リフォーム用棟換気を塗装ルートで展開

戸建てなど低層住宅の塗装リフォームで、工事単価と顧客満足を同時に高める付加価値サービスが登場した。棟(むね)換気でトップシェアの建材メーカー・トーコー(本社・奈良県生駒市、社長・西田敏典氏)は、塗装業者が設置できるリフォーム用棟換気「パッ換」を開発、7月から本格展開に入る。屋根塗装リフォームに、夏の暑さや屋根裏の結露対策に有効な棟換気をプラスすることで住宅塗装リフォームの事業性が広がる。塗料販売店など全国にエリア代理店制を敷き、塗装業界に広めていきたい考えだ。


木造住宅の屋根と天井の間の空間である小屋裏は空気が滞留しやすく、住宅に悪影響を及ぼすさまざまな問題を抱えている。

夏場は屋根表面の温度が屋根裏に伝わり、小屋裏の温度は60℃近くまで上昇、室内が高温になり冷房が効きづらくなる。冬場は内気と外気の温度差で小屋裏に結露が発生。常に湿った状態のためシロアリやダニなど害虫の温床となるだけでなく、木材が腐朽し家そのものの性能にも深刻な被害をもたらす危険性をはらんでいる。

こうしたことから新設住宅の瑕疵担保を義務付けた2000年の品確法以降小屋裏換気が普及。ただしその多くは、軒裏から吸気して同じく軒裏から排気する方法で、暖かい空気は上昇するといった原理上、換気の実効性が乏しいのが実情だ。

これに対して、軒裏から吸気し、屋根の最上部の棟(むね)から排気する棟換気は最も換気効率が高い。このため近年の長期優良住宅やハウスメーカーなどの新設住宅では棟換気の採用が増加。トーコーはそのトップメーカーとしてこれまでに150万台の実績を持つ。

一方、既存住宅の大半は従来の軒裏吸排気か密閉状態の小屋裏の物件が多く、小屋裏環境の改善を掲げた棟換気設置リフォームは大きな伸び代がある。そこで同社では「住宅の屋根のリフォームで8割以上を占める塗装工事と組み合わせることで、棟換気のリフォーム需要を掘り起こしたい」(開発営業部部長・楠木義正氏)と着想、塗装業者が設置できるリフォーム用棟換気の開発に乗り出した。

屋根に穴をあける!?でも大丈夫!

約3年の開発期間を経て今月から生産・販売を始めるリフォーム用棟換気「パッ換」は、塗装工事に換気機能をプラス提案できる新たなリフォーム商材。小屋裏の環境改善によって住宅寿命と室内の快適性を高めるリフォームメニューとして市場性がある。

最大の特長は、塗装業者でも設置できるよう施工を極限まで簡便化したこと。施主への提案の幅を広げ、工事の満足度と付加価値を高める付帯メニューとして塗装業者に有益だ。

施工は、①既存の棟板金の上から排気のための穴(Φ80mm×4)を開け②穴の断面に水密のためのブチルテープを貼り③本体(換気口カバー)をビスで留めつけるだけの3ステップで完了。「初心者でも1箇所あたり30分程度、少し慣れると15分ほどで設置できます。一棟で3~4箇所設置するパターンが多いのですが、2時間もあれば棟換気リフォームが完了します」(同)と極めて簡便な施工方法を確立した。屋根・板金業者に外注する場合に比べ、塗装業者が内製化することで単価アップと利益を確保でき、日程調整も必要なく施主への工期負担も軽減できる。

施工では、穴あけのためのハンマードリルやホールソービットなどが必要になるが、推奨している工具はいずれも市販品で容易に入手できる。「一番のハードルは屋根に穴を開けるという心理的な不安ですが、作業を1度経験してもらうと『想像以上に簡単』と、皆さんすぐに不安が解消されます」(同)と、これまでのモニター施工やモックアップを使った実技研修で塗装業者から高い評価を獲得、自信を深めている。

性能に関しては、軒裏吸気→棟排気のため高い換気性能を得られる他、毎分4L、風速30mのハードな噴霧試験をクリア、水密性を担保している。リフォーム瑕疵保険対象工事製品としても認定されており、信頼性が高い。

実際の施工では、同品を設置後に高圧洗浄を施し、翌日塗装工程に入れるので工期が延びることもない。建築塗料の主要メーカーによる塗料の付着試験で「良好」の回答を得ており、屋根塗装に用いた塗料でそのまま本体が塗装できる。

同社では塗装業界に「パッ換」を広めていくに当たり、塗料販売店などを基点としたエリア代理店制を敷いていく意向。エリア代理店において塗装業者を対象に座学90分、実技60分程度の施工研修会を実施し、修了者のみの取り扱い工法とする。先行して実施していたモニター施工などを通じ、既に4社のエリア代理店と100社の塗装店が登録されており、実質的な動きが始まっている。

なお、同品の設置対象はコロニアルなど化粧スレート屋根材の在来工法の木造住宅で、切妻屋根と寄棟屋根が対象。化粧スレート以外の屋根材及びツーバイフォー住宅、切妻・寄棟以外の屋根形状は設置不可。

製品仕様は、本体はガルバリウム鋼板製で長さは950mm。本体1本当たりΦ80mmの穴を4つ開口し、1本当たりの有効天井面積は32㎡、天井の面積に応じて設置する数を増やす。対応勾配は2.5寸~8寸。動画配信サービスのYouTube(下記QRコード)で施工動画を視聴できる。

製品や取り扱いに関する問い合わせは同社東京支店開発営業部の楠木(くすき)氏。TEL.03-6809-4181



リフォーム用棟換気「パッ換」
リフォーム用棟換気「パッ換」
3ステップ施工
3ステップ施工
施工動画用QRコード(YouTube)
施工動画用QRコード(YouTube)

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