BSサミット事業協同組合は7月8日、ANAインターコンチネンタルホテル東京で2024年全国大会を開催し、会員、来賓、協賛企業合わせて850名が参加した。当日は、EVをはじめとするパワートレインの変化がもたらす自動車整備業に対する影響から同会が進むべき方向性を明示した。磯部君男理事長は、「傍観者では大波は乗り越えられない。前に勇気を持って進んだものだけが美しい港にたどり着くことができる」と強い危機感を示した。
報告に登壇した磯部氏は、直近の市況でEVの成長速度が減速し、不確実性を高めている様相に対し「カーボンニュートラル達成のために自動車メーカーはEV開発と販売を置き去りにはできない」とEVの普及は避けられないとの見方を強調。その背景に自動車メーカーによる積極的なEV投資活動を示し、各自動車メーカーのEVに関する投資計画を紹介した。
◇トヨタ:米・インディアナ工場で電池パックの生産ラインを追加。
◇トヨタ:2027年に航続距離1,000km、満充電まで10分を可能にする全固体電池の実用化を目指す計画。
◇トヨタ:ギガキャスト(大型鋳造施設で複数のアルミ部品を1つのパーツとして成型する)を2026年発売のレクサスEVブランドに採用する計画。
◇ホンダ、日産:ギガキャスト導入に向け、既に6,000トン級のダイカストマシンを導入。
◇シャオペン(中国):1万6,000トン級の設備を導入。アンダーボディを一体成型する計画。
続けて磯部氏は、「自動車メーカーは、情報のセキュリティ性から汎用スキャンツールの活用に慎重になっている」と今後段階的導入が予定されているサイバーセキュリティ法規(UN-R155)や国際標準規格(ISO/SAE21434)について言及。「車両に不正なプログラムを進入する余地を与えないため、今後はメーカーの純正スキャンツール以外では自己診断の消去すらできなくなる」とメーカー、整備会社の関係強化が必要となるとの見方を示した。
こうした車体開発の革新や通信技術の活用が想定される中、同会は人材不足の解決と消費者に対する透明性の確保を重点施策に据える。
人材不足においては、6月27日に国土交通省に「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する自主行動計画」を提出するなど、工賃値上げから賃金改善に注力する方針。また透明性確保に関しては、修理責任の明確化や修理証拠書類及び作業証明書の保管・管理を策定した「BSエビデンスシステム」の全会員への落とし込みを完了させ、社会的信頼度を高めていく。
更に今後はテュフなど第三者認証の取得やトヨタによる車体整備工場を対象にした認定制度への参加を積極化する方針を示した。磯部氏は「前例がない取り組みを前進するのがBSサミット」と述べ、車体整備からモビリティサービス業のシフトに将来像を掲げた。
今年度は、10月に開始するOBD車検を見据えたOBD関連研修や作業環境研修、ネットワークセキュリティ研修を行う他、PCやスマホで扱えるようBSエビデンスシステムのバージョンアップを進めていくとしている。