重防食塗装系はジンクリッチペイントを用いた防食下地が施されることが前提となっている。いくら上塗り塗料に耐候性に優れたふっ素樹脂系を用いても、適正な防食下地がなければ鋼構造物の耐久性は維持できない。

そこで重要となるのが素地調整だ。橋梁をはじめ鋼構造物塗装の指針となっている「鋼道路橋防食便覧」の塗り替え塗装系Rc-Ⅰではブラスト工法が採用されていることから、現在では橋梁塗り替え工事においてブラスト工法が普及している。

ブラスト工法により旧塗膜を完全に除去した上で重防食塗装系に変更することが、鋼構造物の長寿命化に大きく寄与するとの考えが一般化した。

ブラスト工法といっても多様化しており、一般的なオープンブラスト工法の他にもバキュームブラスト工法やウォーターブラスト工法などが使用されている。

その中で存在感が高まっているのが、循環式ブラスト工法だ。研削材に金属系を使用することで、研削材を循環、再利用するという工法。大掛かりな設備が必要になるものの、産廃物の大幅削減になることから工事のトータルコスト削減に寄与する。環境配慮という観点からも発注者側から評価を得て、採用を増やしている。

8月には一般社団法人日本鋼構造物循環式ブラスト技術協会が設立。多種の循環式ブラスト工法がある中で循環式ブラスト工法の標準化を図り更なる普及を目指す。

塗装から補修へ業務拡大
ヤマダインフラテクノス(愛知県)

会社設立50周年を迎えて山田塗装からヤマダインフラテクノスに社名を変更した。
国が管轄する工事における塗装工事単体の発注が少なく、補修工事の中に含まれるケースが増える中、同社は塗り替え工事からコンクリート補修など橋梁の維持管理業務へと拡大を図っていく方針だ。

同社が展開する循環式エコクリーンブラスト工法が堅調に実績を重ねており、直近2年では約30万㎡の採用実績を誇る。愛知県管轄はもちろん、NETIS(新技術情報提供システム)登録効果により、市町村の橋梁塗装工事においても発注者指定として採用が増えている。高速道路会社ではNEXCO中日本で使用されるケースが目立っている。

循環式エコクリーンブラスト工法とは、一般的なオープンブラスト工法と異なり研削材を循環して再利用することで使った研削材を産業廃棄物にしないのが大きな特長。

投射したスチールグリットの研削材をバキュームホースにて回収し、分離装置にて研削材と塗料カスに分離し、再度研削材を循環して使用。産廃物となるのは剥がした塗装カスのみであり、産廃物の処理費用が非常に安くすむ。同社では産廃物を50分の1に大幅削減できると試算する。

現在、循環式エコクリーンブラスト工法の施工は元請が2割、下請けが8割の割合。圧倒的に下請け施工が多く、塗装専業者や補修保全業者からの依頼が多くなっている。保有するブラスト基は20セット(20現場対応)。

また、山田社長が会長を務める循環式エコクリーンブラスト研究会では全国で約30社の会員から構成されており、中部や東北を中心に同工法の採用が広がっている。

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