久保井塗装工業所は平成29年度補正ものづくり・商業・サービス経営力向上支援補助金に採択された。事業計画名は「IOT活用による海外顧客への塗装知的資産提供サービス事業展開」。経験知の見える化を図った上で、塗装工程の最適化サービスの構築を目指す。

同社が今回補助金を使って導入したのはクラウドを利用した被塗物(製品)及び塗料の管理システム。ICタグやバーコードを使い、製品の種類、数量から主剤や硬化剤、シンナーの使用量を計算。塗料混合のムダ、入れ忘れなどのミスを防止する。

更に、クラウド上で製品や塗料情報の他、温湿度などの外的要因も加え、保存していくことで混合比や使用量の精度を高めていく仕組み。また、データをストックしておくことで不良発生時の原因究明にも効果を発揮する。窪井要社長は「ムダな塗料使用量の削減に加え、データが蓄積されていけば良品が出来上がる条件なども割り出すことができる」と説明する。

同社が最終的に目指しているのは、塗装の最適化サービス。ポンプやスプレーガンなどの機器やその設定を揃えることで同じ被塗物を違う工場でも同じように塗装できるソリューションを行っていく。また、それをIoTで管理することで遠隔地にいても工場の状況が把握できるようにする。

この発想は過去にアジアやメキシコの塗装工場を視察した窪井社長の経験をもとにしたアイデア。海外の工場の状況が把握しきれていない場合もあるが、現地に行くにはコストも掛かる。このシステムで日本にいながらにして海外の工場を管理できるようにしていくことを目指している。

今回導入したシステムは塗装最適化サービスの基幹的な役割を担っている。「シンナーの配合などの塗装条件は気温や湿度などを職人が総合的に判断していた領域。まずはそれを見える化することで作業の標準化をしていく。また機器やその設定などを揃え、塗料データを蓄積していくことで、場所による塗装品質の違いをクリアしてきたい」(窪井社長)と説明する。年内に基幹システムの運用を予定している。