有機ジンクリッチペイントメーカーのローバル(本社・大阪市中央区、社長・田中孝篤氏)は、2年後をめどに、完全1液タイプの水性有機ジンクリッチペイントを上市する計画を明らかにした。4月にドイツ・ニュルンベルグで開催された「ヨーロピアンコーティングスショーカンファレンス2017」で技術発表を行い、聴講者の関心を集めた。

同社は、社名と同じ「ローバル」を主力ブランドにこれまで「厚膜ローバル」「エポローバル」「ローバルアルファ」「ローバルシルバー」などの製品を投入。溶融亜鉛めっき同等の錆止め効果が得られる有機ジンクリッチペイントに特化しつつ、性能や上塗り適性、カラーなどニーズに応じてラインアップを拡充してきた。

更に2012年には世界初となる1液1粉末タイプの水性有機ジンクリッチペイント(常温亜鉛めっき)「水性ローバル」を上市。性能面は従来品同等を確保し、防食分野におけるオール水性仕様を確立した。また中小企業の優れた製品・技術を表彰する「関西ものづくり新撰2017」にも選ばれた。

今回発表した新技術は、使用前に行う亜鉛末の混合作業を不要にした完全1液タイプ。環境対応と施工性を両立する技術として普及拡大に期待を高めている。

本開発については、世界有数の亜鉛末メーカーであるベルギー・EverZinc社と共同で取り組んでいる。既にEverZincによる水性塗料向けの亜鉛末の開発は完了。あとは製品安定性や実暴など、ローバル側のチェックを残すのみとなっている。

開発を担当している同社技術部開発課課長の中村健一氏は「亜鉛末に水が触れると水素ガスが発生し、防食性能が落ちる課題に対し、いかに塗膜になる時に反応させるかがポイントになっている」と説明。缶中で反応を起こさせないよう亜鉛末に特殊加工を施した他、「塗料組成も抜本的に見直した」と、実用レベルに掲げる1年間の貯蔵安定性確保にもめどをつけた。

ジンクリッチペイントは、塗膜で外部からの水分等の浸入を防止する一般塗料と異なり、亜鉛の電気化学的反応を利用して防錆層を作る技術。ローバルは更に独自の技術を加え、溶融亜鉛めっき同等の錆止め効果を発揮する製品を展開している。

同社は1液水性製品を2年後には上市したい考え。世界初の技術として、欧米などへグローバル展開も視野に入れている。