塗装から剥落防止まで幅広く網羅 視認性高めたクリヤー工法で弾み

日本ペイントは2015年にエナメル塗装と同等の性能を保持する厚膜柔軟形特殊クリヤー被覆工法「タフガードクリヤー工法」を土木研究所と開発。コンクリート保護と維持管理を両立させる新技術として、提案活動に弾みをつけている。


同社がコンクリートの表面を塗装し、塩害、アルカリ骨材反応、中性化などによるコンクリートの劣化を抑制する「タフガード防食システム」を投入したのは約20年前。以来、防食塗膜でカバーする表面保護対策を標準機能に、ひび割れ対策、はく落対策、視認性確保と要求性能や部位に応じた工法を拡充してきた経緯がある。

同社担当者は「10年前からコンクリート劣化の予防保全に対する関心度が高まってきた。また工事もコンクリート塗装単体ではなく、鋼構造物塗装を含めた一括工事での発注が増えており、鋼構造物、コンクリート両方への対応を可能にする塗料メーカーの強みを生かしていきたい」と話す。

中でも最近関心を集めているのがはく落対策。コンクリートの一部が劣化し、ひび割れ、落下につながるケースが出ており、緊急性も伴って引き合いを増やしている。

そこで同社は、はく落対策工法として塗装単体仕様3種類と塗装と連続繊維シートを組み合わせたメッシュ工法2種類、ガラスクロス仕様1種類を加えた計6種類を揃える。

特に"塗るだけ工法"と称する塗装単体工法の厚膜柔軟システムは、工期、経済性、コンクリート追従性、低温硬化、施工性を兼ねているのが特長。

「タフガードQ-R工法」は、プライマーと上塗りの間の中塗りとして1,000μm(1mm)の超厚膜のウレタン/ウレア樹脂を塗布。クリヤー3層ではく落防止効果を発揮する。下塗りにはエポキシ樹脂系水性ウレタンプライマー「タフガードR-Wプライマー」を使用。下塗り・中塗りとも塗り重ね乾燥時間(23℃)2時間以上と超速乾性を有しており、工期を大幅に短縮する。

上塗りは耐用年数に応じて柔軟形ふっ素樹脂塗料「タフガードFD上塗」及び柔軟形ポリウレタン樹脂塗料「タフガードUD上塗」を選択。形成した塗膜は、伸縮性(伸長率45%)を持たせることでクラックに追従し、外部からの水分の浸入を抑止し、コンクリート劣化の要因となる塩害、凍害、中性化、アルカリ骨材反応を防止する。

同社は、従来の繊維シート工法よりも施工性、コストパフォーマンスに優れる新工法として普及拡大に期待感を高めている。NETIS登録技術。

一方、ひび割れ対策と視認性を兼ねた工法として、実績を伸ばしているのが先述した「タフガードクリヤー工法」。

「コンクリート構造物に対する点検作業の簡素化が求められており、目視ができるクリヤー仕様の要望が増えている」と開発の経緯を説明。透明な塗膜でコンクリート躯体を劣化因子から守りつつ、目視調査によるひび割れ診断を可能にした。

工程は、素地調整後、プライマー、パテ、上塗仕上げ。3工程で最短2日での施工が可能な省工程システムとなっており、従来の保護塗装工法と比べて施工日数を1~2日短縮するなど工期短縮に寄与する。性能面でもNEXCO3社が構造物施工管理要領で定める要求性能に適合する。

同社は景観や美観を重視する着色保護仕上げから、耐久性、ひび割れ、はく落対策工法と幅広いニーズに応じた工法を提供できるのが強み。性能面でも国土交通省、NEXCO、各高速道路会社、鉄道会社など、それぞれの施主が求める要求性能を満たした仕様を確立している。

今後は幅広い工法ラインアップを武器に日本全国に点在するコンクリート構造物の補修やメンテナンスに対し、幅広くアプローチしていきたい考え。「コンクリート防食分野にはさまざまな業態が材料を開発しているが、塗料・塗装を通じて構築したネットワークを活用していきたい」と強調。鋼構造物塗装を含めたインフラ維持保全のスペシャリストとしてポジション獲得を狙っている。

主な実績
○関東地方整備局・鶴間高架橋他補修工事(3,430㎡、神奈川県、2007年)
○関東地方整備局・H19空港南トンネル(山側)壁面補修工事(5,575㎡、東京都、2008年)
○東京地下鉄・原木中山駅西船橋駅間高架橋コンクリート補修その他工事(3,190㎡、千葉県、2009年)
○中部地方整備局・岡崎出張所管内橋梁補修工事(3,730㎡、愛知県、2011年)
○近畿地方整備局・国道26号堺高架橋補修工事(6,726㎡、大阪府、2011年)
○ゆりかもめ・平成24年度日の出・芝浦ふ頭駅間側壁補修工事(6,000㎡、東京都、2012年)
○近畿地方整備局・国道171号池田高架橋補修工事(5,355㎡、大阪府、2014年)
○関東地方整備局・大利根橋橋梁補修工事(3,489㎡、茨城県、2015年)
※すべてタフガードQ-R工法

日本ペイントのWEBリンク


プロフィール

企業プロフィール 日本ペイントは1881年創業の総合塗料メーカー。アジアを基軸とするグローバルトップメジャーに向け2014年に持株会社体制に移行し、日本ペイントホールディングスを設立。2015年4月にはホールディングスの傘下に4事業会社(自動車用塗料、工業用塗料、汎用塗料、サーフ)を設立し、日本ペイントは中核となる汎用塗料分野を担う。住宅、ビル、マンションなどの建築物に塗料を供給する他、橋梁、プラント、タンクなどに対しては防食塗料を展開。防食分野では、鋼構造物分野で高い競争力を有しており、コンクリート防食を成長領域に据え、インフラ分野での総合力を高めている。


美装から剥落防止まで幅広く網羅 視認性高めたクリヤー工法で弾み
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