塗料でできる地域貢献、高校生が体現

日本ペイントと産学連携協定を結ぶ大阪府立今宮工科高等学校は昨年12月、大阪市西成区の「萩之茶屋中公園」内にある公衆トイレの外壁塗装プロジェクトを行った。「地域にある課題を解決したい」と同校の生徒らが発案・企画し、西成区の協力を得た。18日には公園近隣の保育園の園児や児童自立生活援助施設に集う小学生に呼びかけ、一緒に塗装作業を楽しんだ。


日本ペイントと今宮工科高校が産学連携授業を開設したのは2019年。同校グラフィックデザイン系に所属する3年生が受講する課題研究授業の1つをプロジェクトデザイン班と名付け、日本ペイントマーケティング部の外部企画チームとして社会貢献を活動目的としている。

その活動の中で重視されているのが、社会貢献と企業価値の向上。生徒たちも日本ペイントの一員として、企業価値の向上を目指すところに課題研究授業の意義が込められている。

生徒らが考案した企画を実践に移すまでには、外部機関との調整を含めさまざまな過程が必要となる。日本ペイントの担当者に対するプレゼンテーションもその1つ。「なぜこのプロジェクトを考案したのか」「それがどんな社会的意義を持っているのか」「日本ペイントの価値にどう寄与するのか」など、思いつきのアイデアでは通用しない現実的な要件が生徒たちに求められる。企画に社会的価値を盛り込み、更に成果として企業ブランドや事業価値向上と紐付けする考え方やプロセスに教育的要素を持たせている。

企画からデザインまで生徒が主導

今回、塗装プロジェクトの対象となった萩ノ茶屋中公園は、日雇い労働者の街として知られるあいりん地区から歩いて数分の場所。近年は著名なホテルが建つなど外国人観光客も多く訪れるが、今も簡易宿泊所や福祉施設が立ち並び、労働者街の雰囲気が色濃く漂っている。

そうした中、プロダクトデザイン班の土井唯さん、伊禮結貴さん、中原晴己さんの生徒3人は、「コロナ禍で各種イベントが中止となり、活気が失われた地域をペイントの力で取り戻したい」と地域の公共施設をプロジェクトの対象にすることを決定。そして生徒たち自ら、区施設を管理する西成区役所を訪ね、プレゼンテーションを行った。

最終的に、西成区が提示した複数の候補の中から、生徒たちは公園のトイレを対象に選定。トイレの外壁が落書きされていたことも地域の課題として捉えた。

対象施設が決まった後も外壁デザインの制作、キャラクター設定、スケジュール管理、作業の段取りなど、やるべきことは山積み。3人で手分けし、準備を進めていった。

塗装は予め日本ペイント社員、教師、生徒らが落書き消しを含め、下塗りと上塗りを実施。手が届く壁面下部を近隣の園児と小学生と一緒に色付けした。
「子供たちが愛着を持てるようなキャラクターと大人の方も気に入ってくれるデザインを考えました」と話すのは、外壁デザインを担当した伊禮さん。子供たちが親しみを持てるよう"うんち"と"おしっこ"を「ピッピとプー」のキャラクターとして愛らしく表現。1枚1枚タイルを塗り分け、温かみのある色鮮やかなデザインに仕上げた。塗装作業では、終始、園児や小学生との会話を楽しみながら、作業を進める姿が見られた。最終的な完成は2024年1月中旬を予定。

一方、日本ペイントにとって同校との塗装プロジェクトは、社会貢献活動として推進する「HAPPY PAINT PROJECT」の一環。社会的価値向上と経済的価値向上の実現を目指し、これまで75回に及ぶ塗装イベントを実施した。

日本ペイント上席執行役員の藤原三也氏(マーケティング本部長)は「我々の活動としては、1つ1つのイベントにどれだけの人に関わって頂けるかに価値を置いています。社内外問わず、つながりを生み出す意識がこうした活動を有意義にしていく」と話す。
具体的な成果を明示しにくい長期スパンを要する活動だが、授業を経験した卒業生2名が同社の門を叩き、現在社員として在籍している。



生徒自ら壁画デザインを考案.JPG
生徒自ら壁画デザインを考案.JPG
園児たちも塗装に夢中.JPG
園児たちも塗装に夢中.JPG
プロジェクトデザイン班の3人。左から伊禮さん、中原さん、土井さん.JPG
プロジェクトデザイン班の3人。左から伊禮さん、中原さん、土井さん.JPG

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