ケーススタディ 住宅塗り替え専門店の成長モデル体現

住宅の塗り替え市場において、全国でトップクラスの実力を誇る塗装会社のミヤケン(本社・群馬県前橋市、宮嶋祐介社長=写真)。注目企業として定点観測している同社が、住宅塗装市場の厳しい現況をどのように乗り越えているのか取材した。キーワードは「多店化」と「多角化」だ。既存店の伸びの鈍化を多店化で補い、サービスの多角化によるシナジーを成長の起爆剤にする。市況が厳しいからこそ、事業展開に拍車がかかってきた。

 


住宅の塗り替え市場に関して、「一昨年の夏ごろから急激に市況が冷え込み始め、それがもう2年も続いている。もはや例外ではなく、今の状況が常態だと認識しなければならない」と、厳しい見方を示す宮嶋祐介社長。

アフターコロナの消費動向の変化や今後も続くことが想定される需要の縮小、家電量販やポータルサイトなどライバルの参入と台頭で、「塗装店にとって間違いなく厳しい市場環境になる」と口元を引き締める。

それを乗り越えるために同社が進めているのが「多店化」と「多角化」だ。
「その商圏で地域一番店に到達すると、売上を伸ばす余地が少なくなる」ことから、順次多店化を進めてきた。群馬県内では前橋本社、高崎店、太田店と出店を続け、2020年には初めて県境を越え埼玉県に浦和店を出店。埼玉県内でも川越、大宮、川口と店舗網を広げ、塗り替え専門店としては現在、群馬・埼玉の両県で7拠点を展開している。

1店舗当たり2.5~3億円の年間売上を想定して多店化を推し進めてきた。「それぞれが地域一番店になってそのエリアでのシェアが飽和してくれば、今後も多店舗化を進めていくことになると思う」と言及する一方、塗り替え市場全体に対しては「あまり明るい展望は描けない」との見方を示す。

アフターコロナの市況の悪化や他業態との競争激化といった現況だけでなく、人口減少や建材の高耐久化によるメンテナンスレスの流れなどで塗装需要が減り、「これまでのような成長は期待できない」と住宅の塗り替え市場を俯瞰する。

それを踏まえて進めているのが、成長へのもう1つの戦略である「多角化」だ。メインの住宅塗り替え事業を起点に提供できるサービスを増やし、住宅塗装市場の限界を超えていく戦略。

サービス多角化のシナジー追求

多角化の1つが、OB客を対象としたリフォーム事業だが、特筆されるのはそのベースとなるOB顧客の数的な規模だ。「事業を始めてから25年。ご自宅の塗り替えでつながったお客様はこれまでに2万件を数え、それ自体が1つの市場として捉えている」という規模感。そこに対して、キッチン、バス、トイレなど水まわりを中心にリフォームサービスを提供。「全体の事業に貢献する有望な柱に育っている」と自信を見せる。

ポイントは、OB客との関係性の構築だ。同社では施工後の関係を維持していくために「アフター事業部」を専門部署として設け、定期点検やニュースレターの配布、感謝祭イベントへの招待などOB客へのコンタクトとコミュニケーションを継続。「何らかのリフォームの必要性が生じた場合、まずウチに相談していただける」と、OB客との良好な関係性の構築が、リフォーム事業の伸長に反映している。

そして、多角化のもう1つが給湯器の「エコキュート」の取り換え工事。エコキュート工事専門店の「ちからモチ」にFC加盟し、コロナ禍最中の2021年から事業始めた。

給湯器のような生活に欠かせない機器は、壊れると交換に緊急性を要する。このため、注文があれば即対応できるよう在庫を多く抱えるようにした。コロナ禍とロシア・ウクライナ紛争などによるモノ不足でエコキュートが品薄となる中、この戦略が奏功。緊急性を要する依頼に即対応できたことで新規事業のスタートダッシュが切れた。

現在、前橋・リフォーム館に併設した店舗の他、栃木、松本、川越にエコキュート専門店「チカラもち」を単体で出店、攻勢を強めている。
更に、今年6月には外構工事専門店の「GARDEN LABO」を前橋市内にオープンし、新たな事業に乗り出した。

「庭やエクステリアをおしゃれにリフォームしたいという潜在需要に対して、一部のホームセンターに窓口があるくらいで、B to Cの専門工事店がほとんどない」と説明。そのため、「その受け皿になれれば市場性は十分ある」と判断し、オープン。「開店から1カ月で50件以上の見積依頼が寄せられた」と狙いが当たった。この外構エクステリア事業も今後の多店化が視野に入る。

これら「チカラもち」や「GADEN LABO」といったサービスを単体で展開するのは、「それぞれ専門店にすることでエッジが立ち、潜在的なお客様を吸引できる」からだ。そして、それぞれの業態でOB客が増え、「例えばチカラもちでエコキュートを交換していただいたお客様が、『ミヤケンさんは塗り替え工事もできるの?』というように、塗装事業のお客様にもなり得る」とシナジーが発生。

塗装、エコキュート、外構エクステリアのそれぞれのOB客に、各サービスをクロスセルできることに加え、水まわりなどのリフォームも提供できる。つまり、多角化した各サービスでOB客が増えれば増えるほどクロスセリングが増大し、事業が膨らむ。同社がサービスの多角化を進めている理由だ。

住宅塗り替え市場が冷え込む中にあっても、多店化とサービスの多角化で成長を維持。2022年(7月期)20億円、23年・23億円、24年・26億7,000万円と、同社が掲げる「年率15%アップ」を達成、今年度は32億円を目指す。このペースで拡大を続け、2033年に掲げた「年商100億円」への道程も、クリアになってきた。



ミヤケン 宮嶋祐介社長.jpg
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