住宅の長寿時代、内装が変わる!?
塗装専用壁紙を再考

長期優良住宅制度が始まって7年。短期でスクラップ&ビルドを繰り返してきた日本の住宅シーンに欧米のような「自分らしく永く住まう」という新たな価値観が芽生え始めてきた。ある意味、住宅のパラダイムシフトといえるこの状況に、塗料・塗装普及のヒントも内在している。中でも住宅の内装仕上げにそのチャンスが大きい。住宅長寿時代の内装について考察してみた。

 


100年前後は当たり前のように住み続けられている欧米に比べて、日本の住宅の寿命は30年と格段に短い。なるほど、住宅建設の"数"が増えてGDPが拡大、それによって所得も増えるが増加分はローンの返済に充てられ、結局暮らしの豊かさ感は低いまま。

それに対して長寿命住宅では建設費用が長期で按分され費用負担を大幅に軽減、その分を普段の消費に回せる。日本に比べて賃金は低いのに豊かな暮らしぶりがうかがえる欧米諸国との違いはこの辺にからくりがある。

耐用年数の短い住宅へのローンに追われる不合理。経済的な負担だけでなく、永く住み続けることで得られる住宅への愛着と豊かな暮らしへの希求。人々のこうした不満や欲求がマグマのようになり、住宅の長寿命化への流れが萌芽してきた。国の長期優良住宅制度の成立はそうした民意が底流にある。

このパラダイムシフトを塗料・塗装の味方につけない手はない。特に有望なのは住宅の内装仕上げだ。なぜなら、住宅内装を席巻してきたビニルクロスは従来の価値観"短命住宅"の申し子だから。

1枚の薄い塩ビシートで内装全体を覆って下地ボードの粗を隠し、プリント柄で一応の見た目は満たす。低コストかつクレームも比較的少ないので住宅供給サイドには打ってつけ。ただし、新築時が100%で後は劣化していくだけのチープなつくりは短命住宅文化の日本だからこそ根付いたシステム。住宅が長寿命化すれば機能的に耐えられないし、豊かな住まい方への価値観の変化にも到底耐えられなくなる。脱ビニルクロスは必然の流れでもある。

塗装用壁紙の時代に

内装システムの変化の潮流に塗料・塗装を乗せなければならない。色やテクスチャーを自在にコントロールでき、色同士もしくは他の素材や部位とのコーディネーション、照明とのマッチングなどデザイン的なマイナス面はほぼ見出せない。

加えて、住宅の長寿化の中で塗料・塗装の何よりのセールスポイントになるのが『経年優化』という視点だ。新設時が100%で後は『経年劣化』するだけのビニルクロスに対して、リペイント(塗り替え)することですぐさま100%に復活。廃材を出さずに環境にも優しくサスティナブル。そればかりか、塗り重ねていくことで醸し出されてくる風格は長寿命住宅だからこそ得られる経年優化そのもの。欧米の住まいや住まい方への憧れのシーンにはいつもペイント壁が背景に控えている。

ここでネックになるのが下地の石膏ボード間のクラックの問題だ。国内の一般的な石膏ボードは欧米のものに比べてサイズが小さくて薄いため、パテ処理が必要なジョイントの距離が長く下地も動きやすい。これに伴うコストやクラックのクレームリスクが塗装を阻む壁になっていた。

そこで再考したいのが塗装専用壁紙との併用だ。内装仕上げの多様化に伴い最近は国産品も販売され始めたが、やはりドイツ・エアフルト社の塗装専用壁紙「ルナファーザー」がこの分野では代表的。1973年に日本ルナファーザー(東京・渋谷区)が輸入販売を開始、国内で40年以上の実績がある。

ルナファーザーは塗装仕上げを引き立てるために開発された専用壁紙で、下地にルナファーザーを張り、その上に塗装して仕上げる。ドイツでは150年以上の歴史を持ち、住宅の内装仕上げのスタンダードとして普及している。

日本での使われ方のメリットとしてはまずクラックレスが挙げられる。中でも天然パルプの不織布を素材にした「フリーズ」仕様は非常に強靭な素材でできており、クラックの心配がまずない。

また紙の中にある程度塗料が染みこむため、カブリがよく刷毛とローラーの目違いも出ない。素材の毛羽が程よく陰影を醸すため、石膏ボードに直接塗るよりも優しい風合いが得られる。特にフリーズの「№741」はテクスチャーのないフラットな仕様で塗装壁ならではのテイストが得られるとして圧倒的な人気を誇る。もちろん何度もリペイントできるので一生ものの使用価値がある。「上質な空間で永く住み続けたいニーズにベストマッチ」(同社)と自信を示す。

ペインターの新たなスタイル

ルナファーザーの本国・ドイツといえば職人の地位の高さを示すマイスター制度が有名。中でも塗装マイスターは建築仕上工程を取り仕切るトップの位置づけ。このため下地壁紙の施工も必須スキルで、その多能ぶりが高いステータスにもつながっている。

国内でも総寒冷紗張りで総パテを打ち、塗装で仕上げるといった腕の立つ職人の姿が見られたが今では希少な存在となった。その技能に比べれば塗装壁紙の施工スキルの習得は格段にハードルが低い。

 "向上すべき分野が成長する"のは世の中の定理。住宅水準の向上は正にニーズで、質的な向上、暮らしの豊かさや居心地といった感性的な価値の向上に塗装のポテンシャルは大きい。塗料の需要だけでなく、ペインターの新たな価値とスタイルを創造する上でも住宅内装への向き合い方は重要になる。



経年優化がセールスポイント
経年優化がセールスポイント

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