現場・技術系資格専門の通信講座を展開するSAT(本社・大阪府吹田市、社長・二見哲史氏)は、今年6月から「建築物石綿含有建材調査者講習会」(厚生労働省認可)の全国展開を開始した。現地会場で講義を動画配信し、オンラインで質疑に対応する遠隔システムを業界で初めて構築。今後は受講希望者を顧客に抱える塗料販売店との共同開催を積極化する意向を示す。

同社は、ビルや危険物などの設備系資格から建築・技術士などの施工安全管理、電気系資格、職場環境系資格など現場・技術系資格の取得支援を行う通信教育会社。特に時間や物理的な制約を受けないe-learningシステムを得意としており、「講義プログラム、受講者ともトップレベルにある」(担当者)と累計受講者数は9万人超。その他、厚労省認可による特別教育も数多く手掛けている。

そうした中、同社は6月下旬から国の認可を受け「建築物石綿含有建材調査者講習会」を開始。2020年の改正大気汚染防止法によって定められた新資格制度で、建物の解体及び改修の際に建築物石綿含有建材調査者による事前調査を義務付けたもの。国は、義務化をスタートする来年10月1日に向け、30~40万人の有資格者を育成する計画を掲げており、今年から国の認可を受けた機関が講習会の開催を本格化している。

ただ講習会の数や収容人数に限りがあるため、受講希望者に対して受け入れ体制が追いつかないのが現状。更に講習会の開催が主要都市を中心としているため、地方や郡部からの参加を難しくしている背景がある。

そこで同社は、事前収録した講義内容を当日会場で放映し、ZOOMを用いて講師と質疑応答が行えるオンライン講習会システムを活用し、全国各地で講習会の出張開催を本格化させる方針。開催場所に制約を受けず、講師不足、経費節減に寄与することから、講習会が行き届かない地域での開催を可能にした。

特に同社が出張事業を推し進める上で期待するのが、塗装業者を顧客に抱える塗料販売店との共同開催。

同社は、改修・塗り替えに関わる塗装業者の資格取得ニーズが増大すると見ており、「資格制度の周知が進まない中、情報発信機能と顧客基盤を持つ塗料販売店様の役割に期待している」と集客力を持つ塗料販売店との連携を通じ、受講ニーズに対応していく意向を示す。講習会の規模は、15人以上/回を想定する。

これまで500名以上の修了者を輩出する中、同社が差別化に据えるのが講習会の品質。

「合格率が低ければ、講習会の信頼が損なわれる。そのため事前に10数名の候補者と面接し、内2名を講師として採用している。また講義を事前収録することで場所や講師によって差が生じることがない」(担当者)と合格率92%と高レベルを維持する要因となっている。また主催者ごとに異なる受講費用は、4万5,000円(テキスト、修了証カード込み)と平均的な価格設定とし、考査合格者に即日修了証カードを付与する点も付加価値を高めている。

更に同社は、アスベスト分析調査の受託事業も開始しており、資格取得支援から実務支援へとサービスの幅を広げている。

問い合わせTEL080-3446-6357(担当・吉村氏)

◇建築物石綿含有建材調査:2023年10月から請負金額100万円以上の元請け工事に対し、アスベスト含有有無の事前調査が義務化される。工事対象は、解体及び改修工事。飛散リスクが少ないレベル3建材(建築仕上塗材、窯業系サイディングなど)も対象としており、塗膜の切断、削る作業が伴う場合は、有資格者によるアスベストの含有有無の事前調査が必要となる。なお資格は、すべての建築物を調査できる「一般」と戸建て住宅に限定した「一戸建て」「特定」の3種類がある。