"高校生"が塗料・塗装普及の足掛かりに

塗料・塗装の普及活動において有力なアプローチが見えてきた。高校生を対象にした体験イベントだ。この世代特有のニュートラルな感性に塗料・塗装の価値や魅力が響き、理解や共感が得られやすい。今月、神奈川県下の高校で行われた塗装体験イベントに、普及啓発活動のヒントが垣間見えた。


神奈川県下の建築塗装業の若手経営者や後継者らで構成する神奈川昭和会(高野一哉会長)は8月9日、神奈川県立大磯高校(同県大磯町、立花ますみ校長)で「職業体験塗装ボランティア」を実施した。

例年、会員会社の塗装職人70名以上で福祉施設などでの塗装奉仕活動を行っていたが、コロナ禍に見舞われた一昨年から人が密になりやすい活動を自粛。代わりに、県下の高校を対象に少人数で行える職業体験型の塗装ボランティア活動に変更、2020年に県立百合丘高校(川崎市)で初めて実施し、今回が2回目の開催となった。

同会の高野一哉会長は、「高校生に塗装体験をしてもらう活動は、我々が塗装奉仕をしていたそれまでのボランティア活動とはまた違った手応えがあり、続けることにした」と2回目開催の理由を説明。県の教育委員会を通じて開催希望校を募り、そこに応募した大磯高校での開催となった。

この活動は、その学校の生徒たち自身で校舎内の壁の塗装メンテナンスを体験するもので、神奈川昭和会のメンバーら塗装のプロが生徒たちに作業を指導する職業体験を兼ねたボランティア活動。

9日に大磯高校で開かれた職業体験塗装ボランティアには、生徒会のメンバーやラグビー部の部員など男女25名の生徒が参加。3~4名ごとのグループに分かれた生徒たちに、神奈川昭和会のメンバーがグループごとに専任で塗装作業を指導。校舎1階の廊下の壁を、学校の前に広がる海をイメージした爽やかなブルーに塗り替え、自分たちの学び舎をリフレッシュした。

ニュートラルな感性に響く塗料・塗装

高校生の塗装体験という今回のような活動が、「塗装」の価値や魅力を伝え広める普及啓発で有力なアプローチになるかもしれない。理由のひとつは、こうした活動が学校現場で強く望まれていたということだ。

今回、神奈川昭和会のオファーに応募した理由について同校の立花ますみ校長は、「私たちが困っている校内の環境美化をプロの方たちが指導してくれる上、お仕事の現場で活躍されている社会人の方々と直接触れ合えることは、生徒たちにとってとても貴重な機会。県の教育委員会からこのお話を聞いたときは、ぜひ当校でと真っ先に手を挙げました」と学校現場が待ち望んでいた活動だとコメント。

理由のひとつに挙げた校内の環境美化は、多くの学校に共通した悩みだ。特に、生徒たちの学びの場である教室などの屋内環境は、「勉強や生活態度にも影響するので、きれいに整えておきたい」と望んでいる教職員や保護者が多いものの、県などの管理者から壁の塗り替え費用までおりてこないため、ひび割れや汚れが目立ったままの壁が多いのが実情。今回のような活動が入ることによって"壁の美化"に関係者の意識が向き、校内の環境美化の気運が盛り上がることへの期待が大きい。

そしてこの活動が高校生を対象としている点も、塗装の普及啓発の観点で大きなポイント。塗装の価値や役割が理解できる年齢であることに加え、"おもしろいコト"への共感を得やすい世代でもあるからだ。

高校生たちが「塗装」や「塗装職人」の存在を意識することはまず無いから、彼ら彼女らにとってはほとんど未知の世界。それだけに塗装に対する感覚はニュートラルで、その価値や魅力が伝わるポテンシャルを秘めている。

単純な作業に見えて、刷毛の握り方やローラーの転がし方ひとつにも道理がある奥深い世界、フリーハンドなのに嘘のように真っ直ぐな線を引くプロの刷毛捌き、一見こわもてなのにとてもフレンドリーな塗装の人たち...今回の体験で初めて触れた塗装の世界は、高校生たちにとって興味深くておもしろいコトの連続。

そして、自分たちの作業で学校がきれいになっていく実感が母校愛もくすぐり、校内の雰囲気をガラリと変える塗料や塗装の効果に改めて気づく。この年代特有のニュートラルな感性に響いた塗料や塗装はポジティブな存在として定着、普及啓発の格好の足掛かりとなる。

神奈川昭和会の高野会長は、「この活動が若い人たちの入職につながればとの思いもありますが、少なくとも塗装への共感や我々の仕事への理解を生んでいる手応えを高校生たちの反応に感じます」とコメント。普及啓発の有力なアプローチが浮上してきた。



塗装体験の様子
塗装体験の様子
学び舎をリフレッシュ
学び舎をリフレッシュ

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