2024年に色見本帳製作事業において同業6社と協業連携をスタートしたエーエムエンジニアリング(以下AME)。塗料・塗材の種類や部数、コスト、デザインニーズに応じて6社間で製作連携を図るもので、こまめな企画相談や調整を要する顧客対応の一本化にメリットを見出した。「1年が経過し、順調に新規顧客が増えている」(AME・雨皿貫社長)と今後、資材の共有化を図るなど連携強化に努める方針だ。

近年、経費削減から印刷カタログや電子カタログの活用が増えている。それでも色決めの最終段階においては、色見本帳や塗り板は不可欠。中でも多彩模様やメタリックなどの意匠性塗料は、印刷やデジタルの及ばない領域として価値を堅持する。

しかし、製作を請け負う色見本帳事業の経営は厳しい。企画打ち合わせから完成まで数カ月要するのに対し、代金を得られるのは納品後。紙資材や廃棄コストの上昇も経営を圧迫している。色見本製作に関わるほとんどの事業者が零細規模で占める現状に雨皿氏は「このままでは国内から事業者がなくなる」との危機感が同業者の連携に向かわせた。

具体的には、それぞれが持つ顧客との関係は堅持しつつ、新規案件についてはAMEを窓口に一本化。塗料の種類や部数、品質など、顧客が求めるカラーツールに適した事業者に製作を振り分ける仕組みとした。

連携メンバーにとっては、製作以外の業務を移管できるのがメリット。今後は、紙資材の共有化やデザインフォームの統合を図るなど、コストダウンに注力していく計画。「塗料メーカーだけでなく、塗料販売店や塗装会社からも引き合いが増えている」と独自色を差別化に据える市場トレンドも追い風となっている。

一方、AME自体も色見本帳で蓄積したノウハウを生かし、新たなビジネスモデルの創出に挑もうとしている。その1つが自治体に対する防災色の提案、もう1つが色でブランドを選ぶデジタルカラープラットフォームの構築だ。

防災色は、自然災害や有事に対し、避難施設の種別を色で示すソウル市の取り組みにならい、国内の自治体に導入を提案する考え。「色であれば子供や外国人も分かりやすい」と防災カラーカードの社会的価値を訴求する。

またデジタルカラープラットフォームは、流通する塗料製品を集約し、色相から塗料製品を選択できるDX色見本帳システム。「同じ白系でもメーカーによって全く異なる」と色を選ぶ楽しさから塗料需要の創出につなげたい考えだ。更にシステムの海外展開も視野に入れており「日本の塗料ブランドを海外に発信していきたい」とカラーツールから塗料産業の活性化に寄与したいとの構想がある。