レーザーで錆除去、来春以降レンタル開始へ

レーザー装置を用いた錆や塗膜除去事業を行うトヨコー(本社・静岡県富士市、代表取締役社長CFO・豊澤一晃氏、代表取締役社長CRC・茂見憲治郎氏)は、高出力レーザー装置「CoolLaser(クーレーザー)」の実用化モデル「CoolLaser G-19」を開発した。世界最高峰の出力6kWを実現することで除錆能力を向上させ、同時に酸化被膜の抑制を両立させた。橋梁の狭隘部など施工困難部位向けで展開していく方針で、来春以降にはレンタルの開始を予定している。


トヨコーは屋根の防水・断熱・補強工事事業などを手掛けるとともに、2008年から屋外用のレーザー装置の開発に着手。さまざまな試験施工を繰り返し2019年に出力3kWの屋外で施工できる装置「CoolLaser」を開発した。

鋼構造物のメンテナンスとしてレーザーで錆や塗膜除去を行う。自社施工の形で事業展開しており、2019年から通信鉄塔や橋梁、船舶など20以上の施工実績を重ねてきた。

橋梁をはじめとする鋼構造物では老朽化に伴うメンテナンス需要が高まりを見せている。メンテナンス工事では錆を除去して塗装するものの、構造上細かい入り組んだ部分の錆や塩分を取り切るのは困難な状況となっている。レーザーであればそうした箇所でも施工が可能となる。

「CoolLaser」は錆や塗膜を除去するだけでなく、再発の原因となる塩分を除去することができるのが特長の1つ。特に塩害地域では効果が大きく、塩害による錆の再発防止により鋼構造物の長寿命化に貢献する。

もう1つの特長として、光の力を使って対象物を除去するため、二次産廃物を発生させない。廃棄物は塗膜や錆のみでそれらは集塵機で回収する。また、発生する粉塵が極めて少なく現場作業者の環境改善にもつながる。

施工実績は着実に重ねているが、現在まで本格的な普及に至っていないのも実状。「従来のレーザーでは照射処理の速度が遅かったり、厚みのある対象物の除去が困難であったり、照射処理後に酸化被膜が形成されるなどさまざまな課題があった」(同社)。

高出力化と酸化被膜の抑制を両立

このほど開発した「CoolLaser G-19」はこれらの課題をクリアした実用化モデルとして展開する。

性能は屋外工事を目的としたレーザー装置の出力量としては世界最高峰と自信を持つ6kWで、従来モデルと比べて2倍の出力となり施工スピードは約3~4倍にアップしたという。100μm程度の錆や300μmを超える塗膜といった厚い対象物を除去できる。

また、従来モデルではレーザー照射後に酸化被膜が形成され、それが塗装耐久性に影響を及ぼす懸念があった。「CoolLaser G-19」ではレーザーのパラメータを最適化することで表面に残る熱影響を抑えている。その結果酸化被膜の形成を抑制することが可能となった。

安全対策として、照射ヘッドにはスイッチを2つ付けており、更にカバーを開けないとスイッチが押せない仕組みとなっている。装置は安全な順序を踏まなければ操作できないミスを防ぐ設計とした。

ルール整備にも注力しており、90以上の施工業者や専門家、施主、ゼネコンが会員となるレーザー施工研究会とともに安全ガイドラインに準拠したかたちで管理工事を行っていく。平行して資格講習会などで人材育成も行う。

屋外使用での安全性確保のため、装置は箱の中にすべて納めてそこで空調や湿度管理や衝撃対策を行う。工事の現場には照射ヘッドを持ち込み、100mの距離まで延長可能となる。

11月11日には国立研究開発法人土木研究所にて実演デモを実施した。「皆さまから高い期待をいただいている」(茂見社長)。同社では土木研究所の「革新的社会資本整備研究開発推進事業」において、施工困難部位の施工方法に関する共同研究を行っている。

これまではレーザー開発をしながら、安全・品質確保の観点から自社施工で展開してきたが、今回実用化モデルを開発したことで来春以降のタイミングで装置提供のレンタル事業をスタートさせる予定。

茂見社長は「レーザーに期待されることは錆だけでなく塩分まで除去する、廃棄物削減による地球環境保護、作業環境がクリーンになるため3Kからの脱却がある。新型機は能力を上げるとともに工事用途に特化し開発しており、安全性、安定性、操作性を向上させている」と述べ普及展開を推進していく。



茂見憲治郎社長
茂見憲治郎社長
レーザー照射で錆や塩分除去
レーザー照射で錆や塩分除去
装置外観
装置外観

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