共通化を進めていきたい」とコメント。部材の種類を絞り込む他、横持ちの連携を進めることで製作コストを下げる方針だ。

2年前、日塗工の塗料標準色が製作会社の辞退により中止に見舞われたのは記憶に新しいところ。今回の同業連携と同様、色見本帳製作の厳しい現状がうかがえる。
「色見本帳(カタログ)は、顧客企業とのこまめなやりとりと高い精度を必要としつつ、それに見合ったコストが得られなかったことが今の状況を招いた。小規模の工房でも1,000缶以上の残塗料が廃棄ができず置かれている状況にある」(雨皿氏)と国内色見本事業の存続に協力を求める。

一方、同社は技能者育成のための調色学校を設立する方針。塗料メーカーを始め業界関係者が利用できる拠点にする考えだ。



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