業界の景色変える塗装店集団
1,000社構想表明

塗装でできる社会貢献を掲げたボランティア団体「塗魂(とうこん)ペインターズ」(会長・宮嶋祐介氏)が結成10周年を迎え、10月10日、東京港区のグランドニッコー東京台場で「10周年記念式典」を挙行した。社会貢献をバネとした企業成長の在り方を目指して歩み始めた塗魂ペインターズ。その活動は社会や人々に新鮮な感動を与え、塗装業界の景色をも変えようとしている。小規模塗装店集団による10年の活動を振り返った。


塗魂ペインターズは、町場の塗装店の有志13社で2009年9月に発足した。経済的な側面を排した社会貢献だけの純粋な行動規範が却って多くの塗装店に共鳴、現在、全国175社に会員数が膨らんでいる。

『塗装でメンテナンスをしたいけど予算などの都合でできない』といった施設からの要請に応えてボランティア塗装を実施、その活動実績は国内外で122回に及ぶ。全国各地の幼稚園や学校や公共施設、東日本大震災や熊本地震の被災地、財政破綻した夕張市の市庁舎、難病と闘う子供たちの家族が宿泊できるファミリーハウス、そして遠くリトアニア共和国の杉原千畝記念館のボランティア塗装など、塗装を通じて多くの人や地域に共感の輪を広げている。

社会的な存在感の高まりを示すように、10月10日の記念式典にはリトアニア共和国の駐日特命全権大使のゲティミナス・バルブオリス氏や社会貢献支援財団会長の安倍昭恵氏(首相夫人)といった来賓の他、塗料メーカーや塗装資材、塗料販売店、建築資材など同会の活動を支援、協賛している約50社の企業からも代表者が参集。全国から駆け付けた会員も合わせ、盛大な式典となった。

会の冒頭であいさつに立った宮嶋祐介会長(群馬・ミヤケン)は、「10年前にわずか13社で産声を上げたこの会は、今や全国175社が集う団体に成長し、日本全国、そして海外を含め122回の活動実績を積み上げてきました。ボランティア塗装を通じて困っている人たちに手を差し伸べてきましたが、そこで接したたくさんの笑顔や感動は、与えたもの以上に私たちに大きな幸せと自信をもたらしてくれました。自分自身の幸せだけを考えた人生ではなく、未来の子供たちのため、仲間のため、家族のため、そしてまだ見ぬ友のための幸せを我々の手で日本に、そして世界に広げていきましょう」と熱い言葉で呼びかけた。

塗魂ペインターズは今回の式典で新たに「会員1,000社構想」を表明した。地球温暖化や気候変動に伴って豪雨や台風など甚大な被害をもたらす災害が頻発する中、「困っている人のもとに真っ先に駆け付けられるようにするため」と災害対応を強く意識。

「1,000社だと都道府県単位で25社ほどの会員がいることになり、例えば真っ先に屋根にブルーシートを掛けることができるなど災害時の1つの力になれると思うのです。災害で色彩がなくなった地域に彩りを与えていくのももちろんペンキ屋の仕事。災害時だけでなく、幼稚園や保育所など未来を担う子供たちの遊具をきれいにするなど、塗装でできる社会貢献の力をもっと強めていきたい」(佐々木拓朗事務局長、千葉・ユウマペイント)と1,000社構想の理由を説明。「全国の、まだ見ぬ仲間にぜひお声掛けください」と集まった人たちに協力を求め、これまで以上に会員増強に注力する姿勢を示した。

ボランティア活動、
継続・拡大する力とは

塗魂ペインターズが発足して10年。これまでの圧倒的なボランティア活動の実績と更に大きく伸びていこうとする姿勢が、息の長い本物の団体になったことを印象づける。

宮嶋会長があいさつの中で触れたように、ボランティア活動で接した人たちのダイレクトな反応がメンバー1人ひとりのモチベーションになっていることは間違いない。自分たちの生業である塗装を通じて人々に笑顔と感動をもたらしている充実感や達成感は、事業活動で得られるそれとはまた別のやりがいをメンバーにもたらし、次の活動に向かうモチベーションになっている。

そして、継続性のもうひとつの大きな理由は、会そのものがメンバーの"学びの場"になっていることだ。

塗魂ペインターズの会員は、小規模な町場の塗装店が大半を占めている。若くして独立起業し、住宅塗装の元請けとして成功を目指すなど、成長志向の高いメンバーが多いのも特徴。

同じような境遇、同じような事業環境にある経営者同士が集まるそこは、有益な情報の宝庫にもなる。ビジネス面の即戦的なノウハウだけでなく人材育成や事業計画の立て方、経営者としての心構えなど、より高みを目指すための教材があふれており、成長志向の高いメンバーたちの相互啓発が強く働く。

そのベースとなるのはやはりボランティア活動だ。ボランティアを通じて純粋な感動を分かち合えた者たちだからこそ、同じ価値観や波長が醸成され、強い信頼関係を構築。本音ベースの会話や情報交換、刺激を得られる"場"が形成される。

ボランティア活動で得られる感動や充実感、自己成長につながる"場"に身を置くことの居心地の良さが魅力となり、会の拡大と継続をもたらしている。各地のボランティア活動に参加するための費用はもちろん自己負担だが、「塗魂に参加し続けるためにも自社の財務基盤をしっかりさせなければならない」(メンバー)とのモチベーションにつながり、正の循環を生み出している。

 売上や利益の追求のみならず、社会貢献をバネとした企業成長の方向を示したいとの思いから、塗装ボランティアを会の活動の核に据えた塗魂ペインターズ。こうしたスタンスの小規模塗装店が、目標とする1,000社に達したとき、社会から見た塗装業界の景色は間違いなく変わる。



幸せの輪を広げていきたいと宮嶋祐介会長
幸せの輪を広げていきたいと宮嶋祐介会長

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