ドローンの調査診断で圧倒的な説得力

建物の塗装工事でドローンの利用が広がっていきそうだ。機材やIT技術の進歩により建物の状況をより精細に点検できるようになり、特に現場調査における実践力が飛躍的に向上。施主への訴求力を高め、受注力アップにつながる強力なツールになっている。建設業でのドローンの普及活動を行っている団体・JAPAN47の代表・杉本裕典氏(シィーエス社長=写真)に話を聞いた。


----ドローンの機能が進化しているそうですね。

「ドローン本体の機能もさることながら、そこに搭載するカメラや通信技術が飛躍的に進歩しており、我々建設業の現場においてより実践的なツールになってきています」

----具体的に言うと。

「通常の可視カメラと赤外線カメラを同時搭載できる機種が出てきています。従来は別々の機材を飛ばす必要がありましたが、両方の搭載により屋根や外壁の表面の点検とともに屋根・壁内部の漏水調査も同時に行えるようになりました。そしてその調査の様子をお客様(施主)にリアルタイムで見てもらうことも可能になっています」

----ドローンのカメラが映し出している映像をその場で見られると。

「私たちはコントローラーの小型のモニターを見て操縦しているのですが、HDMI端子にも対応しているので、お客様の自宅のテレビに接続してオンタイムで映像を見ていただけます。『屋根の褪色が進んでいますね、ここは雨漏りかもしれません、ひび割れがありますね』など、お客様と一緒に映像を見ながら説明すると格段に説得力が高まります。特に普段見ることのできない屋根の上の様子を精細に確認でき、お客様の納得度が非常に高くなります」

----住宅塗装リフォームで活用が期待できます。

「これまでの現場調査では屋根の上に登って写真を撮る手法が一般的でしたが、例えば屋根が割れている箇所の写真を提示すると『わざと壊したのでは?』と不審がられることもありましたし、やはり部分的な写真よりもリアルタイムの映像の方が説得力は高い。全体の映像から詳細な部分にズームするなど見せ方は自由自在ですから。相見積りが常態化している競争環境の中で、競合に圧倒的な差をつけ受注率を高めるツールとして効果は絶大だと思います」

----作業する人の安全性も高まりますね。

「企業のリスクを回避する意味でそれが一番大きい。足場もない中で屋根の上を調査するなど最も危険性の高いことですから。人手不足が叫ばれ、労働環境の改善が待ったなしの中で、職人さんの安全確保は企業の最低限の責務です。受注力を高め、働く人の安全性確保も同時に達成するドローンを使った現場調査や建物点検は、これからの時代のスタンダードになっていくと思うし、そうさせていきたい」

----JAPAN47について教えて下さい。

「ドローンを自社の工事だけでなく災害対策にも活用しようという建設工事業者のネットワークです。地震や水害など甚大な被害をもたらす自然災害が頻発していますが、それらの復旧・復興の大部分を建設業が担っています。復旧・復興工事に役立てる、あるいは老朽化した建物の事前の調査・点検で被害を軽減できるなど建設業者がドローンを扱えることによる社会的価値は大きいと思うのです。そうして建設業のステイタスを高めると同時に、調査・診断能力の向上によって自社のビジネスの成長を目指すことを目的にしています」

----ネットワークは広がっていますか。

「一般社団法人化の手続きを経て、今年4月から活動を本格化し、6月末時点で70社の加盟状況です。ですが目標は団体の名称の一部にもなっている全国『47』都道府県にそれぞれ50社ずつを配置できる団体を目指しています。建物の調査・点検機関のスタンダードとして広く認知されるためにはやはり数は重要です。このため現在、各都道府県単位で集中して加盟会社を募る活動に注力しており、千葉、静岡、鹿児島、福岡、群馬、三重でそれぞれ数のまとまった支部が立ち上がってきています。塗装業の方も続々と加盟してもらっています」

----費用的な条件は。

「初期加盟費用として50万円と月会費3万円となっています。初期費用は登録料、ドローンフライト教習(2日間)、国交省全国飛行許可申請(3名分)、火災保険研修、現場調査同行などのプログラムが含まれています。また月会費はドローンによる調査・点検、災害対策の有用性とその担い手としての『JAPAN47』の認知度を高めるためのメディア対策、宣伝費用が大部分を占めています」

----ドローンの操縦技術の習得は難しいのでは。

「スティックを操作してコントロールするので、ゲームに慣れている若い人たちは飲み込みが早いですね。それに比べると年配の人はやや時間がかかる傾向も見られます。現在、操縦練習の場としてドローンスクールジャパン・東京校を運営しており、加盟していただく方々にも足を運んでいただいていますが、各支部単位で会員の数がまとまってくればその支部に専用のスクールを立ち上げ、技術取得のバックアップを厚くしていきます。スクールはドローン操縦の資格認定機関・DPAが認定しており、オーソライズされた資格となります」

----塗装業者の加盟は多いですか。

「現在の会員のうち7割ほどが塗装会社さんです。その他は足場業、屋根、板金、電気業など。お客様へのプレゼン力が高まるとし、戸建住宅の塗り替えを自社元請けでなされている塗装会社さんの関心が非常に高いですね。今後は中古住宅の流通に伴うインスペクションでもドローンの活用が広がると見ており、事業の拡張を目指す上でも有効な技術になるのではないでしょうか」

----ありがとうございました。



杉本裕典氏
杉本裕典氏

HOMEインタビュードローンの調査診断で圧倒的な説得力

ページの先頭へもどる