旭サナックは近接塗装によって優れた塗着効率を可能とした自動塗装機2機種を開発、11月中旬に愛知県の本社で開催した新製品発表会で初披露した。服部修一社長は「今までに例がないほどに塗着効率をアップさせた」と自信を持ち、市場展開を開始した。平面ワークであれば塗着効率90%以上を可能とする新たな自動塗装機で、塗装現場で課題とされる脱炭素化に貢献する。
今回、初披露した新製品は、近接丸吹エア静電自動ガン「Robo Gun Twin EXTRA EAB600」(EAB600)と高塗着回転霧化静電自動ガン「SUNBELL Eco Premium ESA400」(ESA400)の2機種。
「EAB600」は"Wカスケード"による新たな荷電方式により高帯電量を可能とし、その結果、高微粒化、低風量、高塗着を実現している。小吐出領域において優れた性能を発揮するため、自動車樹脂部品など小物樹脂部品や補正塗装用として展開していく。
ポイントとなるのは新荷電方式と新霧化方式だ。新荷電方式としては、Wカスケードを搭載している。ガンの先端では、-(マイナス)カスケードで電圧を印加するノズルと、+(プラス)カスケードで電圧を印加するVAリングとの電位差を増幅させることで高い電位差が生じる。その結果、100mmの近接距離において十分な静電効果を得ることができる。一般的な荷電方式に比べて帯電量は40%向上させた。
一方、高い微粒化を実現するために新霧化方式を採用した。新方式では円周上の細かいスリットから霧化しやすく、噴出する際に細かく微粒化される。ノズルは細かい溝が形成されており、低いエア風量で高い微粒化性能を得ることができる。
100mmの近接距離でも十分な静電効果が得られる上、低風量で微粒化が可能となるため、塗着効率の向上を実現。平面ワークであれば90%以上の塗着効率が得られる。
結果として、飛散が減り塗料の産廃量削減と塗装ブースの汚れの減少、更には清掃コストの削減も期待できる。
新製品のもう1機種である「ESA400」は、回転霧化式の静電自動ガン。新制御及び定電流制御機能搭載によりワークとの距離を100mmまで近づけての塗装を可能とし、高塗着効率を実現した。塗着効率は90%以上が得られる。
また、通常の250~300mmの距離でも高い塗着効率を実現。新制御によって、スプレー距離が遠いときには最大電圧を印加し、スプレー距離が近づいた時には電流値を一定に維持することで塗着効率と安全性を両立させている。
エアキャップは従来機の金属製から樹脂製に変更したことで、静電効果が高まり塗料付着量が向上。更に静電制御による飛散粒子も抑制されるため、高い塗着効率が得られる。特殊機構により高品質なメタリック仕上げにも適する設計となっている。
自動車外装部品や建機、建材などの分野をメインに展開していく方針。
塗着効率100%にチャレンジ
今回の新製品は旭サナックが目指す「塗着効率100%」への戦略製品と位置付けている。服部社長は「当社は約30年前からチャレンジTE100、つまり塗着効率100%に近づけようという技術開発のキャッチフレーズがあります。この間多くの製品を上市してきたが、新製品の2機種は今までに例がないほどに塗着効率をアップさせた」と自信を持ち、市場展開を積極化させる。
近年、塗装工場の喫緊の課題である脱炭素にも大きく関わるため、塗着効率向上への市場ニーズは高まっている。
旭サナックでは脱炭素化のアプローチとして、塗料使用量削減、不良率低減、エネルギー低減の3つを重要項目として掲げている。
塗料使用量の削減という観点では、塗装機に求められるのは塗着効率の向上が最も大きい。一方、不良率低減では塗装品質を上げることで、リコートによるブースや乾燥炉の稼働時間の低減につながる。また、エネルギー低減については、塗装に必要なエネルギーを低減する。つまりは空調、吸排気、乾燥のエネルギーを減らす塗装機の開発が必要となる。
新製品2機種は「塗料飛散を減らして塗装ブースのエネルギーを低減できる。飛散が少なければ(エネルギー量が多い)水洗ブースをドライブース化したり、吸排気の能力を下げることができたりしてエネルギー低減に貢献できる」として、本社の塗装技術センター(CTC)や東京技術センター(TTC)などを情報発信拠点に、脱炭素化のアプローチとして提案を推し進めていく構えだ。