日本鋼構造物循環式ブラスト技術協会(JSCB:山田博文代表理事)の勢いが加速している。近年、会員数は右肩上がりで増加しており、現在は150社までに成長。昨年比では30社も増えている。JSCBでは、地区ブロック制を敷いており、北海道・東北、関東、北陸、東海、関西、中国・四国、九州・沖縄の7ブロックで全国をカバーしている。
JSCBが展開する循環式ブラスト工法とは、鋼橋の旧塗膜の除去及び素地調整において、ブラストによって剥離させた塗膜くずと使用した研削材を回収し、両者を選別した上で研削材を循環再利用するブラスト工法のこと。
研削材は再利用するため、発生する産業廃棄物は塗膜くずのみとなる。その結果、産業廃棄物処分量が大幅に削減でき、環境に配慮できるメリットとともに処分費も大幅に削減できる。JSCBが使用する研削材は耐摩耗性の高い金属系研削材であるため、粉砕することが非常に少ないことも大きな特長となっている。
近年はPCBや鉛を含有する旧塗膜の除去工事需要が旺盛となっており、循環式ブラスト工法の採用が全国各地で増えている。令和5年度のJSCB会員の施工実績は、北海道から九州、沖縄など28都道府県で40万7,000㎡となった。前年度比では23%増であり、毎年2割増で推移している。
最近は伊豆大島など離島の工事での受注も目立っている。循環式でないブラスト工法の場合は、研削材も産業廃棄物になるため産廃処理費はもちろんのこと、本州への運搬費、更には運搬にかかるCO2排出量についても負担は大きい。そのため、循環式ブラスト工法の有効性が顕著となっている。JSCBによると、今後も離島での採用は増えていく見通し。
ベトナム学校開校、延べ30名卒業
新事業として、ベトナム・ハノイ市に技能実習生を対象とした技術訓練学校を開校し、昨年から運営をスタートさせている。
技能実習生として日本に来る前に循環式ブラスト工法の基礎知識を学ぶとともに実務作業も行うのが目的。来日後に一から学ぶのではなく、基本的知識と技能を習得できれば現場の戦力として期待できる。
ベトナムで講師を務めるのは技能実習生として日本で循環式ブラスト工法に携わったベトナム人だ。学校には実際に循環式ブラスト工法の装置を備えているため、実際の作業ができる。
技術訓練学校がスタートし、これまで1~3期生の計30名が卒業している。1期生は3月に会員企業に配属が完了、2期生も6月に配属が完了しており、3期生は9月に配属が予定されている。現在、4期生10名が日本語教育とブラスト作業の訓練中で、10月に卒業が見込まれている。5期生は14名が日本語教育中となっている。
塗装現場においても人材不足の問題が深刻化しており、現状、技能実習生に頼る部分もある。会員企業としては人材確保という観点でも大きなメリットとなる。
『ごみを減らして世界を変える』
来年10周年を迎えるJSCB。8月23日に開催された中間報告会において、山田代表理事は「最初は小さな組織からここまでに成長したのは、会員の皆様方のおかげだと思います。そして、各発注機関がこの循環式ブラスト工法の有効性を認識いただいた証ではないか」として循環式ブラスト工法が受け入れられたことの確かな手応えをつかんでいる。
また、最近見られる類似の工法については「私が循環式ブラスト工法を立ち上げた当時の思いは『ごみを減らして世界を変える』という大きな目標がありました。類似工法が生まれてきたということは、循環式ブラスト工法の良さが全国的に認められてきたからこそだと思っています。ごみを減らして地球の環境を変えていこうという強い我々の信念は、他工法についても違っているわけではありません。結果として世の中のためになることが大事です。当然、先駆者として我々は一致団結して更なる発展を進めていかなければならないと思っています」として更なる発展を目指していく。
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