感性に響く塗装デザインを追求
“想い出”残す家具補修

木工塗装と金属塗装を手がける彩工房(北海道石狩市、社長・田村裕晶氏)は、特注家具の塗装・製作を行う傍ら、独自の塗装技術を武器に百貨店や高級店舗の内装材、什器の塗装製作を行っている。真鍮風や古美色風、黒川風などのデザインを木材、金属問わずに塗装できるのが同社の強み。「いつか自分のブランドを持ちたい」(田村社長)と塗装の表現力に可能性を見出す。


同社が拠点を構えるのは、JR函館本線「手稲駅」から車で20分ほど行ったところにある石狩工業団地の一角。石狩湾まで直線距離にして2km足らずと海岸線には昨年稼働した風力発電機が立ち並ぶ風の強いところで知られる。

同社が今の場所に移ってきたのは10年前。田村社長が個人事業として立ち上げてから10年が経過したタイミング。もうすぐ設立20年を迎える。設立当初は木工塗装を専業にしていたが、この場所に移った時に近隣企業の紹介を受け、金属塗装を始めた。以来、塗装品目も木工塗装の他、メラミン樹脂焼付、アクリル樹脂焼付、粉体塗装、鏡面塗装、カラー着色塗装、特殊塗装と広げ、現在は木工塗装2割、金属塗装8割の構成となっている。

要求品質や設備の違いにより木工塗装と金属塗装を兼ねる塗装業者が少ない中、同社が両立を果たせたのは、塗装意匠を武器にしている点。「木工塗装で培った技術が金属塗装に生きている」と研磨技術とともに薄く塗り重ねる木工塗装技術を金属素材に応用したことで受注の幅を一気に広げた。

現在、同社が手掛けるのは加飾塗装、真鍮風カラーゴールド、古美色風、ブロンズ、黒皮風、錆風などの各種意匠塗装。中でも素地を透かせながら着色や模様や柄を引き出すカラークリヤー塗装は得意の領域。持ち込まれるワークも既に組付けられた店舗什器などが多く、田村社長は「複雑な造作物に対し、決められた塗り回数で膜厚を均一に保ちながら、肌を整えるのが非常に難しい」と説明。部材との取り合わせで、メッキ処理材や大理石などと同様の質感や触感を塗装仕上げに求められることも技術を高める契機となった。

こうした仕事が評価され、現在は道内のみならず首都圏のデパートや著名な高級ブランドショップからの引き合いを高めており、店舗改装を請け負う設計デザイン会社にとっても貴重な存在となっている。

家具の塗装修理サービスも

現在、同社の従業員は金属塗装2名、木工塗装1名、事務員2人の計5名。田村社長も塗装職人の1人として金属塗装を担当している。

金属塗装が法人向けを中心とするのに対し、個人客向けに展開するのが、家具の塗装修理サービス。合わせて木製扉や玄関柱などの出張塗装サービスも行っている。

このサービスで浮き彫りにしたのは、大切なものを長く使いたいというニーズ。「亡くなった家族の形見として修理を要望されるお客様もいます。当社としてはそうした思いをつないでいくお手伝いができればと考えています」と同社のサービスが口コミ的に広がり、北海道内から愛用の家具が送られてくるという。作業の工程としては、シンナー拭きの後、研磨、着色(地塗り)、下塗り、研磨、中塗り、研磨、着色、仕上げ塗り。費用はテーブルで5万円程度だという。

金属塗装、木工塗装いずれも同社に共通するのは、他社に類のない技術とサービスを通じ、塗装の付加価値を高めている点。顧客の潜在ニーズをキャッチすることで、自らの判断で価値を訴求できる強みがある。塗装は人を感動させるポテンシャルを有する技術であることを実証している。

「塗装は手作業だけで多彩な表現ができる面白さがある」と話す田村社長が目指すのは、塗装意匠によるオリジナルブランドの構築。モノに付随した形ではなく、塗装によってモノの価値を高められる商品を開発したいとのビジョンを持っている。



本社外観
本社外観
代表取締役・田村裕晶氏
代表取締役・田村裕晶氏
金属塗装工場。手動型塗装ラインを設置。乾燥炉の熱源はジェットヒーターを採用
金属塗装工場。手動型塗装ラインを設置。乾燥炉の熱源はジェットヒーターを採用
塗装サンプル(グラデーション塗装)
塗装サンプル(グラデーション塗装)
塗装サンプル(加飾塗装)
塗装サンプル(加飾塗装)
塗装サンプル(ヘアライン/カラークリヤー)
塗装サンプル(ヘアライン/カラークリヤー)
塗装サンプル(ヘアライン/古美色風)
塗装サンプル(ヘアライン/古美色風)

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