パテ専用ツール「フラットボックス」上陸

塗装作業を革新するツールが現れた。石膏ボード下地のパテ作業を劇的に変えるパテ打ち専用ツール「フラットボックス」だ。従来のヘラによる"手打ち"に比べ作業効率が5倍以上アップ、生産性が大きく向上する。パテの施工品質向上と作業者の体への負担軽減も同時に実現、パテ作業が進化する。国内正規代理店のエーエムエンジニアリング(大阪市、社長・雨皿貫氏)が塗装業界への案内を始めた。


「世界のパテ作業は、『フラットボックス』による施工が標準になっている」とエーエムエンジニアリングの雨皿貫社長。内装の塗装現場など石膏ボード下地のパテ作業で、従来のヘラによる手打ちから専用ツールの「フラットボックス」を使った作業に移行しているのが世界の潮流だという。

同社が正規代理店となったカナダ・コロンビアテーピングツールス社を始め、アメリカ、オーストラリア、中国など多くの国の企業が同様のパテ打ちツールを製造・販売しており、「『フラットボックス』という呼称自体が一般名称になっているほど、世界では普及している」(同)と説明する。

同社が輸入販売しているコロンビア社の「フラットボックス」は、建物の内装施工において、石膏ボード下地のパテ処理を行う作業ツール。石膏ボードの目地やビス穴などを素早くパテ処理でき、「1人で5人分以上の作業をこなせる」と生産性が飛躍的に向上。

同品は、中にパテを入れる「フラットボックス(写真①)」と、そこにセットする長柄状の「マトリックスハンドル」で構成(写真②)。フラットボックスを壁や天井に押し当て、目地に沿ってスライドさせてパテを塗工していく。

秀逸なのはそのメカニズムだ。

フラットボックスのバックパネルは可動式になっており、そこに接続したマトリックスハンドル(長柄)に押されてフラットボックス内のパテが押し出される仕組み。このとき、マトリックスハンドルに体重を乗せて塗工できるので、パテが高密度で目地に充填される。「ファイバーテープの上から塗工しても、内部までしっかりパテが詰まり充填不足による割れのリスクを抑える」とパテの強度が向上。

更に、フラットボックスで施工されたパテの"形状"もポイント。

フラットボックスから吐出されたパテは、端部(ミミ)が薄く、中央に向かって少しずつ厚くなり、なだらかな山なりの形状で塗工される。従って、目地上に貼ったファイバーテープの厚みが均され、上塗り後の目地跡の影を吸収、塗装品質の向上に貢献する。

「パテの付け具合といった熟練の感覚を標準化した上、ヘラで何度も行き来していた作業を、フラットボックスをスライドさせるだけで一気に終えられる」とパテ作業の革新を強調する。

ベテラン職人も認めた実力

エーエムエンジニアリングは、"やせないパテ"が代名詞のカナダ製「レッドデビル」の輸入販売などを行う塗料関連のサプライヤー。塗装業界で職人不足が加速する中、「人手のかかるパテ作業を抜本的に変えることで省人化が進み、問題解決につながる」と、世界で普及していた「フラットボックス」に着目。中でも、「品質、実績ともに最も信頼できる」と、カナダ・コロンビアテーピングツールス社と正規代理店契約を締結、2020年に国内展開を始めた。

いち早く反応したのは壁装(クロス)業界だ。パテ作業の劇的なスピードアップに加え、マトリックスハンドルで天井や壁の上部・下部も立ったままでの施工を実現。脚立の昇り降りや腰をかがめる動作もなくなり、手打ちによる腕や肩の疲れもなくなったと、身体的な負荷軽減も大きく支持された。

更に、「パテ跡のラインがきれいで研磨作業も減り、現場が汚れなくなったとの声も寄せられています」と作業環境も改善。クロス職人によるSNSの発信や壁装業団体の講習会などで認知が拡大、ブレイクした。

そして塗装業界だ。このほど、大手ゼネコン傘下の塗装会社での正式採用が決まった模様で、野丁場の新設物件の塗装工事でも需要が本格化しそうだ。

塗装業界はクロスに比べてパテの精度がシビアで、当初は懐疑的な声もあったが、「一度現場で使っていただくと評価は逆転。ベテランの塗装職人さんから、『もっと早くに知りたかった』と嬉しい言葉をいただきました」と塗装業界での普及にも手応えをつかんだ。

「フラットボックス」は、ボックスの幅のサイズが、2、3、5.5、8、10、12、14インチをラインアップ。2、3インチはビス穴向け、ベベルエッジには5.5インチ(下パテ)と10インチ(上パテ)の組み合わせ、テーパーエッジには8インチ(下パテ)と12or14インチ(上パテ)の組み合わせといったように幅広いボード下地に対応する。

また、「フラットボックスはアルミの削り出しで作られているので、錆に強く頑丈。使用後は水を張ったバケツの中でジャブジャブ洗うだけなので後始末もラク。国内メーカーさんのものであれば、下パテ、上パテともほぼ適応します。初めての方でも30分もあれば作業に慣れていただける」と実用性にも自信を示す。

機械化、効率化が進む建設現場で、ヘラによる"手打ち"が連綿と行われてきた内装工事のパテ作業。その前近代的な光景が大きく変わりそうだ。
 エーエムエンジニアリングTEL06-4807-6156



①パテ打ち専用ツール「フラットボックス」
①パテ打ち専用ツール「フラットボックス」
②マトリックスハンドルをセットした状態
②マトリックスハンドルをセットした状態
フラットボックス作業風景
フラットボックス作業風景

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