最近、短期間で爆発的に話題が広がり、注目を集めるさまを英語のBuzz(ざわつく)を文字って「バズる」「バズった」と表現されることがある。いわゆるSNSの普及に伴って生まれた流行語の1つだが、ニッペホームの「MORUMORU(モルモル)」は、まさしく"バズった"を形容するに相応しい勢いで販売量を伸ばしている。「MORUMORU」発売1年の軌跡を追った。
日本ペイントグループの家庭用塗料事業を担うニッペホームプロダクツは、2019年秋に手で塗れる塗料「MORUMORU」を発売した。水性シリコン樹脂を主成分としたしっくい風の仕上がりが得られる壁用仕上・補修材。ビニールクロスやコンクリートの上に直接塗れる他、穴や溝、段差、ひび割れに対して目地埋めやパテとして使うことができる。現在、14kg入り、8,800円(税込)で販売している。色はホワイトのみ。
同年夏に出展した「JAPAN DIY HOMECENTER SHOW2019」で初披露し、取材に訪れたテレビ局をアテンドするコーディネーターが手で塗る珍しさに着目し軒並み「MORUMORU」を紹介。連日テレビに取り上げられ注目を集めた。
こうした反響に対し、同社は「いい意味で予想外だった」と振り返る。
当初は、商品ラインアップの一環としてコテで塗れる左官調塗材の投入を計画していた。ところが開発の過程でコテから塗料をぼたぼたと落としていく若手社員の様子を見た先輩社員が「手でやってはどうだろう?」と投げかけたことが「MORUMORU」開発のヒントにつながった。
普及のハードルとも言われる道具や養生資材が多い塗装作業に対し、塗装用具を排除すること自体に画期性を感じていたものの、この時点で大きな反響が得られるとの期待はなかったという。しかし、蓋を開ければ一気にヒット商品としての成長をたどっていく。具体的な数字については明らかにしなかったが、「導入初年度としては、従来品の5倍以上」と記録的な売上につながった。
ヒットの背景には、後に到来する"巣ごもり消費"も追い風になるが、発売当初はむしろアゲンストだったという。
「例年ホームセンターでは、春に向けた店内改装の時期に新製品を導入していくが、昨年はコロナの影響でほとんどできなかった」と予定していた販促イベントもことごとく中止に追い込まれる事態。本格発売を控えた2019年末のイベントで反響が得られ、期待も高かっただけに、年明け早々から出鼻をくじかれた形となった。
しかし、そうした不安を吹き飛ばしたのが、インターネット需要。既に同社は数年前から自社サイトとショッピングサイトを活用したオンライン店舗を開設しており、「MORUMORU」を求める注文が日増しに増えていった。
デコボコ仕上げが魅了する
要因としてもちろん巣ごもりによる在宅時間の増加がDIY塗料の需要を押し上げた側面はあるものの、「MORUMORU」の人気を押し上げたのは、SNSに投稿されたブログや動画の存在だ。
今や興味があるものをインターネットで検索し、ブログや動画を一巡した後、オンラインショップで買い物をすること自体に珍しさはないが、「MORUMORU」もまさにそうした購買指向を持つ女性DIYファンを捉えた。
そのインフルエンサー的役割を果たしているのが、ユーチューバーの存在。1本の動画で10万以上の視聴数を稼ぐ「DIY MAGAZINE」や「HIRO channel DIY」といった有名チャンネルが「MORUMORU」を取り上げたことも認知度を高める起爆剤となった。
投稿された動画でいずれも共通するのは、模様や凸凹感など手や指を使って自在にアレンジできるところを楽しんでいる点。平滑性や均一性、収まりの良さといったプロ仕事とは異なるランダムな仕上げに「楽しそう」「面白そう」「(自分でも)やってみたい」といった動機を生み出している。
こうしたSNSの評判は、瞬く間にホームセンターバイヤーの目に留まり、店頭販売の増加へと好循環を生み出している。「これまで内装ペイントへの誘導はなかなか難しかったが、MORUMORUが突破口の役割を果たしている」との手応えを示す。
昨年12月には迷彩柄(ミリタリー柄)をあしらえるヴィンテージ感のある色調(全9色)をまとめた水性塗料ブランド「カモフラ」、2月にはJAZZと呼応する色調を選定したブランド「JAZZ PAINTER」(全9色)を新製品として投入。「色を楽しむ世界観をどんどん提案していきたい」とDIYペイントの可能性を広げている。
HOMEインテリア / DIY商品ピックアップ 手で塗る塗料「MORUMORU(モルモル)」