粉体塗装研究会セミナーが6月19日、東京のきゅりあんで開催され、ニュージーランドの塗料メーカー・DGL社が建築外装材向けの意匠性粉体塗装を紹介した。

同社はニュージーランド(オークランド)、オーストラリア(メルボルン)、中国(東莞)に生産工場を有し、現地市場をメインに展開している。

ニュージーランドとオーストラリアを合わせた粉体塗料市場は約10,000トン/年間で年率3%の成長を示す。この市場について同社国際ビジネス開発マネージャーのTony Keepa氏は「比較的市場規模は小さいが、品質と性能に対する需要があり、競合他社の数が少ない」と特徴を説明する。
 市場は同社とアクゾノーベルがマーケットシェアの多くを占め、ニュージーランドでは同社がトップシェア、オーストラリアではアクゾノーベルに次ぐ2位に位置する。その他にはジョータン、アクサルタ、オキシプラストなどが輸入販売として展開する。

今回、同社が紹介したのは建築外装材に適した粉体塗料。「(2国は)どちらも比較的新しい国で人口は小規模だが増加しており、市場では建設分野が優位性を示しアルミニウムが広く使われている」(同氏)としてアルミ建材などで数多くの実績を持つ。

建材向けではポリエステル樹脂系をメインに展開(一部ふっ素樹脂系)しており、硬化型はHAA系を主要技術として使用する(TGICはない)。製品は耐候性グレードごとにラインアップし、耐久性保証は10年、20年、30年(ふっ素樹脂系)を有する。建築外装材分野で普及しているアメリカのAAMAやヨーロッパのクオリコートの規格に対応したグレードを揃えている。

そうした製品の中で日本市場向けにPRしたのが「ELECTRO(エレクトロ)」シリーズ。耐久性に優れたポリエステル樹脂系でボンディング加工技術によりメタリック仕上げや陽極酸化処理風の優れたデザイン力が特徴となる。

同氏によると建築設計者からは陽極酸化処理仕上げがデザイン的に人気が高まっており、それを粉体塗装で表現することで差別化を図っている。

優位な点は、カラーバリエーションの豊富さであり、色ムラも出ない。耐薬品性の面でも陽極酸化処理に比べて優れた性能を持つ。

同社が展開するポリエステル樹脂系はHAA硬化系をメインとしているが、エレクトロに関してはHAA硬化系ではなく特殊技術による硬化系を使用。これにより10%未満の低グロス、保証20年の優れた耐久性を有する。意匠面では、パールとメタリックの組み合わせや粒子サイズにおいても最適化を追求している。

一方で、柔軟性に劣ることや、HAA硬化系のマット調よりも耐傷性が若干低下するという課題もあるとしながらも、「エレクトロの仕上がりが流行の最先端であることから主要な建築家や特定の顧客まで幅広い人気を博している」と自信を持ってアピールした。

また、セミナーではホソカワミクロンワグナーの原木悦弘氏が「最新の静電粉体塗装機器」をテーマに、ブース内の気流を安定させた高速色替ブース「E-Cube」やブース内セルフクリーニング機能を有する「S-Cube CleanAssist」を紹介した。

合わせて技術紹介としてMDF粉体塗装についても触れた。MDFへの粉体塗装はヨーロッパでは家具に使用されるなど人気がある。木材という新素材への可能性という点で魅力があり、生産効率面でも向上が期待できる。焼付条件でも135℃×5minあるいは150℃×3minと低温化が図れる。

原木氏は塗装機器面からのアプローチとして電解制御をポイントに挙げ、塗装ブース内に電解制御プレートを設けることで、エッジカバー性の向上、回り込み性の抑制、膜厚分布の安定などの効果を発揮できると解説した。

セミナー最後には関西ペイントの佐川千明氏が粉体塗料基礎講座(熱硬化型)として、粉体塗料の特徴や塗装方法、製造法、市場動向について分かりやすく講演した。