不足する学童クラブ、地域企業が支援

企業・団体による社会貢献活動は、時代のニーズに応じて多彩さを見せている。特に地方を中心に財源不足や人口減を背景にこれまで維持してきた公的事業が立ち行かないケースが出てきた。こうした中、民間の学童クラブを運営するFAMIGLIA(本社・徳島県徳島市、代表・阿部一樹氏)は、会費と企業の協賛金で賄うビジネスモデルを構築、今年から塗料ディーラー・南海プランナーが協賛企業に加わった。企業と地域社会との関係が一層強まっている。


塗料・塗装業界による社会貢献活動は、過去から個別企業や業界団体を通じ塗装ボランティア、スポーツ支援、商店街の活性化、植樹など多種多様な活動が行われている。
中でも塗装ボランティアは、維持改修のための十分な予算が得られない保育園や幼稚園、学校、福祉施設などに対し、塗料及び塗装を提供する活動が活発化。時に保護者や子供たちを巻き込みながら、塗料・塗装の魅力を伝える方策として拡大を続けている。

その一方で、塗料・塗装の普及啓蒙を目的とした活動にとどまらず、社会的貢献活動に広がりが出ている。その1つが社会性、公共性を有した事業に対し、継続的な支援を行っていくというもの。元々は、宣伝活動の一環として、大企業が環境改善活動やスポーツなどをサポートしてきた領域だが、業界内でもスポーツチームを支援する企業が相次ぐなど、地域レベルの活動においても企業の支援を求める動きが強まっている。

そうした中、Jリーガーとしてのキャリアを持ち、現在は故郷の徳島市内でパーソナルジムを運営するFAMIGLIA代表の阿部氏は昨年春、「放課後学童クラブ#スタトレ」を設立。子供たちの月謝と企業の協賛金を基盤とした学童クラブをスタートさせた。
学童クラブは、仕事などで不在となる保護者の代わりに放課後から夕方まで子供を預かる福祉サービス。学校内の施設を使うケースが多いが、運営は学校ではなく、自治体や民間組織が担っているのが特徴だ。阿部氏自身は、長女の通う小学校で学童クラブに入れない状況を知ったことが設立の動機となったが、調べるうちに学童クラブを取り巻く状況の厳しさを目の当たりにする。
「徳島市内では、資金及びスタッフ不足から学童が減っていますが、学童の減少が親の働き方や子供に影響を与えていることを知りました」と阿部氏。「放課後は、子供同士のコミュニケーションを含め、心身の成長を促す上で貴重な時間になっている」と地域社会全体の問題との認識を深めていった。
FAMIGLIA・阿部一樹さん.jpg

そこで阿部氏は、特色のある学童クラブを作りたいと店舗集合施設の2階を借り、午前は女性向けのヨガスタジオ、昼から学童クラブを始めた。
月謝は2万2,000円。公立の学童クラブと比べて倍以上と高めだが、「週2回塾の講師に来て頂き、勉強のサポートをしてもらっています」と付加価値を提供。特にこだわったのがスタッフの待遇。学童クラブに従事するスタッフの多くが最低賃金に近い時給にある中、同社の時給は1,000円を超える。近所の高校生ボランティアも受け入れつつ、スタッフの安定確保と継続雇用につなげている。時間は平日12時~18時半。夏休みなど長期休みは朝8時から開放し、現在約40名弱の子供が通っている。

一方、企業に対しては、1口5万円/年で協賛を募集し、現在10数社の地域企業が参画。青果店、木材加工会社、精肉店、スポーツショップ、生花店など業種も多種多様で、今年春に南海プランナーが協賛企業に加わった。
企業に支援を仰いだ経緯について阿部氏は、「子供たちにできるだけいろいろな体験をさせたいと思いました」と説明。協賛金はすべてイベント活動に充てる他、協賛企業が扱う商材も活動に役立てている。「先日は子供たちとタクシーに乗り合わせて、映画を見に行きました」と車社会の徳島の子供たちにとって特別な経験になった模様。その他、果物や肉、花など協賛企業から差し入れもあり、地元企業と関わりもこの学童クラブの魅力となっている。

今年夏には南海プランナーの社員が指導役となり、2回にわたりペンキ塗り体験会を実施(写真)。協賛企業が提供した木製端材で作った工作物に子供たちが思い思いに色を塗り、作品を仕上げた。
学童クラブは、待機児童の数的調査が至らず顕在化しにくい社会課題の1つだが、「企業においては、人材を確保する上でも無視できない問題と思います」と阿部氏。今後は学童クラブの経営参画を呼びかけていく考えだ。
南海プランナーが塗料を提供.JPG

20230913-1-2.JPG



FAMIGLIA・阿部一樹さん.jpg
FAMIGLIA・阿部一樹さん.jpg
南海プランナーが塗料を提供.JPG
南海プランナーが塗料を提供.JPG
20230913-1-2.JPG
20230913-1-2.JPG

HOMENew Trend不足する学童クラブ、地域企業が支援

ページの先頭へもどる