アートや特殊な技法を駆使したデザインペイントで空間演出に寄与するフォーアーツデザイン(本社・東京都江東区、社長・ヨザン弥江子氏)。最近では外資大手コーヒーチェーンの店舗装飾を立て続けに受注するなど、顧客のコンセプトを具現化するデザイン力と施工力に引き合いが高まっている。

床塗装においては過去、請負工事として結婚式場やテーマパークの依頼を受け、石畳調に見せるモルタル造形や水彩画技法の1つであるカラーウォッシュ風仕上げなどを手がけた実績があるものの、近年は発注者とダイレクトな関係の中での協業を志向している。

「ペイントを生業にするアーティスト集団として発注者と直接関わらなければ、塗装の価値を社会に訴求していくことは難しいと考えています」(ヨザン氏)とコメント。デザイン提案ができる施工会社へのシフトを強めている。

こうした同社のポジションチェンジは、徐々に仕事の質を変えていく。

例えば、最近店舗から依頼されたのは、"オーセンティック(正統派)な雰囲気"や"メキシコの世界観"といったコンセプトイメージ。

捉え方によってはいかようにも表現できるコンセプトから、同社は店の商品や特徴、集客数、導線を考慮しつつ、塗装デザインを導き出す。生み出したデザインは、コンセプトに帰結したストーリーも盛り込むことで、施主の信頼を勝ち得ている。

デザインが承認された後、モルタル素地などの現場施工の場合は、下地処理の後、デザインから起こした型紙を用い、模様やアートを描き入れていく形が一般的だが、最近はPタイルへの塗装が増えているという。

Pタイルの際は、同社のアトリエでパネルごとに着色し、現場で貼りあわせ、必要に応じて現場で修正を加えていくスタイル。難密着素材の1つだが、「数年前に耐可塑剤性を持つ水性塗料に出会ってから重宝しています」(スタッフの折戸さん)と塗料技術の進化がデザインのバリエーションを広げた格好。現在、磁器タイルに付着する水性塗料や完全艶消し塗料を探している。

床塗装についてヨザン氏は「床面は面積が大きいほど空間のムードやスタイルに大きく影響します。だからこそアートや模様が自在にあしらえる塗装の潜在能力は高いと感じています」と説明。クリエイティブ感やコミュニケーションを醸成する演出装置として塗装の可能性を広げている。