メタリックなど光輝材の挙動解析を達成

ダイハツ工業はメタリック塗膜形成における光輝材の挙動解析を行い、3コートの塗膜間でのアルミやマイカフレークの配向メカニズムの可視化を達成した。光輝材がさまざまな角度で並ぶと見る方向によって色が変化するため、配向メカニズムを明らかにすることで車体と樹脂部品との色合わせの効率化を目指す。


ダイハツ工業の中山泰氏は2月26日にオンライン開催した日本塗装技術協会主催の講演会で、SPring-8放射光によるメタリック塗膜形成におけるアルミやマイカフレークといった光輝材の挙動解析について発表した。

SPring-8とは世界最高性能の大型放射光施設のこと。放射光を用いることで原子・分子構造の解析が可能となり、微細領域を大気圧下で観察できるため、この施設を利用して同社はメタリック塗膜の可視化に取り組んだ。

この実験に取り組む背景にあるのが自動車塗装の色合わせの難しさだ。近年、軽量化を目的に樹脂外板の採用が広がるとともにメタリック系を含む高意匠カラーの登場により、車体と樹脂外板の色合わせが課題となっている。

新色開発について「デザイナーが新色を提案し塗料メーカーのラボでトライを行う。その後実際のラインでそのカラーが再現するかのトライを何回か繰り返して量産に進むが、当然車体以外の樹脂部品にも同様のトライを行う。光輝材が含まれるメタリックカラーは色合わせが難しいため、ときには量産寸前まで塗装条件を調整したりして出荷を迎えているのが現状」と指摘。光輝材の配向メカニズムを明らかにすることで、塗装トライ及び色の確認作業を効率化させたい考え。

実際の塗装ラインでは一般的に車体と樹脂部品を別工程で塗装しており、塗膜構成が異なる。焼付条件なども違うため塗装条件も異なっている。同じ塗料であっても塗装条件が異なれば、例えばメタリックカラーであれば光輝材がさまざまな角度に配向することで見る方向によって色が変わる。

中山氏は「塗装に携わる技術者は経験的にどの条件を変えればアルミフレークが水平に配向するのかを知ってはいるが、実際にアルミフレークが並んでいく様子は見たことがなかったと思う」と実験の新規性を示し、SPring-8の放射光を用いて"経験則"から"可視化"への移行を図った。

粘性コントロールが配向に重要

実験は2段階で行い、まずは単層で塗膜収縮過程のアルミフレークの配向挙動を可視化すること。次の段階として、実際の自動車塗装のように、ベース2回塗り+クリヤーの複層塗装される塗膜間でアルミやマイカフレークの配向メカニズムの可視化を狙った。

第1段の実験では希釈率を変えた複数の塗料を用いて、塗料を吹き付けて塗膜が収縮していく中で、その際にアルミフレークが並んでいく様子の撮影に成功した。

その結果、塗装後に時間があまり経過していない状況(約5秒)では希釈率に関わらずアルミフレークの配向角度は変わらず、約3分経過するとそれに違いが見られた。つまり、時間の経過とともに塗膜が収縮しそれによりアルミフレークが配向する中で、溶剤希釈率が高い塗料や溶剤揮発速度が速い塗料は通常の塗料と比べてより水平に配向することが解明された。
 その上で、複層塗装(ベース2回+クリヤー)される塗膜ではどのような現象が起きているのかについて第2段の実験を行った。ここでは、粘度を変えた塗料や光輝材2種類(シルバーとホワイトパール)を使った。

ベース1で、低粘度の塗料を吹き付けたとき塗着後1秒まではアルミフレークがランダムに流動することが分かった。一方、標準粘度の塗料ではアルミフレークのランダム流動が抑えられていることが動画で確認できた。

またマイカの動きはアルミフレークに対し小さいものの同様に流動した。

ベース2を塗装した状況を見ると、アルミフレークの流動はあるもののベース1よりもその動きは小さく、しかも速く収束していることが分かった。つまり、ベース2を塗装したときその溶剤がベース1層に移行することでベース2自体の粘度は上がるのでアルミフレークの挙動が抑えられると見られる。また、ベース2の塗料粒子自体はベース1の塗膜のアルミフレークに与える影響は少なかった。

続いて、クリヤー塗装後のアルミフレークの動きについて、ベース層界面付近のアルミフレークを観察したところ、光輝材の動きが若干見られた。

色合わせのポイントは

第2の実験により複層塗装を観察した結果、塗着するときの塗膜粘度が初期のアルミフレーク配向に影響を与えることが示唆された。

中山氏は「塗装直後の塗膜内で光輝材がランダムに流動するが、その流動は時間とともに収束する。そしてランダム流動収束までの時間は塗料の粘度や光輝材の粒径、板厚などの影響を受けることが分かった」と分析。

自動車塗装のように複層を連続的に塗装する場合には、「各層の塗膜粘度をコントロールすることが光輝材の配向にとって重要である」と述べた。課題であった色合わせ作業における具体的な活用法は確立できていないとしながらも、焼付工程での時間軸を鉄製の車体と樹脂製部品を合わせるなど塗装条件を揃えることが重要との見方を示した。



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