日本パウダーコーティング協同組合が運営する粉体塗装研究会は2024年第1回研究会セミナーを5月14日に開催した。会場はきゅりあん(品川区立総合区民会館)とZOOMによるオンラインのハイブリッド形式で行った。
今回は粉体塗料の下地として重要な金属表面処理(前処理)をテーマとして、日本ペイント・サーフケミカルズの鈴木謙吾氏と中尾健司氏による「環境配慮型塗装前処理のご紹介-水性塗布型1コート技術-」の講演が行われた。
同社では顧客の問題を解消する製品開発及び提案を進めており、近年ではエネルギーコスト削減、工程削減、廃棄物・重金属削減、人員削減といったニーズに対応して製品展開を行う。
その1つ目が低温脱脂剤「サーフクリーナーSD600RT」。鉄板や亜鉛メッキ鋼板、アルミなどの基材の脂除去では脱脂剤が用いられ、脱脂剤はアルカリ成分と界面活性剤で構成される。その中で、同品は低温領域でも効果を発揮する界面活性剤を使用している。
通常、45~55℃で行われる脱脂工程の液温を常温から35℃程度までの低温を実現。そのため、ガス代などの光熱費を大幅に低減でき、その結果としてCO2排出量の削減に寄与できる。例えば、脱脂工程での使用ガス費用削減率は常温化できれば最大95%削減が可能となる。
更に脱脂剤は泡立ちが問題になることがあるが、配合設計を工夫し発泡性を抑える特長を持つ。
現状として採用事例が多く、「実際、温度削減効果がお客様に喜ばれている」(同社)として更なる拡販を図っている。
非反応型の塗布型化成剤
続いて高防錆薄膜コーティング剤「サーフコートシリーズ」を紹介。同品はこれまでの化成処理に代わる水性塗布型コーティング剤(非反応型)であり、プライマーのように塗り付けて膜にして化成処理の代わりとなる。
リン酸亜鉛など主流の反応型は、熱をかけて化学反応を起こして化成被膜を析出させるが、その際に反応副生成物のスラッジが発生する。これは廃棄物として処分する必要がある。
対して、「サーフコートシリーズ」は化学反応を伴わず加温が不要で、スラッジも発生しない。そのため環境対応及びコスト面でメリットが出せる。
処理工程において、反応型化成(リン酸鉄、リン酸亜鉛)では化成処理後に水洗を複数回行ってから乾燥工程に入るが、「サーフコートシリーズ」では化成処理後、水洗レスで乾燥工程に移るため工程短縮につながる。温度調整も不要なためコスト削減にもなる。
現状、リン酸鉄の代替としては「サーフコート1706 N-1」、リン酸亜鉛の代替としては「サーフコート MC1800及び1810」をラインアップ。ランニングコストに関しては50%以上の削減が可能という。「特に化成工程にかかる温度をキープするためのガス代の削減率が高い」と説明する。上塗り塗料は溶剤、水性、粉体に対応する。
3品目としては水切り乾燥促進剤「サーフベストME-91」を紹介。電着塗装ではないラインで、前処理の化成処理後に乾燥させて塗装に入るラインユーザーに対して展開している。
通常、被塗物は前処理後に水洗を行ってから乾燥させるが、化成処理後の最終水洗槽にごく少量添加することで表面張力低下効果により水の付着量を低減し、乾燥効率を高める。そのため乾燥に要する温度を低下できる。
実際の導入現場では乾燥温度160℃が130℃まで低温化できた実績もあるという。更に、水切り乾燥がしにくい被塗物で人によるエアーブロー作業の削減につながるケースも出ている。
4つ目はジルコニウム化成処理剤「サーフダイン EC3200/EC4100」を紹介した。リン酸亜鉛処理に比べて処理温度低減(約10℃)が図れる上、スラッジ量はリン酸亜鉛に比べて10%以下となり大幅なスラッジ産廃費用の削減に貢献する。
同社は新規ユーザーには次世代化成処理として、水性塗布型コーティング剤「サーフコートシリーズ」とともに、ジルコニウム化成処理剤「サーフダイン」の提案を進めている。
世界需要の見通し、立花専務理事
2講演目として日本パウダーコーティング協同組合の立花敏行専務理事が「Powder Coating世界需要の見通しと国内需要の喚起について」をテーマに解説した。
立花氏はコーティングや接着剤などの原材料サプライヤー業界をカバーするコンサルティング会社のOrr&Boss社の資料をもとに世界の粉体塗料需要の推移を紹介した。
G7参加国を中心に先進国は伸び率が低い一方で、G20参加国を中心に中国を含む新興国の伸び率が高い推計を紹介。「G7メンバー国は国内に伸びしろが少なく、溶剤系から粉体へのシフトが進みにくい状況にある」と指摘し、生産拠点の更なる新興国シフトが見られると述べた。