Wet on Wet、自補修用新型水性ベースコート投入

イサム塗料は6月20日、自動車補修用新型水性ベースコート「CRONOS HD」(クロノスエイチディー)を投入した。塗り重ねができるウェットオンウェット塗装を可能にし、作業拘束時間の短縮を実現したのが特長。更に「国産では初めての水性2系統での展開になる」(北村倍章社長)と、先行上市する「AXUZ DRY」(アクアスドライ)との併売も関係者の関心を集めている。強まる環境法令を背景に、水性シフトをシェア拡大の契機と位置づけている。


「AXUZ DRY」以来、14年ぶりの自補修用水性ベースコートとなる「CRONOS HD」。製品名は、時間の神「クロノス」を由来に社内公募から採用した。

「CRONOS HD」は、ウェットオンウェットによる1発仕上げを可能にし、加熱及びエアーブローに伴うインターバルの時間を従来(水性)の2回から1回に削減したのが最大の特長。

これにより作業者がブースに拘束される時間を約20%短縮し、作業時間の短縮、作業者の体力的負担軽減に寄与する。「ランニングコストでは、溶剤系に劣らない」(担当者)と水性導入のボトルネックとなっているインターバル工程をスリム化したことで、水性導入に弾みをつける狙い。

原色設定についても「最低限ではなく、再現性をあげるために必要な原色を設定した」とソリッド32色、メタリック14色、TCカラー8色、パール41色(パウダー3色含む)、ミキシングクリヤー等7種類、希釈剤4種類をラインアップ。配合数は約1万6,000を収録(5月末時点)し、配合データもカラー工房の発行はなく、調色精度や再現性の観点から調色管理測色システム「彩選短スマート」に集約した。

なお、「CRONOS HD」ブランドとして、高外観クリヤー「CRONOS HD  HSクリヤー」(溶剤)、ノンサンディングシーラー「CRONOS HD NSシーラー」(溶剤)をラインアップ。オール水性仕様には、「PURE WSクリヤー」、「PURE WSプラサフ」で対応する。

「CRONOS HD」において、ユーザーが懸念するのが仕上がり品質の確保。インターバルを入れながら仕上がり感を調整する従来の塗装と全く異なり、一発仕上げでベースコート塗装を完了しなければならないからだ。

作業工程の違いについて同社担当者は「まずは溶剤系とは全く異なるものとして理解して頂く必要がある」とした上で、「細かなガン設定が必要なく、希釈剤も少ない。基本仕様に則れば、難しいメタリックのボカシにも対応できる」と作業性の高さを強調した。

6月24日に同社東京支店で行われた特約店研修会では、基本仕様に準じて3コートパールと2コートメタリック・パールのそれぞれボカシ塗装とブロック塗装を実演。長年に及ぶ水性塗料の知見を生かした基本仕様の整備、充実化を積極化していく意向を示す。

その一方で、業界関係者を驚かせたのが、現行の水性ベースコート「AXUZ DRY」との併売を決断した点。これについて北村社長は「溶剤系の作業工程を継承した1コート1ブロータイプの『AXUZ DRY』があることで比較検証がしやすくなり、水性導入へのハードルを下げられると考えた」と説明。更に「南北に長い多様な気候風土を持つ日本において、単一製品だけで網羅することは難しい」と国産塗料メーカーでは初となる水性ベースコートの2系統での展開に踏み切った。相次ぐ環境規制が水性シフトを牽引するとの読みもある。

環境規制が水性シフトを牽引

昨年5月、「労働安全衛生規則等の一部を改正する省令」が公布され、化学物質規制の仕組みが大きく変更された。国によるリスク評価で特定化学物質を追加してきたこれまでの流れから、危険性、有害性が高い物質に対して、事業者の自律的な管理を求める形となった。

具体的には、リスクアセスメント対象物質に対して、労働者のばく露を最小限にする取り組みを実施し、低減措置の記録作成及び保存、更にガン原性を含有する製品については、業務の作業歴記録を30年間保存することが義務化された。

上記については、既に今年4月から施行されており、来年4月も新たな責務が追加される。リスクアセスメント対象物質も来年から順次増加し、現在の674物質から最終約2,900物質まで拡充する計画にあり、化学物質取扱い事業者の負担は増大することになる。

既に自補修市場においては、特化則フリー、有機則フリータイプの環境対応型製品の投入が活発化しているが、規制除外の製品投入の継続に懸念する見方も。水性塗料が法規制対象外であり続ける確約はないが、"環境規制を最も受けにくい製品"として水性シフトが進む可能性を高めており、同社としては水性製品の成長をシェア拡大の契機として捉えている。



塗装実演の様子
塗装実演の様子

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